セヴィニエ夫人の手紙 (娘の結婚) (2) | アルプスの谷 1641

アルプスの谷 1641

1641年、マレドという街で何が起こり、その事件に関係した人々が、その後、どのような運命を辿ったのか。-その記録

 

 
 
 手紙の内容が微妙すぎて、筆者程度の読解力では手に負えない! 
 
何とか訳してみましたが、特に一通目は解釈に自信が無いです。 早くも
 
自分の始めてしまったことを少し後悔していたりして・・・。

 
 
 状況が良く分からないのですが、一通目は娘夫妻はパリにいて、セビィニ
 
エ夫人はリブリーに来ているようです。 別離といっても、ひと月かそこらのこと
 
でしょうに、なのにこの寂しがり方はどうでしょう。 とても娘への手紙とは思
 
えない、まるでラブレターを読んでいるかのようです。
 
 二通目は婿殿であるグリニャン伯爵に宛てたもの。 この時、グリニャン伯
 
爵は、妊娠中の妻をセビィニエ夫人に預け、先に任地のプロヴァンスに移っ
 
ていました。 夫の傍に行こうとする娘を必死になって止めてようとしています。
 
それはいいのですが、娘に対する崇拝ぶりが半端ではありません。 読んでい
 
ると、この人、大丈夫かな、と少し心配になります。
 

 
 
 
1669年 6月 1日 (土) リブリーにて。
 
 愛する娘へ。
 
 貴女が私を愛してくれていることを信じています。 私はまだ生きているの
 
ですから。 私が貴方に対して感じるている愛おしさはとても奇妙なものです。
 
自分でも気付かない内に、貴女にその愛おしさを行き過ぎた形で見せてしまってい
 
たかもしれませんが、それでも相当の部分はまだ秘められたままであること
 
を知っています。 貴女からの手紙がどれほどの喜びを私にもたらすか、ここ
 
で言うつもりはありません。 貴女が元気でいることを知るだけでも嬉しいの
 
です。 そこに愛があるだけで充分幸せです。 貴女が愛されたいと思っている
 
なら、貴女のすることは総て完璧です。
 
 貴女が思っている通り、私は庭の真ん中で手紙を書いています。 ナイチン
 
ゲールや小鳥たちが楽しげに私たちの遣り取りを聞いていますが、あまり敬
 
意を払ってはいないようです。 貴女の手紙を彼等に読んであげても、謙虚に
 
枝に止まっていてはくれませんから。 昨日、私はひとりでハマドリュアデス
 
さんの所に二時間ほどお邪魔してきました。 貴女の話をすると、あの方たち
 
がそれに対して愉快に応えてくれました。 こちらの田舎暮らしが全体として
 
喜ばしいものなのか、自分には分かりません。 その美しさを楽しみながらも、
 
こう言わざるを得ないのです。
  
    すべてを手に入れたとしても、貴女はいない。
 
    貴女を見ることができないのなら、何も見えないのと同じことだ。
 
   
 (原文では 「貴女」ではなく、「カリステ」となっています)
  
 夕食後、私が嬉々として席を立つのは本当です。 私は何をするにしても
 
礼儀知らずですが、貴女はそれを私の性格が自由奔放だからだと言って私の
 
心を傷つけます。 しかし、私の心には貴女の知らない部分があるのです。
 
(後略)
 
 
 

 
1670年 8月 6日 (水) パリにて
 
 私は世界で最も美しい妻を貴方に差し上げたのではないでしょうか。 これ
 
ほど洗練され、育ちの良い娘が他にいるでしょうか。 これほど優しく貴方を
 
愛する人が他にいるでしょうか。 キリスト教徒としてこれほど心正しい者が
 
他にいるでしょうか。 貴方の傍にいることをずっと熱望する者が他にいるで
 
しょうか。 これほど献身的に自分の義務を行う者が他にいるでしょうか。 自
 
分の娘をこれほど良く言うのは馬鹿げたことかもしれませんが、私は他の方
 
がしてくださるように、自分の娘を誉めているだけなのです。 この手で育て、
 
誰よりも身近にあの子を見てきたのですから尚更です。 娘の行いの殆どにつ
 
いて賞賛の言葉を惜しまないものの、あの子が他の凡てのことについても、
 
同様に几帳面であることまでは知りませんでした。 世間はあの子を概ね正しく
 
評価してくださいます。 賞賛に値するあの子の美徳が見過ごされることはあ
 
りません。 私には昔から信じていることがあります。 世の中の意見は、狂っ
 
てもいないし不当なものでもないということです。 この意見は、いつの日か
 
反駁されるかもしれませんが。
 
 貴方の健康について、娘がどれほど心配しているかご存知ないでしょう。
 
良くなったと聞いて安心しました。 娘への愛からも、貴方への愛からも。 ひ
 
とつお願いがあります。 またご病気になりそうな時には、娘の出産が済んで
 
からにして欲しいと、ご自分の体に頼んでいただけませんか。 娘はパリに留
 
まっていることに毎日不平を漏らしています。 そして、大真面目な顔で、貴
 
方と引き離されるのは残酷な仕打ちだと言うのです。 まるで、私たちが面白
 
がって、貴方と娘を千キロも引き離しているみたいじゃありませんか。 貴方
 
から娘に、ここで幸せな出産をすることを喜びと共に願っていると、言い聞
 
かせて貰えないでしょうか。 健康のためにも、評判のためにも、最高の手当
 
を受けられるパリでの出産が最上なのです。 パリにいて浮気心を起こすよう
 
なら娘だったら、あの子は一年も前にそうしているでしょう。 娘の良識は誰
 
もが認める所です。 必要ならパリのグリニャン家の方をみんな集めて、私の
 
意見の正しさを証明してみせます。
 
(後略)