バラナシへ | アルプスの谷 1641

アルプスの谷 1641

1641年、マレドという街で何が起こり、その事件に関係した人々が、その後、どのような運命を辿ったのか。-その記録



ガンジス川のこちら側






「学びと炎、光と死の街、バラナシへようこそ」
 
 それは「生と死」「聖と俗」が際立った対比を見せるヒンドゥー教の聖地
 
です。
 
 信者たちはここで死ぬか、少なくとも遺灰をガンジス川に撒いてもらいた
 
いと望んでいます。 これによって果てしない輪廻転生から解放されると信じ
 
ているからです。 街の両端には火葬場があり、その炎が途絶えることはあり
 
ません。 しかし、荼毘に付される人はまだ恵まれていて、貧しい人々は魂の
 
解放を願い、肉親の遺体を直接、川に流すのです。
 
 
 聖なる河ガンジスは此岸と彼岸を隔て、穏やかに流れています。 街はすべ
 
て此岸である西側にあり、様々な様式のガート(沐浴場)が連なる一方、彼
 
岸である東側は不浄の地とされ、見渡す限りの荒野が広がっています。 考え
 
てみれば、これほど奇妙な光景も無いのですが、非日常が支配する街ではそ
 
れが当たり前のように感じられます。
 
 
 通りを歩けば板に載せられた遺体と擦れ違い、河畔の館で死を待つ人々と
 
出会う。 遺体を焼く煙が川面にたなびき、行者たちは儀式を捧げ、人々は祈
 
り沐浴する。
 
 毎月数千人もの観光客が集めながら営まれる死の劇場。
 
 それがバラナシなのです。
 

 
 

ガンジス川のあちら側