ワンダーウーマン 1984

WANDER WOMAN 1984

WW84

 

〔勝手に評価 = ★★★★ = ガル・ガドット様降臨!〕

 

2020年/アメリカ映画/151分/監督:パティ・ジェンキンス/製作:チャールズ・ローヴェン、デボラ・スナイダー、ザック・スナイダー、パティ・ジェンキンス、ガル・ガドット、スティーヴン・ジョーンズ/原案:パティ・ジェンキンス、ジェフ・ジョンズ/脚本:パティ・ジェンキンス、ジェフ・ジョンズ、デイヴ・キャラハム/撮影:マシュー・ジェンセン/出演:ガル・ガドット、クリス・パイン、クリステン・ヴィグ、ペドロ・パスカル、ロビン・ライト、コニー・ニールセン、リリー・アスペル、ルシアン・ペレス、リンダ・カーター ほか

 

【気ままに感想】

 

ズバリ言って…ガル・ガドットがワンダーウーマンを演じたことで本作は傑作!となりました。

 

お話として志は悪くないけど、所詮アメコミ映画の続編物。前作に引き続き監督のパティ・ジェンキンス(今回は原案・脚本も)が上品に作り上げてはいるものの、万人に受け入れられるようにわかりやすい単純化とその一方で、オタクのコミックファンにもちゃんとした目配せ。そのため一般のお客さんは置いてけぼりになる、というアメコミ映画の欠点は免れていない。

技術革新が進む中、映像だってめちゃくちゃ凝った作りというわけでもない。

『アベンジャーズ』や本作含む『ジャスティス・リーグ』のシリーズによって、アメコミ映画というのがジャンルとして確立してくると、作品のクオリティは一定程度保証されるようになるものの、かえって尖がったことはできにくくなって、突出したクオリティの作品にはなりにくい…というのが実情ではないでしょうか。

本作だってよくよく振り返ってみると、そういった「良くも悪くも」アメコミ映画としての枠に収まった、決してびっくりさせられるような作品ではありません。

でも、それにも関わらず、本作が十二分に満足できる作品に仕上がったのは、何者によるものではありません。

ガル・ガドットのおかげ!!

と言って間違いではありません。

文字通り神々しいまでの美しさとカッコよさ。

マンガのコスチュームを身にまとってもダサくならない…というか光り輝くくらいピッタリくるのはガル・ガドットだからと言えるでしょう。他の人が演じてもこうはならないのではないか?

どんなに可愛らしい、あるいはカッコいい人であっても、アメコミ・ヒーロー/ヒロインを演じるとどうしても“マンガ”になってしまう。どう見ても“コスプレ”になってしまう。

ところが、ガル・ガドットがワンダーウーマンのコスチュームを着ると、それはコスプレではなく、「ワンダーウーマンになる」。

前作で初めてガル・ガドットがワンダーウーマンの格好をしたとき、監督のパティ・ジェンキンスその人ですら感動で思わず涙を流した…という記事を雑誌で見ましたが、十分に納得!!

もう、ガル・ガドットのワンダーウーマン姿を見ているだけで、本作を鑑賞する価値は十分にあり!と言えます。

どんな風にって??…百聞は一見にしかず…まずはご覧ください(笑)

 

ところで、今さら触れるのも何ですが、本作も新型コロナの影響を大いに受けた作品です。

当初6月に公開予定だったのが8月、10月と延期されて、ようやく2020年12月に公開されました。思われた通り、随分と興行成績的には苦戦しているようですが、それでも、軒並み大作の公開がどんどん延期されて、年末に観るべき作品がほとんどない!という異常な状況の中で、ほぼ唯一、王道のエンタメ作品として公開に踏み切った、という点で本作の英断は高く評価してよろしいのではないでしょうか。

新型コロナ禍の陰鬱とした空気が漂う世界で、すっきり気持ちよい作品をスクリーンで見ることができる…映画ファンにとっては本当にありがたい作品となりました。

余談ですが、本作には世界が危機に瀕しても自国のことを優先しながら、具体的な政策は自分で決めることができず、ヴィランに操られるタカ派の合衆国大統領が登場しますが、本作の設定は1984年。当時はレーガン大統領の時代ですが、本作での大統領はレーガンというよりトランプ大統領によく似ていて、当初予定通り6月に公開されていたら興味深い社会風刺になっていたのかもしれませんが、実際の公開は大統領選終了後の12月。政治を笑い飛ばす余裕もない現状に、これはすっかり空振ってしまいました。

 

第1次世界大戦で恋人のスティーヴ(クリス・パイン)を失って早70年近く。

一人寂しい生活を送るダイアナ(ガル・ガドット)ですが、スミソニアン博物館で学芸員?研究者?として働きながらも世界平和のためにワンダーウーマンとして(ただし姿を隠して)活躍をする忙しい毎日。

1984年夏のこの日も交通事故に巻き込まれそうになった女性を助けたり、ショッピングモールの宝石店に押し入った強盗を警察に突き出したりと大忙し。

そんな中、被害に遭った宝石店は実は違法に骨董品や財宝を扱っていた、ということがバレて、ダイアナが働く博物館にFBIから押収した品物の鑑定依頼が来る。担当することになったのは、博物館に採用されたばかりのバーバラ(クリステン・ヴィグ)というあか抜けない研究者。博識なバーバラは押収物の1つをシトリンでできた、まがい物の宝石を作るための材料と判定する。バーバラと親しくなったダイアナは、シトリンが埋め込まれた台座にラテン語で「何でも一つだけ願いをかなえる」と書かれていることに気づく。本気にしない2人だったが、バーバラは「ダイアナのような人になりたい」と願い、ダイアナはスティーヴに会いたいと願ったのでした。

