12歳、しーちゃん大病を患いました。
癌が見つかったのは偶然でした。いや本当にたまたま。ペコちゃんの定期検診についてきたシエナが
そういえば最近ブロッコリーの茎を残すし、食事もムラ食いだし、夜食のヨーグルトを食べなかったりする
食べ方も左側ばかりを使うように見えるし、歯が痛いのかも知れない、と相談したところ
行きつけ先の先生が看てくださって、顔色を変えた。実はしーちゃん、抜歯をした後の歯茎が盛り上がり
良性の腫瘍を作っていて、そいつの経過観察中だったのだが、そのでき物が短期間で大きくなり
さらに上顎にまで広がっている。これは悪性の可能性が高いから専門医の判断を仰ぐべきだ、と先生はいう。
で、そのまま入間の病院に電話をしてくださり、約10日後に診察を入れていただいた。これでも一番早い予約だった。
初診までに間に合うか、針生検もしておいた。初診までに癌だと判明すれば、入間後の治療が捗るからだ。
入間の埼玉動物医療センターはアズ君がお世話になった病院だから、大いに信用しているし、頼もしい。
ただその反面、また癌かなと嫌な予感で胸が一杯になった。結局アズ君は逝ってしまったわけだし。
入間では「悪性である要因は確定できない」的な事前の生検結果を踏んで、結局のところこれでは何も判明しないので
全身麻酔ののち、組織を大きくとってもう一度病理検査を、という方針が示された。
担当してくださったのは、腫瘍科の院長先生、その道の権威であることは行きつけの病院で既に説明を受けた。
その院長先生が仰るには、歯茎の状態から、ものが食べられないとか、ましてやヨーグルトが食べられないというほどの
「痛いとか凍みる」といった症状があるようには到底思えない、むしろ他に要因があるような気がする、という。
上腹部が少し固いから原因はお腹の中にあるのかもかも知れません、と。
いずれにしても触診だけでは判断できないので、ひととおりの検査をしたのち順次高度な検査に移行する手筈となり
しーちゃんを預けて一時帰宅した。
夕方、所定の時間に病院へ戻ると、院長先生から実のところ検査は途中で止めたのだと告げられた。
アズ君の時みたいに体中癌だらけなのかなと一瞬覚悟を決めたが、しかし院長先生の表情は暗くはない。
先生は、検査の途中で原因が分かったので、といってレントゲン写真をライト板の上に挟んだ。
「脾臓が腫れ上がり、胃を圧迫している」と先生はいった。「これが原因です。こんなに肥大しています」と。
さとさんは兎も角、僕は脾臓がどこで胃がどれかも分からないから(´・∀・` )アポーンとしていたら、先生は
脾臓は2センチ腫れれば手術案件だがシエナちゃんの場合12センチはあり、これは破裂寸前なのだと説明してくれた。
ともかく早々に摘出が必要で、今日全身麻酔をするよりもその時にまとめて歯茎も処置してしまえばいっぺんで済む
なので今日の検査を途中でやめた、というわけでした。
ここで問題だったのがこのさき2週間は手術が立て込んでいるとのことだったが、先生はしばし考えながら
頭の中で残業の出来るスタッフを見繕っているみたいで、明日の遅い時間ならどうにかねじ込めるかもしれないと、打診した。
そこで我が夫婦は、いろいろな書類にサインをして、手術に合意し、院長先生に礼を述べた。
そう、この病院は「できない」って言わないんです。アズ君の急病のときも大晦日にMRIをとってくれました。しかも初診で。
他の病院では診察もできません、検査は1月3日をすぎないと予約すらできませんという対応だったのに。
さてさて、こんな話を横で聞いていたシエナ譲。
やれやれ今日はとんでもない日だったわ的な顔をしていたけれど、このまま家には帰れずまた預けられることを知るやいなや
まるで大昔のハトヤ大漁苑のCMで男の子に抱かれた青いブリみたいに女性スタッフの胸でピチピチ暴れたまま
哀れ処置室に消えていったっけ。
