白頭山大噴火

ASHFALL

 

〔勝手に評価 = ★★★★☆ = 韓国映画のハッピーエンドってこういうことね〕

 

2019年/韓国映画/128分/監督:イ・ヘジュン、キム・ビョンソ/脚本:イ・ヘジュン、キム・ビョンソ、クァク・チョンドク、キム・テユン、イム・ジョンヒョン/撮影:キム・ジヨン/出演:イ・ビョンホン、ハ・ジョンウ、マ・ドンソク、チョン・ヘジン、ペ・スジ ほか

 

【気ままに感想】

 

かつて『シン・ゴジラ(2016)』を観たときに、日本の“特撮技術”も捨てたものではない!と確信したような気がするのですが…。

いや~、韓国のクリエイティビティにはかなわない…実感させられてしまった。

冒頭の大地震のシーン、大都市ソウルの街並みが崩壊していく場面の迫力には全く脱帽!残念ながら日本映画であれだけのビジュアルを実現できるか??…おそらく難しいのかなあ。

さすがに、ハリウッドのデザスター映画の丁寧な創り込みに比べればまだ粗さが目につきますし、基本的に地震がない韓国ですから日本人の“地震に肥えた目”?で見ると「大地震たってそんな感じには揺れないかな~」みたいな不自然なぶっ壊れ方をするのですが、そんな細かいことはこの際言いっこなし!

悔しくてもしようがない、この点に関しては韓国映画のパワーに日本の映画界はすっかり置いていかれた感じがする。

日本映画でもやろうと思えばできるのではないか?と思うのだけど…でも無理っぽいですかね?日本は規制も厳しいし。

まあ、とにかく見事に朝鮮半島がぶっ壊れて行く迫力シーンを「すごいな~」と単純に楽しめてしまう映画でしょう。

 

北朝鮮と中国との国境近くにある『白頭山(ペクトゥサン)』が噴火をしてそのエネルギーによって大地震が発生し、朝鮮半島の街や村の多くが被災する。

一番の大噴火=朝鮮半島の壊滅までにおよそ75時間。

このタイムリミットまでに大噴火を回避することができるのか??…というのがザックリ本作の流れ。

こういう映画のお決まりで、タイムリミットのギリギリでどうにか間に合う…この点はお約束なので“ネタバレ”という批判はご勘弁いただきたいのですが、その他にもう1点、本作にはまさに韓国映画らしい、“お決まりのオチ”があります。

というか、韓国の人々にとって“ハッピーエンド”ってこういうことだったのか…と、あらためて考えさせられました。

(ここからは、この“オチ”について触れます。やっぱりこのことに触れないと本作は語れないな~と思うので。なので、やっぱりオチは知りたくない…という未見の方はご注意)

 

ズバリ!韓国映画らしい大団円、“オチ”とは、「南北統一」。

前述のとおりお約束として、なんとか白頭山の最後の大噴火をとりとめて、朝鮮半島の壊滅は免れるのですが、それまでの噴火によって北朝鮮と韓国はズタボロになって、国家として険しい再建の道を歩むことになる。

そこで、ラストは北朝鮮と韓国が共に手に手を取って復興に向けて取り組むところで終わります。

なるほど!

災い転じて福となす、その“福”っていうのが韓国人にとっては「南北統一」で、本作はその夢を見るための作品だった!…わけです。

あらためて韓国人…というか朝鮮半島の人々にとっての“ハッピー”というか”悲願””宿願”を認識させられる作品です。

 

ある日突然、ソウルの街が崩壊する。

それはソウルだけでなく、朝鮮半島のほとんどが被害を受ける。

原因は『白頭山』が噴火をしたことによるものだった。

しかし、災害は1度では済みません。『白頭山』にはマグマ溜まりが4つあると見られていて、今回の爆発はその第1弾。最も規模が大きなマグマ溜まり=最後の4番目の噴火が起きれば朝鮮半島はほぼ壊滅してしまう。そのリミットは75時間のみ。

韓国政府は至急対策を検討することになるけど、呼び出されたのは学界からは冷遇され、米国に帰国しようとしていた地質学者のマ・ドンソク。3年前に『白頭山』の噴火を予測し、その対策を研究していたのでした。

全くやる気がないマ・ドンソクでしたが、さすがに国家の危機を無視することもできず、しぶしぶ解決策を提言します。

それはつまり、「ガス抜き」。

『白頭山』のマグマ溜まりに穴を空けて、ストレスを解消させてあげよう…というものでした。

でも!『白頭山』に穴を空けるには600キロトンの爆発力が必要で…これってつまりは“核爆弾”。一番手軽に手に入る核爆弾…それはまあ、北朝鮮のICBMの弾頭から核を取り出して爆弾にして『白頭山』のお腹に突っ込んでやろう!という作戦です。

