RE_PRAY感想・前半 | siennaのブログ 〜羽生君応援ブログ〜

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羽生結弦選手の現役時代をリアルタイムで体験できる幸運に心から感謝しつつ、彼のスケートのここが好きあそこが好きと書き連ね、ついでにフィギュアにも詳しくなろうと頑張る欧州住まいのブログ主です。

RE_PRAYについて、あまりランダムにX(旧ツイッター)に感想を落とすのも後で自分が振り返る時に面倒だし、内容的にも短くまとめられるものでもないので、久しぶりにこちらにアップすることにしました。

 

知らなかったこと、新しいこと、古くて新しいこと。そして何よりも、変わらない羽生くん。

 

いろんなレベルでの衝撃や感動が浮かんだり沈んだりして、冒頭書いたようにあまりまとまらない長文になりますが、ご容赦ください。そして、特に深い解釈やゲームのストーリーの落とし込みとかはなくて、シンプルにショー全体や彼のスケートとパフォーマンスで刺さったことを書くだけ、という点もご了承ください。ストーリーについて考えたことは主に後半に書くことになると思います。

 

会場の話からになりますが、現地鑑賞したGIFTを振り返ると、東京ドームは異種カテの空間に入り込んだようなアウェー感もそこはかとなくあったなあと思います。高い天井を見上げて、へえ、オロナミンCか…みたいな。そこに来ると、たまアリは普通にアイスショーや競技会で馴染みの会場ですから、やはりなんだか落ち着く。とはいえ、RE_PRAYの配信がスタートして、看板など視覚的ノイズを完全に排除しシックな黒に統一されたスタイリッシュたまアリを見た時には、思わず「おおっ」。羽生くんxMIKIKO先生チームのセンスが光るクールなエンタメ空間の出現に、開演前からプロフェッショナルなショーへの期待は否応なく高まったのでした。

 

会場と同じくらい、ショーの構成も「シュッと」したものになりました。部分部分で大勢のミュージシャンやダンサーさんたちが登場したGIFTと異なり、舞台に立つのは最初から最後まで正真正銘彼一人だけ。それに加え、演技と演技の間もかなり短縮されたために、より全体が締まったと感じました。製氷時間も短くなりました。それも羽生くんの血を吐くような体力持久力精神力の増強があってこそ、なわけですが、ライブ配信で見ていた時は、こんなにすぐに登場してまた全力で滑って大丈夫なのか!?と驚いていました。

 

さて、RE_PRAYのテーマはゲームの倫理観。斬新ながらこれほど彼らしいテーマもありません。私はゲーム、アニメ、漫画など彼の好きなものが一切守備範囲にない、というファンにあるまじき人間なので、このショーを理解できるかどうか、ひいては好きになれるのかどうかまで、一抹の不安がありました。しかし、そんな知識不足は彼の圧倒的スケートが吹っ飛ばしてくれるはずだからと、特に予習もせず、初日に臨みました。

 

ところがショーはのっけからピコピコ!ローディング!セーブデータ!です。これは予想よりずっと具体的にゲームの世界だなあと、さすがに一瞬身構えてしまいました。でも、羽生くんは柔らかな舞いと共に優しく羽根を散らすし、最初のプログラムは「いつか終わる夢」だしで、少し肩の力が抜けました。

 

いつか終わる夢は照明のせいかGIFTの時よりも羽生くんが見やすくなっていて、さらに楽しめました。プロジェクションマッピングと一体となった視覚効果もありがたく頂戴しますが、あくまで主役は羽生くんのスケート。こういうしっとり系の場合はなおさら繊細な細部をしっかりと見て味わいたいですからね。ファイナルファンタジーXの最終目的地ザナルカンド遺跡で流れるBGMだそうです(何を今さら)。

 

そして場面は「激流にのまれていた」のセリフから一気に闇の世界へ。本題に入ったー!という感じです。流れる生命、生物の命。ゲームで命といえばいわゆる「ライフ」のことを指しているのかな?と単純に考えたりしていました。他の命をシニカルに利用する自分を自覚している語り手は、コントローラーを操っている人?(その人をプレイヤーと呼ぶことも後から知った)

 

…からの衝撃の読経です!こ、これは一体どう捉えたら!?と焦りました。その後、既存の楽曲なんだと知って安心するわけですが…。いや、仏教とはいえ宗教的な要素ってやっぱりちょっと身構えますよね?

 

ステージ上に(もはやリンクではなくステージと呼びたい)出現した赤く妖しく染まった囲いの中を、あめんぼのような不思議な滑りでうごめく三毒様のシンボリズムに満ちた世界。羽生くんのカリスマ(なお出し入れ自在)、あの衣装、あのウォーキング。こんな魔性の表現も、GUCCIやAERA等エッジの効いたコンセプトの撮影で培われたのかもしれません。先ほどの白昼夢を揺蕩うような美しく蒼き「いつか様」とは、滑りも人格も完全なる別人です。SUGEE。振り付けはMIKIKO先生のアイデアが多分に入ってる感じでしょうか?なお白状すると、椎名林檎さんの楽曲、初めて聴きました。ほのぼのしたお名前と裏腹に、こんなダークなパワーを秘めた音楽を作られる方だったんですねえ。ちなみに私、日本の人気ミュージシャンは羽生くんに導かれて発見するというパターンがほとんどです。

 

続くVTRシーンはキャラクターの視線からの物語でしょうか。ひたすら戦略を練り戦い続け、強くなっていく「実感」や「自由」を語るドット絵のキャラクターを見ていると、でもきっとあなたは操られているだけなんだよ…となんだか哀れさを感じてしまいました。あたかも自分の意思を持っているようで実は利用されるために存在しているキャラクターたち、という点では自分の好きな作家であるカズオ・イシグロの作品を連想させられました。キャラクターの希望を物語るのがホプレガ…なのかな?

