俺は断頭台を見上げていた。
中世の処刑に使われ、所謂ギロチンと呼ばれるあれである。
今まさに刑が処された様であった。
地面とは斜に走るよう造られた大きな刃が
最下段の刃止めの位置まで下ろされている。
あの音を聞いた時に下りたのだろうか。
また、当然の如く刃の裏には、死体らしきものが置かれている。
やはり、刃が落とされる迄は息が有ったのだろうか。
また、刃には血糊がべったりと付着しており、
その下には大量の血溜まりが成されている。
出血の勢いはかなりのものだったのだろう。
血の痕は刃から数メートル離れたところにまで、
細く長く伸びていた。
その凄惨な地上の風景に比べて、
断頭台の上の天気は煌びやかな快晴であった。
深く蒼く澄み渡った空の色が、
俺の眼に強く強く残った。
俺は血の海に浮かぶ死の門と、
絢爛極まる蒼の天井を、
きっと地べたから見上げていた。
その異常なまでの空の青さもきっと起因していたと思われる。
目に映る光景はあまりにも非日常に思えて、現実感は希薄であった。
したがって、本来凄惨な状況で在る筈なのに、
俺はさほど残酷さを感じていなかった。
むしろ空の蒼さと、その下の黒ずんだ地面。
そこに走る血痕の赤の鮮やかなコントラストに、
美しさや麗しさを覚え、少し感動すらしていた。
蒼い蒼い黒い黒い赤い赤い赤い赤いアカイ・・・・・
綺麗だ。
切断面は刃の陰に隠れていて、見る事はできなかったが、
死体の胴の一部と両脚は捉えることができた。
どこかで見た服と靴を穿いている。
また死体から切断されたのであろう、
両手首から先の部分を同時に発見した。
その断頭台は首と手首を共に拘束し、
切断するタイプのものの様である。
手首はそこにある。
首はどこにあるのだろうか。