ブラック・ウィドウ
BLACK WIDOW
〔勝手に評価 = ★★★ = アメコミ映画も女子パワーの時代!〕
2020年/アメリカ映画/133分/監督:ケイト・ショートランド/製作:ケヴィン・ファイギ/原案:ジャック・シェイファー、ネッド・ベンソン/脚本:エリック・ピアソン/撮影:ガブリエル・ベリスタイン/出演:スカーレット・ヨハンソン、フローレンス・ピュー、デヴィッド・ハーバー、O・T・ファグベンル、レイ・ウィンストン、レイチェル・ワイズ、オルガ・キュリレンコ、ウィリアム・ハート、ジュリア・ルイス=ドレイファス ほか
【気ままに感想】
世の中、カッコいいお姉さんが戦うアクション映画が“さらに”溢れてきました!
随分前から、アンヌ・パリロー、キャメロン・ディアス、アンジェリーナ・ジョリーやミラ・ジョヴォヴィッチ、ユマ・サーマンなどなど、元気で健康的なお色気お姉さまが大活躍するアクション映画が出てきてはいましたが、近年は、さらに拍車がかかり、もう殴る蹴るの大活躍。鼻血を垂れ流して、青タン・赤タンの傷だらけになりつつ、男どもを懲らしめまくる逞しい美女が次々と現れてきました!
ざっと挙げても、シャーリーズ・セロン、クロエ・グレース・モレッツ、ジェニファー・ローレンス、キム・オクビン…。
最近はカッコいいアクション男優ってなかなか思いつかなかったりするのだけれど、女子に至ってはどんどん名前が思いつくような気がする。
そんな時代の流れの中?“ヒーロー映画=(ボンクラな)男の世界”!という公式が基本であったはずのアメコミ映画も、随分流れが変わってきました。
つまらないことでクヨクヨしたり、すぐに仲たがいをしたり、酒浸りの自堕落な生活に転落したりする、アクション・シーンよりも御託の方が長い、面倒で情けないヒーローどもを尻目に、DC映画では、まさに神さま、仏さま、ガル・ガドットさまの、神々しいまでの大活躍!!加えて、これ以上ないキッチュな愛敬ぶっちぎりのマーゴット・ロビー!
すっかりボンクラたちはノック・アウト(死語)!な今日この頃。
一方で、DC映画の最強のライバルであるマーベル映画では、満を持してブリー・ラーソンが登場したものの…残念!孤軍奮闘、キャラの立ち具合でもまだまだ不十分。形勢は全く不利な状況でした。
そこで!
ここはやっぱり『アベンジャーズ』古参の姉御が一肌脱いで、押し戻しちゃる!!
そんなリキが入った作品となりました~!!
何せ新型コロナの影響で公開はず~っと延期された上に、NETの同時配信のために劇場公開も限定的になってしまった、かなり境遇としては不幸な作品なのですが、ところがどっこい!やっぱりこういう映画は劇場じゃなくちゃ!
スカーレット・ヨハンソンもすでに30半ばだけれども、まだまだ若い!
貫禄も十分、見事なアクション映画となりました。
しかも、スカーレット・ヨハンソンにとどまらない。本作では女子パワーを強調するためか…??出てくるのは女子ばかり!
味方の男キャラでは、スカーレット・ヨハンソン(ナターシャ・ロマノフ)の偽の父親として、旧ソビエトがキャプテン・アメリカに対抗して作り上げた強化人間レッド・ガーディアン(演じるのはデヴィッド・ハーバー)が登場するものの、キャプテン・アメリカのライバルという設定なのにクリス・エヴァンスとは雲泥の差のビジュアル。たるんだ体系の普通の濃いおっさんです。見事なまでに旧ソビエトをバカにしています。
でもそれ以外は、判で押したような健康的なスリム女子たちの大集合!
スパイと言うより兵士という方がピッタリの女子養成機関『レッド・ルーム』が今回の敵組織ですから、どんどん戦う美女が出てきます。
…でも、よく考えたら、何で女子限定のスパイ養成組織ってあるのでしょうね?しかも“戦う”って点で、ニーズがどこまであるのでしょうか。そんなニッチな秘密組織って、効率が悪いような気がするのです。まあ、それはこの作品に限った疑問でもありませんが。
ご存知アベンジャーズの紅一点(最近は女子メンバーも増員されてきましたが)ナターシャ・ロマノフことブラック・ウィドウも、レッド・ルームで養成されたのですが、実は『ブラック・ウィドウ』という名称は固有の愛称ではなく一般名詞だった。
本作でのスカーレット・ヨハンソンの偽の母親(レッド・ガーディアンと偽の夫婦)をレイチェル・ワイズが演じ、同じく偽の妹をフローレンス・ピューが演じていますが、役は同じく『ブラック・ウィドウ』。
つまり、本作の題名となっている『ブラック・ウィドウ』は、スカーレット・ヨハンソン=ナターシャ・ロマノフのこと(だけ)ではなく、レッド・ルームで養成されたカッコいい女子スパイのことだったのです!!