 

次のVTRシーンでは逡巡と決意が語られ、ゲームとリアルが交差する場面を新進アクションスター羽生結弦が体を張って演じます。俳優はやらないと言っていたことからしてもファンにとっては超ボーナスシーンですよね。これまでの道のりを、犠牲を無駄にできないという思い。欲望。使命感という言葉には迷いの響きも聞こえます。結局はエゴの追求なんだよ、と。それにしても、行き詰まりの打開に近づく場面でアクセルジャンプが使われているのが、なんだか意味深に感じられてしまいました。そして「お前、ここに来るまで一度も死んでないよな?」「それとも、何度死んできた?」のナレーション。ニヒリスティックでゾクゾクします。

 

そしてこのゾクゾクは、続くmegalovaniaで最高潮に!!登場シーンで手を後ろに組み仁王立ちしている時のお顔のアップ見ました?あの焦燥に打ちのめされたような眼差しは、若き美貌のレオ様演じる悲劇に突き進むロミオそのもの!エッジ音を楽器のように操る斬新なイントロでまたもや新しいスケートの可能性を見せてくれます。そして期待に静まり返る会場に響くブレードの一蹴りを合図にmegalovaniaの狂おしく熱い世界が始まります。このプログラムでいったい何度スピンを回っているのか?見るたびに数えようと思いつつ、いつの間にか演技に引き込まれて忘れてしまう。個人的に一番グッとくるのはシットツイズルからです。重厚な低音の響きに合わせるように低く回転しながら移動するドライブ感がめちゃくちゃかっこいい。そこからの渦を巻くダイナミックなプロジェクションマッピングとの競演・共演も目眩がするほどツボです。もともとカッコいい曲をこんなにも素晴らしくアレンジ・演奏してくださったMUSIC ENGINE様、そしてそんな迫力ある音楽を可視化すると共に完成度の高い演出を可能にする羽生くんの考え抜かれた正確な滑りにあらためて畏怖の念を覚えました。

 

そして光の玉に導かれて次のステージに上がっていくドット絵ちゃん。それを迎えるフレンドリーさと皮肉が混じり合った、なんとも言えないオフからの声。この場面、最後の「壊す壁はありますか?」の震えを帯びた強い口調に至るまで、羽生くんの声の演技、うますぎて怖いくらいです。それにしてもこのナレーションは誰のものなんだろう。誰と誰が一緒に進もうとしてたんだろう…などと考えつつ、VTR上の戦いは激しさを増し、凶悪そうな敵の姿形からもクライマックスが近づいたことが感じられます。語られる内容も気になるけど歴代衣装のドット絵ちゃんも可愛いいから思いっきりガン見して衣装を識別したい!複数タスクを同時に処理するには脳細胞が足りないのでドット絵に集中していると、なんだか彼らが意志を持っているかのように見えてきます。しかも「さあ、最後だ」でカメラがドット絵版破滅の使者を大写しにするに至っては、ドット絵なのにすごい圧というか生々しさを感じました…。ほんとここのVTRは特に好きで何度も見れてしまいます。

 

そして氷上に描かれたYESのタブを足でタップして始まるまさかの6練。しかもGIFTよりも進化してパフォーマンス化しているではありませんか。羽生くんは練習からクールダウンまで全ての動きが美しいので、そういった普通なら演技としては見れないようなものまで価値ある表現に昇華できるんですよね。それも彼のひと滑りひと滑りが大好きだというファンの気持ちをすくい取ってくれてのことかな、と。しかし、今でこそ落ち着いてこんなこと書いてますが、リアタイしてる時は、何が起こるの??やめて???まさか4A行かないよね?????ぎゃー!!!!と一人モニター前で大変なことになっていました。あんなにドキドキさせられたことは競技時代すら滅多になかったかも。まったくなんて人でしょう…。

 

そして本番「破滅への使者」。不吉さを漂わせるパイプオルガンで始まるどハードなロックはまさかの清塚さんのアレンジ!激しい曲想に煽られるがままに高難度ジャンプを繰り出してくるカッコ良さときたら!途中、カメラ目線まであってぶっ飛びました。4Tの転倒はキレッキレな立ち上がりを含め完全に振り付けだったし、その後の3A1Eu3S1Eu3Sという謎連続ジャンプすら音ハメしてくるという…。2日目は4Tからの5連続だったそうですが、音ハメの具合はどうだったんだろう?2日目の放送が待ち遠しいなあ。このプログラムを見たら今競技に出ても羽生くん優勝よね、と確信してしまいますが、実際に試合バージョンにするとなると、いろんな制約があってここまで徹底した疾走感は出せないかもな、と思います。そういう意味で、プロになってからの羽生くんのさまざまなプログラムの面白さは、満遍なくバランス良く、ではなく何かに振り切ってもOKという自由さから生まれているなあとつくづく思います。StSqのクラスターとか、相当上手い選手が相当考えられた振り付けで実施しないと、画一的すぎて表現を殺すことが多いと感じますからね。

 

というわけで、自分にしては熱弁をふるい過ぎて力尽きたので、とりあえず前半アップします。お読みいただきありがとうございました。