search/サーチ

SEARCHING

 

〔勝手に評価 = ★★★★☆ = 万華鏡のような映像とストーリー〕

 

2018年/アメリカ映画/102分/監督:アニーシュ・チャガンティ/製作:ティムール・ベクマンベトフ、セヴ・オハニアン、アダム・シドマン、ナタリー・カサビアン/脚本:アニーシュ・チャガンティ、セヴ・オハニアン/撮影:フアン・セバスティアン・バロン/出演:ジョン・チョー、デブラ・メッシング、ジョセフ・リー、ミッシェル・ラー ほか

 

【気ままに感想】

 

全編最初から最後まで、パソコンの画面で構成されたビジュアル。

『アンフレンデッド(2015)』という野心的な先行ホラー作品がありますが、『アンフレンデッド』は、「行方不明になった撮影隊が残したフィルム」とか「監視カメラが捉えた映像」とか「たまたま誰かが回していたビデオ」といった、今までも低予算(なので映像がチャチでもOKという設定)を逆手に取った一発アイデアのバリエーションの1つとして片づけられた感があります。

ところが、その一発アイデアを真正面に据えて、ビックリ作品としてではなく、ちゃんとしたサスペンスとして成り立たせようとしたのが本作です。単なる低予算の言い訳としてではなく、しっかり表現方法として確立させています。

本当にすごい!

 

新しい表現方法を確立した、という意味では極めて貴重な作品。一見の価値があります。

基本的に2点のことによって本作は素晴らしい作品となっています。

 

1つは、ネット、パソコンの機能、サービスの向上。

膨大な画像データですら共有、保存が容易になった現代社会では、パソコン上でできることが無限に拡大しようとしています。題名にもなっているように、主人公は、パソコン内のデータ、ネットデータを検索、分析しながら行方不明になった娘の足取りを探し出していきます。様々な画像データやSNS、検索サービスのやり取りや“会話”を通じて、観客は新しいスタイルの“演劇”を見せられることになります。

それが、物語を語るツールとしてしっかり機能している(させた作品になっている)ところがこの作品の強みです。

 

もう1つは、ネット画面というある意味一発芸的なツールを使いながら、ストーリーとしてしっかり深みのある作品に仕上げたところ。

最初は、ネットイジメによる陰惨な事件かな?と思わせておいて、実は親も知らない娘の裏の顔が…という展開から、急に身近な真犯人??という感じで、どんどん事件の様相が変化していく。主人公のお父さんと同様に、観客はパソコン画面という限られたビジュアルから謎解きに付き合わされるためにストレスが高まって来て…。

よく計算された作品です。

単純なサスペンスとかミステリ、ホラーにしなかったのは超アッパレ!!

ミステリのオチとしては正直イマイチな感じもするのですが、最後にちゃんと観客のストレスを解消してくれるところは、サービス精神も十分です。

単に一発アイデアに終わらなかったところが本作を傑作たらしめているところでしょう。

 

2年前に妻を悪性リンパ腫で亡くしたジョン・チョー。仲睦まじい家族だったので、心の痛手は未だに癒えない。その夜も親子3人のメモリアル動画をいろいろ見返しては思い出に浸っているのだけれど、高校生になって難しい年ごろのミッシェル・ラーとは妻の死の後は、何となく親子の間がぎくしゃくしていて、チャットでやり取りはしているものの行き違いも多いような気がする。生物の勉強で友だちの家に泊まってくるかも、という連絡もなぜか気に食わない。

娘を待っていたものの、仕方なく寝入ったジョン・チョーに深夜ミッシェル・ラーから3回の電話がかかって来ていたのだけれど、お父さんは気づかないまま。

朝起きてみると学校に行かなければならないはずの娘が帰宅した形跡もナシ。電話のコールがあったことに気づいて携帯にかけてみても娘は出ない。

夕方になっても連絡がないことに不安になって、行っているはずのピアノ教室に連絡してみたら、何と半年も前に教室は辞めたという返事。毎週お稽古代を払っているのに?ネットバンクで多額のお金のやり取りをしていたことも判明。いったいなぜ??

妻の友達に連絡をしたら、友達の息子と一緒にキャンプに行くことになっていたとのこと。ウソをついてキャンプに行ったのか?仕方ないな~と思いながら、翌日その友達の息子に電話で聞いたら「キャンプには来ませんでした」

ビックリして娘のフェイスブックにどうにかログインして友だちに聞いてみるけど、「彼女は友達ではないし、知らないよ」というツレない返事が。一緒にお泊りしたはずの娘も「9時には帰ったし、友達でもないし」「でも、誘ったのはそっちだろ!!」「彼女、勉強できるから…」えっ、娘には友達いなかったの???

とにかく、警察に連絡をしたところ、担当に選ばれたというのが敏腕捜査官のデブラ・メッシング。一緒に捜査をしているうちに、娘が2,500ドルを換金して、偽造免許証を作成していたことが判明。車で郊外に走り去る映像が監視カメラに写っていた。

娘が参加していたSNSから行先が湖であることを突き止めたジョン・チョー。湖には娘が使っていた車が沈んでいて…。

 

こういう作品を上品に仕上げるのはセンスの良さと思います。

最初に仲の良い3人家族の様子を丁寧に紹介することで、観客はこの失踪劇にすっかり感情移入させられます。他人ごとにしておけなくなってしまう。

そういえば、毎日パソコンの画面をにらんでいるよなあ~と感じている世のお父さんにとっては、まさに“自分ゴト”。

画面のあちこちにちりばめられたウインドに仲睦まじい親子の姿を見せる冒頭のシーンですっかり心を鷲づかみにされます。

その後に展開する、SNSなどで知る我が娘の、普段とは異なる様子や行動に、えも言われぬ不安にかきたてられてくる。

こういうビジュアル勝負の映画作品は大抵がえげつないホラー作品だし、ネット社会の何とも言えない不安やコワさは常に感じているだけに、このジワリとした語り口の巧妙さはなかなか有効です。

しかしながら、そんな俗悪なにおいを漂わせながらも俗悪にならない、作り手の姿勢は好感を感じますが、これもすっかり計算のうち。観終わったときに巧妙に乗せられてしまったことに気づいた観客も「これは一本とられたな」と感心させられるところがアッパレな作品です。

 

観客が感情移入しやすいように、本作の登場人物は派手なところがない普通の家族、という描かれ方です。

参加している俳優さんも親近感のある人ばかり。設定がアジア系アメリカ人(韓国系)で地味な感じですが、それがリアリティを高めています。

お父さん役のジョン・チョーも、娘のマーゴット役のミッシェル・ラーも抑えた演技で善良な“普通の人”を見事に演じています。

どちらの俳優さんも飛び抜けた美形ではない(失礼!)のだけれど、好感が持てる演技、キャラクタに本作の説得力がグンとアップしています。

このキャラクタ設定や俳優さんの演技も実は本作の見どころだったりします。

なかなか、奥が深い作品です。

 

★★★★★ 完璧!!生涯のベスト作品

★★★★  傑作!こいつは凄い

★★★   まあ楽しめました

★★    ヒマだけは潰せたネ

    失敗した…時間を無駄にした

 

☆は0.5