「インドを旅していると、短い間でも何かの祭りに出会うことが多い」
地球の歩き方には、このように書かれています。
その言葉に嘘偽りは無く、私はアーグラーで祭りと出くわしました。 神様
を祭った山車のようなものを引っ張りながら、ピンク色の色粉をまき散らし、
鐘太鼓を打ち鳴らしの、もう大騒ぎ。
カメラを向けた私を見つけるや「おら、おら、おら、俺を撮れい! もっ
と撮れい!」 と突進して来るもんだから、こっちは慌てふためいて逃げ惑う
ばかり。 追い掛けながら、ピンクの粉をまき散らしたりするから、滅茶苦茶
です。 インドの女の子たちは日頃はとても大人しいのですが、この日ばかり
は格別。 男の子たちと一緒になって舞い踊ります。
自分が出会ったのは、少年少女ばかりの小さな一団だったのですが、とに
かく日頃の鬱憤をこの一瞬で晴らすかのような爆発力です。 しかし、その熱
狂の裏に、彼らの抑圧された日常が透けて見えるような気もしました。
行列を何とかやり過ごした後には、全身に色粉を浴びた私が取り残されま
した。
ピンク色の私を乗せたリクシャワラは、「これであんたも聖人だね」 と
冗談を飛ばしながらも、無事にホテル迄、送り届けてくれました。
その後、真っ白だった私のTシャツは、洗濯しても色粉が完全に落ちるこ
とはなく、不気味な灰色となったまま、それを着てインドの街を歩き回る羽
目になったのでした。