舞妓はレディ
〔勝手に評価 = ★★★★ = 元ネタは気にせずに〕
2014年/日本映画/135分/監督・脚本:周防正行/撮影:寺田緑郎/美術:磯田典宏/編集:菊池純一/振付:パパイヤ鈴木/出演:上白石萌音、長谷川博己、富司純子、田畑智子、草刈民代、渡辺えり、竹中直人、高嶋政宏、濱田岳、小日向文世、岸部一徳、大原櫻子 ほか
【気ままに感想】
まず最初にこの映画の一番残念なところ。
ずばり、完全オリジナルにしなかったところです。
訛りのきつい女の子を、半年の間できれいな言葉で話せるように指導して晴れの舞台に出す、という賭けを言語学者がする。
この基本のプロットは『マイ・フェア・レディ(映画版は1964年)』から持ってきています。
本作では、訛りは“薩摩弁”と“津軽弁”のハイブリッド、目指すのは“京言葉”、晴れの舞台とは“舞妓さんになって花柳界デビューを果たすこと”になっています。
でもリメイクというほど元ネタの『マイ・フェア・レディ』を意識して作っていません。
もともと「舞妓さんの映画」を撮りたかった周防監督があらすじの元ネタに『マイ・フェア・レディ』を使っただけという、なんとも中途半端な本歌取りの映画になっていて、はっきり言えば“別の映画”と思ってよいです。
だから、『マイ・フェア・レディ』の“ファン”の方も、“大嫌い”な方も、安心して?観てよい映画です。
元ネタの『マイ・フェア・レディ』は過去の名作とはいえ、現代感覚で観るとかなり女性の人権蔑視的(なおかつ階級差別観濃厚)なお話ですし、本作の舞台も男性の遊び場「花柳界」なのですが、“京言葉”をはじめ“日本の伝統文化”という視点を真ん中に置いた作りになっているので、男尊女卑的なものが“ダメ”という人にも受け入れやすい作品ではないかと思います。
さて、本題です。
田舎出の女の子が京都の花街で修業をして舞妓さんになる…不覚にも!観て気づいた、この筋立ては基本的に“スポコン”です。
厳しい修行(三味線、鼓、踊りのお稽古と…そして京言葉の訓練!)があって、挫折がある。そして、厳しい師匠(星一徹の役回り)と支えてくれる仲間(ときにライバルになったりもする)がいる。さらに、生い立ちの謎と難病(まあこの作品では声が出なくなる…というものですが)と魅力的な鬼コーチ(宗方コーチですね!)が揃えば完璧!!です。
当然ながら主人公は何でもできる優等生ではありません。どんくさいところがあって、どちらかと言えば落ちこぼれに近い。そんな主人公が「根性」でみんなに認められるようになっていく。成長していく。
ということではっきり言って、かなりキッチリ型にはまった“スポコン”ものです。
もともとコメディタッチな映画なので、鼻につくことはありませんが「これでもか!」というくらいに“スポコン”アイテムがテンコ盛りです。
この作品はもう、主人公の春子こと上白石萌音ちゃんの魅力に尽きます。
最初はとても美人に見えないくらい素朴な萌音ちゃんが、最後には可愛らしい舞妓さんに変身する。舞妓さんは可愛いだけでは当然ダメで、完璧な京言葉を使い、踊りや三味線もできて、もちろん礼儀作法は見事!でなければなりません。
この前後のギャップが大きければ大きいほど、“スポコン”ものは面白い。
単なる美少女ではない(というか飛び切りの美少女という訳ではない(笑))複雑な魅力を有している萌音ちゃんというキャスティングを得て、この作品はとてもチャーミングな映画になりました。
ちょっと残念なのは、定番の「根はやさしい鬼コーチ」役の長谷川博己さんが萌音ちゃんとは年齢のギャップが大きかったことでしょうか。少女が恋心を抱く相手にしてはオジさんすぎて、どう見ても萌音ちゃんが長谷川さんを見る目は素敵な王子様を見る目ではなくて、お父さんを見る目になってしまっているようです。
もうちょっとロマンティックな雰囲気があれば「完璧!!」だったのですが。
★★★★★ 完璧!!生涯のベスト作品
★★★★ 傑作!こいつは凄い
★★★ まあ楽しめました
★★ ヒマだけは潰せたネ
★ 失敗した…時間を無駄にした
☆は0.5