ドリームランド
DREAMLAND PG12
〔勝手に評価 = ★★★★ = 監督とマーゴット・ロビーの今後に期待〕
2019年/アメリカ映画/101分/監督:マイルズ・ジョリス=ペイラフィット/製作:ブライアン・カヴァナー=ジョーンズ、リアン・ケイヒル、マーゴット・ロビー、ジョニー・マクナマラ、トム・アカーリー、ブラッド・ファインスタイン/脚本:ニコラス・ツワルト/撮影:ライル・ヴィンセント/出演:フィン・コール、マーゴット・ロビー、トラヴィス・フィメル、ケリー・コンドン、ダービー・キャンプ、ローラ・カーク、ギャレット・ヘドランド ほか
【気ままに感想】
『スーサイド・スクワッド』シリーズのハーレイクイン役や『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド(2019)』のシャロン・テート役などでノリに乗っているマーゴット・ロビーの主演作品!
演じる役柄もかなり幅が出てきて押しも押されもしない大女優になってきたな~というか、貫禄も感じられるようになってきました。
その、マーゴット・ロビーが文芸作品のようなロマンティックなノアールものに出演!同じ犯罪者でもハーレイクインとは180度違った色香もある大人な女性を、文字通り一肌脱いで演じています!
ですが…、
マーゴット・ロビーを除けば…あとの方々はいったいどなた?
主役の17歳の男の子を演じたフィン・コールは、本作のときは実年齢20代そこそこ。
監督のマイルズ・ジョリス=ペイラフィットくんは長編デビュー作でサンダス映画祭審査員特別賞を受賞した、まだまだ20代の若者。新進の映画クリエイタで、本作は長編2作目…ですかね?
本作のオリジナル脚本を書いたニコラス・ツワルトという人もこれが初めての長編映画化作品。
みんな若い!!
本作は、フィン・コール演じる若者の異父妹が過去を回想する物語…というスタイルをとってストーリーを進行させるのですが、劇中でこの異父妹を演じたダービー・キャンプちゃんは子役。もっとも、フィルモグラフィをググってみると、フィン・コールくんはもちろん、マイルズくんやニコラスくんよりもよほどご立派な経歴!
道理でしっかりした子役だな~と感じたわけです。
いやいや、この中では一番の貫禄のマーゴット・ロビーだって、本作の製作のときはまだ20代だったので、確かにこれら若者の中では年上ではあるけど、それでも世間的には若手。
もちろん、他の出演者などにはもっと年齢の高い人も、そこそこのキャリアのある人も居られるようですが、いずれもどちらかというと地味な作品や枠柄が多いようで、よほど詳しい人でなければ知らない人たちばっかでは?
ということで、本作はまさに“若い人たちが作った”作品です。
NET情報では、本作は期待されたほどには評価されなかったそうですし、2019年に製作された本作が2021年になって公開された背景には、新型コロナの影響によるアメリカ映画の製作激減という事情によって日の目を見た…のかもしれません(もっとも、公開までに数年かかるのは文芸作品では普通にあることですが)。
というものの、本作は、これからの映画界を担う(かもしれない)若手クリエイタたちで作った作品…という意味では一定評価してよい作品になるかもしれません。
アメリカ西部の開拓地を中心に銀行強盗を繰り返してきたカップルが、あるとき強盗に失敗して警察から追われる身となり、逃亡の途中で小さな幸せを見つけるのだけれど、結局は破滅に向かって進んで行く…。
ザックリしたあらすじだけ聞くと、アメリカン・ニューシネマの先駆的作品で、今でも評価が高くてファンも多い『俺たちに明日はない(1967)』にインスパイアされた作品のようです。
実際に、そのような評価や批評も受けているようですが、
とはいえ、前述のとおり、そもそも脚本、監督、それにマーゴット・ロビーはじめ本作の製作に主として携わった若者たちは、『俺たちに明日はない』ができた頃はまだ生まれてもいません。
もちろん、アメリカン・ニューシネマの開拓作品として当時の映画ファンに与えたインパクトやその後の映画界に与えた影響、その意義は実のところよく分かっていないのではないか。書籍や人の話などから知識としては持っていたかもしれませんが、それはあくまでも実体験ではない。
本作では、ビリー・ザ・キッドについての話が出てくるので、若い製作者たちも西部の開拓時代や銀行強盗のことなどについて、実録や歴史上の有名人、これらをテーマにした作品などもリサーチしているでしょうが、参考にはしてもパクるつもりはなかったでしょう。
雰囲気とかアイデアレベルでは似たものがあるにしても、あくまでも、若者たちの解釈による新しい西部劇…という理解が正しいと思います。
過去作品と比較するのもちょっと違うのでは?