脾臓はもともとなくてもいいような臓器なので、全摘出しても長生きできるし、犬にはポピュラーな手術ということもあり
その点に関しては心配はないそうだ。ただ癌に関しては大まかに4種類あって、血管肉腫というものだけ、とても厳しい。
しーちゃんの場合、所見だけど、血管肉腫の可能性はおそらく低いと思う、ただこればかりは術前に判定することはできない。
ということだった。それとは別に歯茎の癌も疑われるので、全くをもって穏やかではない。
翌日の手術は予定通り終わった。出血も少なくて、順調だったそうだ。入院中は3日に一度面会に赴いた。
病院にはちゃんと面会室という部屋があって、そこで15分間だけ触れあうことができた。会う度に元気になっていた。
その後の経過も順調で、しーちゃんは最低日数で退院できた。そして、その日に脾臓と歯茎の病理検査の結果も知らされた。
診察室に入る間際、何を言われても受け止める覚悟が必要だった。
結果、脾臓の癌は「脂肪肉種」と分類され、他臓器およびリンパ節への転移はなし、年齢対効果から抗癌剤の投与は必要なし
と判断された。が、最重要経過観察という観点で今後は度々の検査は必要になった。そして歯茎のほうは「良性の腫瘍」で
今後大きくなれば切除も考えなければいけないが、今のところその必要はなし、となった。
ところで切除した脾臓は結果15.5センチもあって、状況としては本当に危険だったようだ。
癌は再発の危険はあるものの、それより先に寿命がきちゃう程度のものらしい。
高分化型の分類で、グレードは一番低かったのだ。
このように、悪い中でも最良の結果になって、夫婦共々心底嬉しかった。
家に連れて帰り、お祝いにステーキ肉をあげたら、しーちゃん喜んで食べたけど、夜中にゲロはちゃって
いきなりじゃアレだったかと、翌日から食事の量を半分にして与えたら、吐かなくなったし
夜のヨーグルトも美味しく食べるようになりました。
さてこれで万事OKかというとそうではなく、実は帰宅後術後服を脱がせたら、胸横に床ずれのような傷ができていて
まさか皮膚癌じゃないよねぇと心配したが、最初の検診で先生に看てもらったら、この体重の犬に床ずれはできないので
おそらく剃毛したときのバリカン負けだろうと診断され、いま軟膏を塗って包帯巻きにして自宅治療中です。
包帯はひとりでは巻きづらいので、夫婦で協力して処置しているのだけれど、その様子がどうしても気になるらしいペコちゃんが
毎回その輪に加わってくるので「将来は医者になりたいの?」と訊いてみたりしていたのだが
どうやら自分も包帯を巻いてもらいたいらしいと気がついて、試しにペコちゃんにも巻いてみたら
本人相当嬉しかったらしく、いきなり部屋中を駆け回ってウチら夫婦を笑わせてくれました。
もしペコちゃんの検診がなかったら、歯の癌を疑わなかったら、診察の日程を延ばしていたら
今頃は脾臓が破裂して、しーちゃんは虹の橋を渡っていたかも知れない。そうと思うと、嬉しいというより怖い。
食欲にムラがあったといっても、前の日まで公園でペコと走っていたのに。
夜もソファーの上で機嫌良さそうにイタグレダンスをしていたのに。
小さな鼾をかいて寝ていたのに。
あの状況から死を予感することなんてできやしない。
共に暮らしているのは、本当に儚い命なんだなと、改めて切なくなった。
というわけでした。
FBで中途半端に状況を知っていた友達の皆様、ご心配をおかけして申し訳なかったです。
しーちゃん、頑張ってきました。イタグレ7キロ級女子の金メダルでした
入院の数日前、普通に元気
1回目の面会。脾臓なしバージョンのしーちゃんになってます。
大きく取り除く用に横の毛も剃りました。
2回目の面会。長椅子に飛び乗ったりして元気になってきました。
退院初日にステーキを食べた。
警備隊にも復帰しました。
軟膏を塗って包帯を巻いて。手術の傷は完治してます。
たまにつけるカラーにもだいぶ慣れてきました。
応援ありがとうございました。
おしまい。