レプリカズ

REPLICAS

 

〔勝手に評価 = ★★☆ = そんなに目くじら立てないで〕

 

2018年/アメリカ映画/107分/監督:ジェフリー・ナックマノフ/製作:ロレンツォ・ディ・ボナヴェンチュラ、マーク・ギャオ、スティーヴン・ハメル、キアヌ・リーヴス、ルイス・A・リーフコール/原案:スティーヴン・ハメル/脚本:チャド・セント・ジョン/撮影:チェコ・バレス/出演:キアヌ・リーヴス、アリス・イヴ、トーマス・ミドルディッチ、ジョン・オーティス ほか

 

【気ままに感想】

 

いや~この作品に対する皆さんの評価の低いこと。

NETで拝見しますと、何とも人々のガッカリ感が伝わってきます。実際、興行的にも大コケしたそうですが。

それにしても気になるのが製作陣の中に名を連ねる「製作総指揮」なる人々。ときどき沢~山名前が並ぶ映画も拝見しますが本作では20名!口を出さない後見人も多いとは聞きますが、マジで20人が「総指揮」したら…それって「指揮者が居ない」のと同じですね()

この辺の実情についての解説は業界の方にお任せをして…。

 

本作の最大の欠点は、まるで「みんなで話し合いをして作りました」というような、トンガリ感の無さ。冒険も挑戦もない円満さ…です。

色々な分野、セクターに忖度したような物足りなさ。

ミステリアスなSF作品となれば、設定やビジュアル、未来技術のビックリ度などなど多様な切り口で特色を出せるはずですが、何でもかんでも突っ込んで玉虫色にしてしまって、しかも角を削って丸くしてしまったような作品です。

本来大衆芸術である映画において、誰でも安心して観られる作風、は悪いことではありません。

ドギツイ残酷シーンや性的表現などはときに胃にもたれるし、最後はハッピーエンドを期待するのは自然なことだし、後味悪い作品は敬遠される。かと言って目新しさや映像的なワンダーはなければ当然物足りないし、感動したりしんみりしたりする体験も欠かせない。

そんな様々な要求をうまくまとめてしまえばウェルメイドな感動作になるのでしょうが、あまりごった煮に詰め込んで最大公約数にしてしまうと…まあ、本作みたいになる()

何が悪い、というわけではありませんが、かと言って何が良いとも言えないところが問題でしょうか。(NETではCGの出来の悪さを指摘する意見も散見されましたが、タブレットでチェックするのであればそれほど気になる訳でもない)

とは言うものの…。

単に2時間ヒマをつぶす…ための用途であれば、結構意味あるかもしれません。少なくとも、その後のデートが気まずくなったりはしません()。邪魔にはなりません。時間調整には役に立つ。

 

実際観ていると「オッ、結構これあるよね~」という部分もあります。

一番感心したのは(物語のシチュエーションとしては感心している場合ではないのですが)、「研究室に3機分のポッドしかなくて、4人の家族を救うことはできず1人諦めなくてはならない…」という設定。

大学やら研究機関やらが直面している切実な問題が「資金不足」。速攻でリターン(ありていに言ってしまえばビジネス化)できない研究には研究資金が集まらない。

人間の意識を“完コピ”しよう!!という野心的な研究であっても「それがビジネスとしてどうなの?」と言われると研究貧乏になってしまう。クローン人間を作るポッド…なんていう夢のような装置(しかも人1人で運べるくらいコンパクトで優れもの())も予算ギリギリで3基しかない。

家族をいっぺんに失ってしまったキアヌには「予算不足」による苦渋の選択を迫られます。これはシャレにならない。世の研究者は大変です。

しかも、資金提供者の実態は実はびっくり?×××(ネタバレになりますので)なのに、どうしてケチ!!と、おそらく世の(研究資金の調達に苦労をされている)研究者のみなさまには“歯痒い”感満載!です。

 

この度のキアヌさまは医療系企業の研究者。専門はたぶんIT系(キアヌと言えばIT系(マトリックス症候群))ですが、研究内容は死者の脳のシナプスをスキャンして記憶をデジタル化してAI(あるいはクローン脳)にダウンロードする、というもの。もうすでに200人以上の死体の脳をスキャンしては失敗しています。でも、まあ研究なんてこんなもの。失敗も研究成果のうちです。

でも、資金的なプレッシャは半端なく、何とも厳しいこの世の中。

どうにか、スキャン成功してAI掲載ロボットへのダウンロードに成功するのですが、なぜか精神異常を来して自殺!!まるで、『ロボコップ2(1990)』のロボコップ2号機の開発実験失敗のシーンの再現…というよりパクリ(オマージュ)です。いきなり人間(の意識)が機械に置き換えたときに人間はパニックになるはず!という前提の設定。

『ロボコップ2』では「じゃあ精神的にタフな検体を探そう!」というアナログな思考になるのですが、本作では「何らかの条件を与えれば改善されるのではないか!」と“微妙に”科学的です。

でも、研究資金を提供してくれるパトロンの条件はシビア。もうすぐ研究打ち切りの試練が待っています。

そんな切羽詰まったキアヌですが、一方で家族サービスも重要(この辺は現代的)。仕事の悩みを抱えつつも家族サービスのキャンプは実行!です。

でも、そんなときの自動車運転は鬼門。大雨の中キャンプを強行しようとしたキアヌは家族を乗せたまま事故ってしまい妻と3人の子どもをいっぺんに失ってしまいます。

そこでキアヌは同僚の力を借りて研究室の機材をちゃっかり流用。クローン人間を作成し死体から取り出した記憶を植え付けて元通りの家庭を復元しようとします。

ところが前述のとおり機器は3人分。泣く泣く1人の復元を断念します。

しかし、生き返った家族には復元作業も含めて事実を知られないように、その1人に関する記憶をすっかりデリートしてしまいます。

何事もなく元の“4人家族”に戻れた…と思ったキアヌですが、妻(のクローン)のアリス・イヴが異変に気付きはじめて…。

 

この後の展開が消した記憶と現実の齟齬を突き詰めていくようなスリリングなものであればSFサスペンス・ミステリとしてもう少し評価も高くなっていたのかもしれません。

が、「えっ??そっち?」

という風に明後日の方向に行ってしまったところに製作陣の安易さというか、いろんな意見(アイデア)をまんべんなく丸く収めた感じが多くの人に否定的に感じたのでしょう。

気になった方はそこら辺をお確かめください。

 

クンフーしないキアヌってどうなのかな?

それでも甘いマスクが良いわ~ってなるのでしょうか?

本作では、キアヌもですが、妻役のアリス・イヴや3人の子役がとてもキュートで、まるで絵にかいたような家族です。アリス・イヴは童顔ですが結構な美人。思春期に差し掛かっている子ども(子役)たちも嫌味なく、普通の子どもをきっちり普通に演じている(意外に“普通”は難しい。子役ならなおさら)。可愛らしい。

復活する(生き返る?復元される?)までの過程が結構あるので、家族のキャラが生きてくるのは後半以降になってしまうのですが、なかなか厳しい状況の中でも健気にお互いを助け合う姿はほほえましいです。

子どもたちも含めてみんな一生懸命がんばったのに作品自体の評価が高くなくてちょっと残念でした。

ぜひこの家族を演じた方々に、次はもっとキリッとした良作に出演できるチャンスが訪れますように。

 

★★★★★ 完璧!!生涯のベスト作品

★★★★  傑作!こいつは凄い

★★★   まあ楽しめました

★★    ヒマだけは潰せたネ

    失敗した…時間を無駄にした

 

☆は0.5