あやしい彼女

 

〔勝手に評価 = ★★★ = 多部未華子ちゃんにリスペクトできるか??〕

 

2016年/日本映画/125分/監督:水田伸生/製作:中山良夫、チョン・テソン、由里敬三、薮下雅也、沢佳一、久保雅一、松村俊亮/脚本:古澤智子/撮影:中山光一/出演:多部未華子、倍賞美津子、要潤、北村匠海、金井克子、志賀廉太郎、温水洋一、小林聡美 ほか

 

【気ままに感想】

 

オリジナルの韓国映画『怪しい彼女(2014)』を未見なので予断なく観たのですが、なかなかウェルメイドで楽しい映画です。

「変身」願望をくすぐるお話はおとぎ話の代表「シンデレラ」をはじめ、それこそ山のようにあるわけです。そんな手あかがついて積もり積もって本体も見えないくらいになっていても、こうして沢山の作品が作られるし、楽しい作品ができるのですから、本当に人間というのは「変身!」が好きですね。

 

(家族のため)仕事一筋に働いてきた高齢者がある日若返って、失った青春時代をおう歌する…というあらすじは楳図かずおの傑作マンガ『アゲイン』と同じ。「変身」願望の中でも、「若返り」というのはなかなか人気のシチュエーションかもしれません。何せ、新聞をみてもどこかに必ず若返り器具やサプリなどのコマーシャルがありますから、若返りというキーワードはしっかり魅力があります。

同じ「変身」ものでも、わが身とは全く違う何者かになるのとは違って、“自分”のままで今までとは違う生き方を手に入れることができるのですから、誰もが夢見ることができて確かに面白い。“自分ゴト”として感じることができる分、感情移入もしやすいのでは。

本作のオリジナルは上記の通り2014年の韓国映画ですが、本作の日本版だけでなくすでに中国版、ベトナム版がリメイクされていて、ほかにもリメイク企画があるようで余程この若返りの物語がもてはやされていることがうかがえます。

 

そんな魅力的なストーリー(のはず)にもかかわらず、ネットなどを拝見しますと日本版の本作の評価は必ずしももろ手を挙げてのよいものではないようです。

どこに課題があるのか…ストーリーがよければ問題はキャラ…ということになるでしょうね。と考えると、まずは多部未華子ちゃんに“良し”とする人と“悪し”とする人で評価が分かれました。

多部未華子ちゃんはTVドラマ『デカワンコ(2011)』でノー天気(死語)なピラピラロリファッションの女刑事役で見事に楽しくコメディをやってこなしました。が、どちらかというと大人しいキャラクターのイメージが強いし、外見も端正な美形というよりもファニーで可愛らしい感じ。ドタバタの役柄とは距離があります。

70代のおばあちゃん役を演じた倍賞美津子とは、タイプも様相も違うイメージで、そこらへんの違和感も好き嫌いが分かれるところではないかと思います。

 

もっとも、多部未華子ちゃんファンなら全然OKですのでご安心を(笑)。かなり難しい演技を頑張ってやっています。とはいえ…オーバーなリアクションが求められる場面では、さすがに力量不足。でも、未華子ちゃんは決してコメディ映えしないキャラではないので、経験を積めばもっとうまくなるように思います。

キッチュで可愛らしい未華子ちゃんをもっと観てみたい!期待しています。

 

荒唐無稽な本作をピシッとまとめてくれたのは小林聡美!

多部未華子ちゃん(実は倍賞美津子)の娘役で、母一人娘一人で育ってきて自らも一人息子を女手一つで育てる中年キャリア女性の複雑な感情を、見事に表現して、フワフワ浮ついた雰囲気になりがちな本作をきちんと着地させていました。現実世界の私たちも、作中の小林聡美のように娘、母親、サラリーマンといった風に1人で何役もこなしているわけですが、普通の人々も普段からそんな風にいろんなものに“変身”し役柄を変えて生きている…つまり、「私たちだって(願っているものとはちょっと違うけど)“変身!”できるんだ」ということをあらためてしみじみと感じさせてくれました。

このことこそ、本作のメインテーマかもしれません。

 

★★★★★ 完璧!!生涯のベスト作品
★★★★ 傑作!こいつは凄い
★★★ まあ楽しめました
★★ ヒマだけは潰せたネ
★ 失敗した…時間を無駄にした