セヴィニエ夫人は気分が優れないようで、フランソワーズに苦しみを訴え
ています。 訴えるのはいいのですが、娘への手紙とは思えない、まるでラブ
レターのような内容なので、訳していると少し気恥ずかしくなります。 この年、
大同盟が始まっており、緒戦のフランス軍の華々しい勝利に喜びを露わに
しています。 フランソワーズの息子も従軍しているようです。
1688年 11月 5日 (金) 娘フランソワーズへ。
昨日はカプチン会修道士様の勧めに従って、薬を服用しました。 体内を浄
化するためです。 大きな箒で体の中を掃き清めるようなものです。 修道士様
の狙い通り、とても気分が良くなりました。 朝、目が覚めて、部屋に中に貴
女の姿が無く、私の気鬱の兆しを見つけて、質し、諭し、律し、閲 (けみ) し、
手助けしていただけないことに、少しばかり苛立ちを感じました。 愛する我
が娘よ、貴女がいてくれたなら、どんなにか心安まり、平和であったことで
しょうか。 貴女の愛の息吹を感じることができず、私は何と悲しい溜息をつ
いているのでしょう。 貴女がお飲みになる珈琲、貴女に送られてくるお着物、
そして、貴女につきまとう朝の訪問者たち。 そうしたものたちに対しては、
私が衝立となってあげられますのに。 本当に、貴女を失うことは総てを失う
のと同じなのです。 愛情に加えて、かくも魅力を振りまくことのできるお方
は、貴女を置いて他にありません。 私はいつも申し上げてきました。 貴女の
魅力を知ってしまっては、日常の出来事は総て味気無く、退屈になってしま
います。 いつか、ラ・ガルドさんが同様のことを仰った時、私は考え込んで
しまいました。 貴女はこうした宝物の総てを残酷にも私から隠しているので
はないかと。 しかし、貴女はそれを私にお示しになりました。 貴女の心は完
璧に平静で、私に対する愛と優しさに満ちていることを知っています。 貴女
がいてくれるのならば、人生の終わりにあっても慰めとなり、私は幸福でい
られるでしょう。
兄のレ・シュヴァリエが私に会いに来ました。 足に痛みを抱えながらの来
訪は、兄にとって大いなる試練であり、貴女にとっては大いなる不運でした。
ヴェルサイユにいれば、兄は貴女の息子や交渉事に大いに役立っていたでし
ょうに。 しかし、私たちはその事で思い煩ってはなりません。 これも神の思
し召しです。 神意なくしては何事も立ちゆかないのです。
メリ嬢はここに来て、私の世話をしたがっています。 彼女は以前、自身が
重篤な鬱に襲われたことがあるために、それが自分の義務のように思ってい
るのです。 時に私たちの家が病院のように思えます。
[同日、午後五時]
最悪のお天気で、貴女からの手紙も受け取ることできません。 私は兄の部
屋にいます。 役に立てることはあまりないのですが、お世話をしています。
兄は寝台に寝ていますが、貴女に手紙を書こうとしています。 悪いのは膝な
ので。 事ある毎に、もう足は治ったと言いますが。
(中略)
明日、貴女の心は喜びに包まれるでしょう。 フィリップスブルグが陥落し
ました。 貴女の息子も無事でいます。 ここにいる誰もが、マンハイムは我々
の爆弾で破壊されて降伏勧告を受ける前に自ら降伏を申し出てくるだろうと、
信じて疑いません。 ですから、ゆっくりお休みになり、できるだけ早く貴女
の善意を実現してください。
オランジュ公の参戦が伝えられています。 砲声が聞こえたとのことですが、
いつも同じような話が繰り返されているので、確かなことは分かりません。
ラ・バジニエール氏が足の壊疽のため、お亡くなりになりました。