その頃、TVCMなどの宣伝を通して派手に出資金を集めていた石油会社『ブラック・ゴールド』が博物館に多大な寄附を申し出てくる。

実は、ことごとく石油の発掘がうまくいかない『ブラック・ゴールド』は火の車で倒産寸前でしたが、社長のマックス・ロード(ペドロ・パスカル)は願いをかなえる石が本物であると信じていて、石を手に入れるために博物館とバーバラに近づいてきたのだった。

マックス・ロードはバーバラをたぶらかしてまんまと石を手に入れる。そして、「自分自身が石になること」を念じると、石は粉々に崩れ、マックス・ロードは自分が人の願いをかなえる能力を手に入れたことを感じるのだった。

また、バーバラは自分にとてつもないパワーが身に付いていることに気づき、一方、ダイアナの前には「自分はスティーヴだ」という青年が現れて…。

 

まず気になるのは舞台が1984年ということ。

どうして1984年??

おそらく皆さん気になるところではないでしょうか。どうもはっきりした答えはないようですが、ある意味捉えどころのないのが1980年代。

全体的には経済、文化の豊かさや成長を感じていながら、日米貿易摩擦やブラック・マンデーの株価大暴落などの問題は起きていたし、ベトナム戦争終結後穏やかな日々が続き、平和を満喫していながらも、冷戦の緊張は続いていたしイラン・イラク戦争勃発など重大事件も勃発していた。呑気な時代にも世界的な危機は存在していたのだ、と本作は警鐘のメッセージである、という解釈もできるでしょう。あるいは、男女共同参画社会が謳われるようになる直前、女性の力が重要な役割を果たすようになってきた時代である、との意味もある。

おそらくパティ・ジェンキンスはその解釈を観客それぞれに委ねようとしたのでしょうが、それでも…う~ん、やっぱりよくわからないですね。

お話としては現代であってもすっかり問題はないようだし、ドラマにうってつけの激動の時期は第1次世界大戦以降何度も訪れています。

それをあえて、ほとんど何もなかった、と言ってよいくらいの80年代の真ん中に持ってきたのはやはりちょっと不思議な気がします。

蛇足ですが、主なシーンの舞台がワシントンDCではあるのですが、NETで確認して気づいたのですけど、1984年の夏にはロサンゼルスオリンピックがあったのですね。本作では全く触れられていませんがそれも気になる点…でしょうか。

ちょっと捉えどころのないフワフワした時代を舞台にすることで、観る人に特別の思い入れを持たせない…あるいはそれぞれが自由に解釈ができる…というところが狙いだったのかもしれません。

 

物語自体はアメコミ映画らしいご都合主義炸裂でありつつウェルメイドです。

「何でも願いが叶う石」、というお手軽&トンデモ設定から始まって、第1次世界大戦時の計器類もいい加減なガソリン・エンジン飛行機のパイロット(スティーヴ)がジェット戦闘機(ダイアナが魔法をかけてインビジブル(透明)ジェットになります!)を操縦できてしまったり、ダイアナの自宅にはどういう訳か伝説の鎧『ゴールド・アーマー』が仕舞ってあったり。

敵役のヴィランにしても、チーターことバーバラは変身?前のダサいオールドミスの様子は全くステレオタイプ。絵に描いたようにハイヒールで躓いたり書類をバラまいたり。

もう1人のヴィラン、マックス・ロードは何でも願いが叶う石のことやスミソニアン博物館にあること(FBIが大ぴらに公表するとか考えられんし)をどうして知っているのか…とか、そういう細かいところも全くお構いなし。

マックス・ロードは自ら願いが叶う石の能力を手に入れて、世界中の人々の欲望を実現させて混乱を起こして世界を支配しようとするのですが、双方向型のインターネットを利用するのであればまだしも(1984年ですからインターネット普及してないので)、単なる無線の送信機(みたいなもの)を使って人々の思考を左右しようとするうえに、最後はダイアナの呼びかけに世界中の皆さんは“見事に”目が覚めてしまう(もっとも、ダイアナは例の○○を使って人々に話しかけるのですけど)、見事な大団円。

あれだけ酷いことをしたマックス・ロードも最後は善人に戻ったところ…お咎めなし??

いくら平和主義のワンダーウーマンと言っても、そこまでめでたし、めでたしの終わり方はいかがなものか??

 

でも、ダイアナ自身はめでたし、めでたしで終わらないところ(そのストイックさがまたよろしい!)や、ダイアナが世界中に呼びかけるそのお話の中身が…分かっているほどクサいのだけど…ついつい涙腺が緩んでしまう!!

(繰り返しになりますが)まんまとガル・ガドットとパティ・ジェンキンスにしてやられてしまいます。

う~ん、こいつは一本とられました!

それから、最後の最後にプレゼントが!

「やっぱりワンダーウーマンと言えばこのひと!」という中高年も多いのではないかと思いますが、何と!リンダ・カーターがカメオ出演。

新型コロナ禍の時代だからこそ、待ち望まれた作品になりました。

 

★★★★★ 完璧!!生涯のベスト作品

★★★★  傑作!こいつは凄い

★★★   まあ楽しめました

★★    ヒマだけは潰せたネ

    失敗した…時間を無駄にした

 

☆は0.5