実は、このブラック・ウィドウの皆さん、不思議なお薬で精神をコントロールされています。
しかも、行動が命令から逸脱(=寝返り)すると、身体に埋め込まれたマイクロ爆弾がボンっ!!爆発して自分も死亡!レッド・ルームの思いのままに操られています。
ところが、実はこのコントロールを破るお薬=解毒剤があった!!!本作は、この、よくわからないピンク色の解毒剤の争奪を巡るお話だったのです。
ちなみに、外気に触れると赤く気化するこの解毒剤のプロダクトは映画版の『バイオハザード(2002)』の『T-ウィルス』を入れたカプセルのモロパクリです。
で、まず最初に気化した解毒剤を吸い込んだのは、フローレンス・ピュー。この解毒剤をレッド・ルームから持ちだして逃げていた裏切者を追いかけるミッションの途中で、裏切者を倒すと同時に図らずも自ら解毒剤を吸い込んでしまう。
するとどうでしょう??
まるで憑き物が落ちたようにスパイ活動をやめて、打倒レッド・ルームのために残った解毒剤を持って逃げ出します。
よほど、レッド・ルームの人たちは今の境遇が嫌いなのでしょうね。もう少しワークライフバランスに配慮してさえいれば、こんな内輪のいざこざで1本の映画ができてしまうような事態にはならなかったのではないでしょうか。
『ブラック・ウィドウ』の『ブラック』って実は「ブラック」企業と同じ語源だったのかもしれません。
かつては、偽物ではあったけれど、家族として苦楽を共にしていたスカーレット・ヨハンソン、フローレンス・ピュー、レイチェル・ワイズそしてデヴィッド・ハーバーの4人。
どういう経緯があったのか実は曖昧なのですが、今では4人バラバラでしかも仲が良くない。
そんな4人が再び協力して『レッド・ルーム』の支配者ドレイコフ(レイ・ウィンストン)を探し出して『レッド・ルーム』を壊滅させるまでの物語です。
どうしても、見つからないドレイコフの居場所は実は…。
正直言ってしまうとこの作品は、『アベンジャーズ』シリーズでなくてもよかったのでは?と思います。というか、『アベンジャーズ』でなかった方が…と言ってよいかも。
他のヒーローと絡む場面が別にあるわけでもないし、中途半端に『アベンジャーズ』シリーズにつながっている(けどほとんど話のつながりはない)ので、一連の『アベンジャーズ』を観ていないとわかりにくい(まあ、それが狙いでしょうが)。宣伝では『孤独な暗殺者ブラック・ウィドウは、なぜアベンジャーズになったのか?』ということになっているのですが、そんな理由はこれっぽっちも明らかになりません。
いっそすっきり、単純にカッコいい女スパイが戦うお話にした方が、もっとぶっ飛んだ映画になったのではないかな~。
少なくとも、落ち着いて観ていられたのではないかと思うのですが。
出演者ではやはり主役のスカーレット・ヨハンソン。『アベンジャーズ』シリーズや『LUCY/ルーシー(2014)』『ゴースト・イン・ザ・シェル(2017)』などで、いつの間にかすっかり戦うお姉さんになってしまったかと思っていたら、最近は『ジョジョ・ラビット(2019)』で素敵なお母さん役、『マリッジ・ストーリー(209)』でもアカデミー賞などの色々な賞にノミネートされるなど、ちゃんと演技ができる作品にも出てくるようになりました。
本作は、そんな戦うイメージを払拭するための“一区切り”という意味があるのかもしれませんね。ナターシャ・ロマノフは死んじゃったことになっていますので(というものの、死んだヒーローがすぐに生き返ってしまうのがアメコミのパターンですが)。
演技+アクションと最強になったスカーレット・ヨハンソンは今後どこに行ってしまうのか??ちょっとだけ気になります。
一方、演技派かと思っていた女子がアクションに挑戦!というか、すっかり戦うイメージを身につけたのがフローレンス・ピュー。『ミッドサマー(2019)』の精神不安定な女子大生が印象的で、飛び切りの美人…というわけでもないし、引き続き神経質演技に磨きをかけて行くのか…と思っていたら、こんなに活発で太々しい女子を演じるなんて!
体型もガッシリしているし、アクションを身につけたらこちらも幅のある演技が期待できる。今後の活躍が楽しみかも。
最後に一言。
この作品以降、新たなマーベル映画のステージに入って行くそうですが、すでにラインナップされている8作品には…残念!女子パワー作品が見当たらない。
せっかく、女子だらけの作品を作ったのに、マーベル映画は本当にこれでいいのか??
ちょっと物足りないぞ。
★★★★★ 完璧!!生涯のベスト作品
★★★★ 傑作!こいつは凄い
★★★ まあ楽しめました
★★ ヒマだけは潰せたネ
★ 失敗した…時間を無駄にした
☆は0.5