【読書案内 14】修道院という名の収容所「マグダレンの少女たち」を読む | アルプスの谷 1641

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1641年、マレドという街で何が起こり、その事件に関係した人々が、その後、どのような運命を辿ったのか。-その記録

 

 
 
 本編の中で、ファビアンヌが修道院で不義の子を産む下りがありますが、
 
これを書くに当って、参考にした本をご紹介したいと思います。 といっても、
 
十七世紀の修道院の内幕を書いた本が見つからず、時代はぐっと下って現代
 
の修道院について書かれたものを読んだのですが、予想外に衝撃的な本と
 
出会うことになりました。 
 
 今回ご紹介する本は、V.S. Alexanderr 著 「The Magdalen Girls 
 
(マグダレンの少女たち)」 です。 

The Magdalen Girls (English Edition)

 映画化され日本語訳も出ているのは、ジューン ゴールディングの
 
 「マグダレンの祈り」 です。 
 
マグダレンの祈り (ヴィレッジブックス)  

 「マグダレンの祈り」 がノンフィクションであるのに対し、私が読んだ
 
 「The Magdalen Girls 」 は、事実を題材とした小説となっています。 
 
 
 マグダレンという言葉は 「マグダラのマリア」 のマグダラに由来します。 
 
マグダラのマリアが娼婦であったとされていることから、堕落した少女たち
 
を意味しています。 
 
 小説 「マグダレンの少女たち」 では、現代アイルランドを舞台に、性的に
 
堕落した少女たちが修道院送りにされ、神の愛による矯正という美辞麗句の
 
もと、強制収容所さながらの生活を強いられる姿が描かれます。 
 
 何と言っても理解し難いのが、性的関係とは男女がいなければ成り立たな
 
いのに、その責任は総て少女たちが負わされるという理不尽です。 しかも、
 
本当に不純異姓交友があったのならともかく、レイプされたとしても少女たち
 
がその責任を負わされました。 甚だしくは、美人だから男性が誘惑されると
 
いうだけで、修道院送りの理由となったのです。 その裏には、嫉妬、狡猾な
 
男たち、親の無理解など、神の愛とは真逆の様々な思惑が渦巻いていました。 
 
 腹立たしいのは、こうして集められた少女たちに強制された労働が、教会
 
の利益となっていたことです。 まさに彼女たちがもたらした利益こそが、現代
 
にまでこの非人道的な制度を存続させた理由に違いありません。 こうした制度
 
はアイルランドを中心に、全世界のカトリックの修道院で、実に 1996 年まで
 
行われていたのです。 
 
 小説では主人公に対して、これでもかとばかりに不幸と試練が降りかかり
 
ますが、主人公は最後まで希望を捨てずに理不尽と闘い抜きます。 フィクシ
 
ョンなら何を書いてもいいという考え方に個人的には賛成しませんが、やり
 
過ぎとも思える波乱の展開は読者を読み進ませる原動力となっています。 
 
面白いと言っては不適切かもしれませんが、最後まで一気に読んでしまい
 
ました。 
 
 
 なお、この問題に対する関心は今なお高いようで、先日、偶然、修道院で
 
生まれて、そのまま養子に出された男性のインタビューを目にしました。 
 
その男性、Paul Jude Redmond は、2014年に
 
 「The Adoption Machine: The Dark History of Ireland's Mother & Baby 
 
Homes and the Inside Story of How ‘Tuam 800’ Became a Global Scandal」 
 
( 養子制度、アイルランドの母子収容施設の暗黒の歴史、そしてチュアム800
 
が如何にして世界的スキャンダルになったか ) を出版しています。 
 
 チュアム800とは、アイルランドのチュアムにある修道院にある集団墓地に 
 
800人に及ぶ幼児の死体が埋めれているというスキャンダルが曝かれたことを
 
指しています。 驚くべきことですが、今年になってやっとその包括的な調査
 
が始まったようです。 
 
 マグダレンの少女たちが生んだ子供たちは、多くが劣悪な環境で幼い命を
 
落とし、集団墓地に、犬猫のように埋められました。 また生き長らえたも子供
 
たちも 「輸出」 され、今なお多くの人々が自分の過去に苦しんでいるのです。 
 
 
 英語の動画で申し訳ありませんが、是非、ご覧になってみてください。