第2部 「異端の谷」、第4章「脱出」、第13節 | アルプスの谷 1641

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1641年、マレドという街で何が起こり、その事件に関係した人々が、その後、どのような運命を辿ったのか。-その記録


 
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第4章 「脱出」 第14節 は 9月14日 に投稿します。
  

 
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第4章 「脱出」
 
 
 
13. ジェラルド





 砲撃の音のする方へ馬を走らせる。 煙に霞む木々の間から、敵の槍兵が
 
姿を現し、攻撃を仕掛けてくる。 ひとり目をかわしたが、さらにもうひと
 
りが槍を構えて前方に飛び出してきた。 咄嗟に馬の向きを変えて、剣を抜
 
いて槍を払った。
 
「邪魔をするな!」
 
  返す剣を男めがけて振り下ろした。 男は盾で俺の剣を受けようとしたが
 
受け止めきれず、腕をざっくりと切って後ろに倒れた。
 
  止めを刺したい所だったが、今は一刻の猶予もない。 馬の向きを変えよ
 
うとしたその時、背後から黒い人馬の影が迫ってくるのが目の端に見えた。
 
黒鷲の騎士! その黒い影が馬ごと体当たりをするかと思われた、その瞬
 
間、空を切る音と共に剣が閃き。 咄嗟に剣を振り上げて受け止めたが、馬
 
上の不安定な体勢から、そのまま撥ね飛ばされ地面に落とされた。 黒い騎
 
士が馬を回して迫ってくる。 剣を逆手に持ち換え、地面に倒れた俺の首を
 
狙って、剣を突き立てた。 体を捩って急所は外したものの、剣が肩に突き
 
刺さった。 その衝撃に呼吸が止まる。 視界が歪み、渦を巻く世界の中心に
 
黒騎士が再び現れ、馬上で騎銃を抜き、俺の心臓に弾丸を撃ち込もうとす
 
る姿が見える。