むしろ、若いのによく雰囲気よくできましたね。
世間の評価以上に褒めてあげてよい作品ではないかと思います。
疾走するオープンカーとパトカー。
オープンカーを運転するのは銀行強盗犯アリソン(マーゴット・ロビー)。アリソンは荒涼としたテキサスの開拓地の田舎町に逃げ込む。
警察官と子どもを含む4人を殺害して逃げたとされるアリソンの賞金は1万ドル。田舎町にも指名手配書がばらまかれた。
町はずれに住む開拓民の息子ユージン(フィン・コール)は、使っていない自分ちの納屋にアリソンが潜んでいるのを見つける。驚くユージンだったが、一方で賞金を得ることができれば今の息苦しい生活から抜け出せるのではないか??と思う。
一方、逃走途中で太ももに銃弾を受けたアリソンは血だらけで激痛にあえいでいる。
けが人をそのままにもできない、と迷うユージンの様子を見て助けを乞うアリソン。アリソンは、子どもも警官も殺しておらず殺人は冤罪だと訴える。そして、見逃してくれればメキシコに行って金を稼ぎ(また強盗をやって)ユージンに2万ドルをやる、と持ち掛ける。
ユージンはアリソンの足から弾を取りだして手当てをしてやり、母の着物や食料を与え、彼女を匿う。
開拓者として他の移民とともにこの地に入植してきたユージンの父は荒れた土地を呪い、まだ小さかったユージンと母を残して入植数年後に家を飛び出していた。あるとき届いた父からの絵葉書には、メキシコで新たな生活を始めたことが記されていた。
母はユージンのために農民で保安官補の男と再婚し、妹も生まれ4人家族として暮らしていたが、ユージンは実父への思いが断ち切れず、豊かにならない生活に見切りをつけてメキシコに行きたいという思いを前から募らせていた。
メキシコへ行きたいという思いと、大人の女性への関心から、いつの間にかユージンはアリソンに惹かれるようになるが…。
開拓地を襲う砂嵐のシーン、ユージンとアリソンが結ばれていくシーンなど、キレイな絵作りができていることや、悲しいラストのまとめ方など、結構評価できる点もあるものの、全体的にスリリングな盛り上げがワンパターンになっていたり、アクションシーンがもたついたり、まだまだ改善の余地がある作品ではあります。
でも、それでもちゃんとしたクオリティになっているのは、まずもってマーゴット・ロビーのおかげ、と言ってよいでしょう。
凶悪犯という役柄でありながら、完全な悪人としてではなく、一人の女性として観客にもちゃんと受け入れられて、最後には薄幸の美女として涙を誘う演技力には脱帽です。
若いクリエイタたちをしっかりリードしているその力量は貴重。
キッチュなハーレイクインもイイけれど、ちゃんとした演技ができてかつ、人生で一番美しい時代=最強!!のタイミング!なのですから、どんどんその魅力をストレートに焼き付ける仕事に注力していただきたい。
本作を観て実感しました。
それと、本作に関わったマイルズ・ジョリス=ペイラフィット監督はじめ若手のクリエイタたちの可能性には大いに期待します。
ぜひとも場数を踏んで、より洗練された作品を作っていただきたい!
そんな未来の大女優や大物クリエイタたちの過渡期の作品…として、本作は一見の価値がある!と思います。(たぶん)
★★★★★ 完璧!!生涯のベスト作品
★★★★ 傑作!こいつは凄い
★★★ まあ楽しめました
★★ ヒマだけは潰せたネ
★ 失敗した…時間を無駄にした
☆は0.5