前回記事のモルソー氏宛手紙の続きです。
硬派な時事通信的話題に続けて、家庭的な細々とした話題に移る、この
振幅の大きさがセヴィニエ夫人ですね。
その後に出てくるコルビネッリ氏の話題ですが、この時、コルビネッリ氏
とセヴィニエ夫人は、現代風に言えば、「同じマンション (カルナヴァレ邸)」
に住んでいたようです。 しかし、一向に出会うことが無く、その気も無い
モルソー氏に愚痴をこぼしています。 セヴィニエ夫人はそれが、距離が近す
ぎるがゆえのコルビネッリ氏の無頓着のせいだと言っています。
最後の部分は、コルビネッリ氏かにモルソー氏への手紙です。 どういうわ
けかセヴィニエ夫人を見掛けないのだと言っています。
嫉妬とか復讐といった言葉が使用されていますが、この三人の間で、
何やら 「疑似三角関係ごっこ」 でもしているのでしょうか。
前回手紙の続き
貴男の奥様から室内装飾についてのご質問がありましたが、幾つか意見を
述べさせてください。 タフタの金糸の縁飾りについて何と言われようとも、
既にここに何があろうとも、それらのタフタをシンプルな飾り付けとして、
或いはタペストリーとして使用すれば、夏に向けては、最も心地よく、綺麗
で、爽やかなものです。 そうした使い方をしている二、三の方を知っていま
すが、これほど良いものはありません。 タフタ全体を折り返して丈を詰め、
襞 (ひだ) を付けてください。 他に必要な調度としては、ダマスク織りや
ブロケードがあります。
貴男のご友人、コルビネッリさんの件ですが、その方の近況につきまして
は、その方がご自身でお話になることでしょう。 つまり、私は (あの方の近
況を) 知りません。 コルビネッリさんはお近くにお住まいなので、お会いし
ていないのです。 理由を尋ねられると、「近すぎるから」と仰っいます。 冗
談のようですが本当です。 コルビネッリさんは毎日どこかの夕食に招かれて
いて、その三回か四回に一度、朝、外出する時に出会ったとしても、私は気
が付いていないのでしょう。 もし、コルビネッリさんがフォーブール・サン
=ジェルマンににでもお住まいなら、三十年来の旧交を温めなければと思っ
たに違いありませんが。
このような態度の方ですから、嫉妬のようなものは無いというのが本当で
はないでしょうか。 貴男の嫉妬も満足させられることでしょう。
ラトゥースさんは、この冬の間中、ミルクの食事療法を行っていました。
今は大分、良くおなりのようです。 あの方はポワトゥーで分割された軍隊を
指揮すると考えられています。 そこでは三十万もの兵士、五から六の軍団が
戦闘態勢にありますが、(ラトゥースさんが) いかなる地位に就くことにな
るか、はっきりしたことは分かっていません。 娘の夫はプロヴァンスで任務
についております。 私の息子はこの夏、ブルターニュです。
(私の孫の) 若き侯爵は、伯父の連隊で立派な部隊を持っています。 そし
て、いかなる場所においても、私は貴男様に真の尊敬と友情を捧げることで、
嫉妬のさざ波を立てるのです。
コルビネッリから モルソーへの手紙
私は単純に貴男に復讐するためだけに、カルナヴァレ邸に住んでいます。
しかし、驚くべきことに、セヴィニエ夫人と同じ屋根の下に住むようになっ
てから、彼女とお会いしていません。 この言葉をあまり真面目には受け取ら
ないように願います。 なぜなら、これは全く信じ難いことですし、貴男はこ
れを過剰に微妙な形で手紙に書くでしょうから。