日曜は楽し。稽古日誌です。 | 望月六郎的日記『中年勃起』

日曜は楽し。稽古日誌です。

二日前、6月2日の報告です。

 

アンチョビパスタを作り、缶ビール付き昼食を妻と済まして御徒町に向かう。

アメ横果実店で、この日来訪する赤テントへの差し入れを物色し、

一時、湯島駅となり『MUSIC BAR 道』階上のアートスペースに到着。

 

3周連続で中瀬古健の一人芝居『駆け込み訴え」稽古です。

まずは衣装の打ち合わせ。

劇団で持ってる砂漠風衣装を着てもらう。

悪くはないが、結構きちんとしているため、アバンギャルドな感じがしない。

コスプレ風に受け取られてしまいそうでもある。

午前中、僕は古い僕のヒートテックをタンスの奥から引っ張り出した。

首周り、袖周り、胴回りをハサミで切り落として妙に透けてるシャツに改造。

戦地パレスチナあたりではマストアイテムでもある軍パンも用意した。

シャツは健ちゃんに大いに気に入ってもらう。

パンツも悪く無いがいきなり決定する必要もない。

簡単な美術打ち合わせを済ませて、いよいよミザンスに取り掛かる。

 

『駆け込み訴え』をバクっと捉えると

プロローグ

海岸の思い出

マグダラのマリア

エルサレム凱旋

最後の晩餐

エピローグ

 

こんな形で構成されている。

それぞれの場面をどう乗り越えていくか?が僕らの命題で

先週までにマリアの部分の芝居がどうにかついた。

ここまでは登場人物も限られ密度のある細やかな場面だ。

 

しかし『エルサレム凱旋』は壮大なスペクタクル、まさに時代絵巻だ。

イエスが弟子を従え、興奮する群衆に担がれるようにして、かつての宮殿に乗り込む。

慈愛の人イエスが、大見えを切り、ついには押さえきれない怒りを言葉にする。

エルサレムの全てを糾弾するイエスは、まるで呪詛する荒神のような存在になる。

恐ろしい預言者になった。

その姿を目の当たりにしたユダが、ついに暗い決心に至る場面でもある。

 

たった一人ぽっちのお芝居で、どうするのか…。

これは僕にとっても健ちゃんにとっても最大の難関の認識があった。

ここに関しては最初の本読みから一番の難関で、どうするか決めないまま前回の稽古は終わった。

 

稽古後の呑み、で家に帰って一人呑み。

台本を前に「講談でやったらどうだろうか」と思いて、講談風に読んでみた。

悪くないかも、と思った。

翌日、健ちゃんにその意を伝え、講談を聞いといてとリクエストした。

 

本日の稽古が始まる前から、健ちゃんは釈台と見立てた箱の向こうに正座してスタンバイOKだ。

 

だが、やっぱり難しい。

太宰治の文章が、講談調ではないからだ。

しかし、古色があって、もちろん悪くはない。

 

そんなに簡単じゃないよな…と、思いながら僕は健ちゃんにイメージを伝える。

読むんじゃなくて、語るんだ。

一定のリズムで進むんじゃなくて、お客様に場面を伝え、絵を思い浮かんでもらう。

それから、顔の効果。

演者の顔、表情でお客様に訴える。

講談の幽霊話、怪談なんんて、顔で怖がらせているもんな。

 

だが、なんとか感情を込めようと声を潰すと若さが消えてしまう。

講談は、どこか颯爽としていなせで、朗々としてなきゃいけない。

 

付け焼き刃なんてもんじゃないけど、僕がやってみて、健ちゃんに聞いて見てもらった。

いい歳こいて、こんなことするのは大変恥ずかしい。

ドガドガの稽古でも昔の女の所作や雰囲気を伝えるために、女をやって見せることがある。

それを見ている俳優は笑顔になっているけど、やってるこっちは大変恥ずかしいもんです。

 

この日もそんな思いをしたけど、仕方がない。

僕はきちんとしたお手本にはならないけど、それでも健ちゃんよりは知っているから。

成長するには何より、真似をするのが一番手っ取り早いもんね。

そんな風に稽古すること、3時間半。

見る見る形になっていく。

 

「講釈師、見てきたような嘘をつき」

 

なんだが景色が見えてきたのだ。

もちろんまだまだだけど、これから一ヶ月、ものに出来たら素晴らしい。

大したもんになる予感がしました。

 

そんな風に、この日の稽古も大変充実して終了しました。

 

片付け中に健ちゃんが

「今日のところが今までのところで、一番好きかも、一番いいかもしれない」

と感想を漏らした。

 

「この先がもっと良くならないと」と僕は言い返した。

けど、それはクライマックスに向かう意気込みでもありました。

 

夜は唐組『泥人形』観劇に行きました。

三百人を超える大入り。

雨の花園神社は一層風情があって、お芝居も素晴らしかった。

来週が最終週です。

 

終演後、唐組の柱、久保井研に『駆け込み訴え』のチラシの件をお願いした。

快諾を頂いて、良かった。

来週の日曜で、僕の役目は一旦御免になる予定です。

その先は中瀬古健に精進してもらって、ある程度できたら、ディティールを磨き上げよう。

チラシの出来も本当に楽しみです。

 

それじゃあ。