都合がよろしいことに『白頭山』にはあちこちと鉱石採掘のための坑道が空いてるのでそれを利用するのだけれど、問題は核弾頭。

ICBMのある場所を知っているのは二重スパイの容疑で北朝鮮に収監されているイ・ビョンホン。このどういうわけかスパイがバレたのにまだ生きているイ・ビョンホンの身柄を奪取して、北朝鮮のICBMを横取りして、そして『白頭山』に行って坑道に潜り込んで爆弾を仕掛けてくる…何とも手間のかかる作戦を実行することにします。

で、その任務を実行するのが、イ・ビョンホンの身柄の確保と坑道への侵入を担当する主力の実行班と核弾頭の処理などのバックアップ作業を担当する工作班の2つのチーム。

工作班の班長は、任期満了で現役最後の不発弾処理をやったばかりの大尉ハ・ジョンウ。除隊のはずだった日に作戦実行を命じられて迷惑顔。愛妻の「キューティプチ」ことペ・スジは臨月。ペ・スジ(とお腹の子)の米国への出国を条件に渋々引き受けます。

2機の輸送機で出立をするチームの兵士たち。ところが、上昇したとたんに濃厚な火山灰PM10の雲に巻き込まれ、主力班が乗っていた機体が損傷。あっという間にエンジンが火を噴いて墜落してしまう。

残った工作班も着の身着のまま落ちて行く飛行機からダイブ!どうにか命だけは助かったものの、炎上する輸送機から最低限の装備だけ引っ張り出したところでハタと気づく。

本隊は全滅したけど、戦闘訓練も十分に受けてない工作班だけで任務は遂行できるの???

 

大迫力で情け容赦ない災害や戦闘シーンが連続する中で、登場人物たちのオフビート感は徹底しています。

頼れる兄貴、マ・ドンソクは今回ばかりはぶっとい二の腕は全く見せず、韓国の学界から干されてヘソを曲げているアメリカ生まれの研究者をまったりと演じています。偶然に避難者を運ぶバスでペ・スジと一緒になったマ・ドンソクの掛け合いシーンは大爆笑。

最近、いろいろなキャラクタを幅広く演じることにチャレンジしているマ・ドンソク、今回は今までとは正反対の事なかれ主義キャラになり切っています。

作戦計画の全てのカギを握る男、イ・ビョンホンもやる気なし。

緊迫する状況の中で「シャワーを浴びたい」「ウンコをしたい」「酸っぱ甘いお菓子が食べたい」「リヤカーに乗りたい」「大好きな韓流ドラマの最終回が観たい」などなど、わがままし放題。

一方真面目な主人公、ハ・ジョンウも結構間が抜けている。

本来裏方だったはずの爆弾処理係が、思わず任務を遂行することに。仕方ないことだけど、戦いには弱っちいし、慣れていない。班員への指示もとても的確とは言えません。戦闘では班員全員がボコボコにされてしまうし、大泣きもしてしまう。

キューティプチとお腹の子どもへの愛情だけは誰にも負けないけれど、だからと言って何ができる…というわけでもありません。

 

ズバリ言って、本作は実はデザスター映画…というよりコメディ映画じゃないの??

と思うくらい、ユーモアとギャグに溢れています。

単なる一本調子な作品に終わらせず、二癖も三癖もねじ込んでくる本作の貪欲さとセンスの良さには、さすが韓国映画の勢いと成熟度を感じさせてくれます。

この飄々とした感覚は、単にハリウッドの追従や模倣をするのではなく、韓国映画の特色、ジャンルとしての個性を表に出そうという意図がちゃんと際立っている。

もちろん、これらやる気が?な男たちも極限の状況とお互いの行動によってナイスガイ!に変わっていくのは、これもお約束ですが、もともと3人ともに素はイケメンなので、見事に変化を見せてくれます。

特にいよいよ『白頭山』の坑道に入って行くイ・ビョンホンと主人公のハ・ジョンウの姿を見ていると、思わず拳にちからが入り、目頭が熱くなります。

侮りがたし、韓国映画!

すっかりしてやられてしまいます。

 

★★★★★ 完璧!!生涯のベスト作品

★★★★  傑作!こいつは凄い

★★★   まあ楽しめました

★★    ヒマだけは潰せたネ

    失敗した…時間を無駄にした

 

☆は0.5