第2部 「異端の谷」、第4章「脱出」、第14節 | アルプスの谷 1641

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1641年、マレドという街で何が起こり、その事件に関係した人々が、その後、どのような運命を辿ったのか。-その記録


 
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第4章 「脱出」 第15節 は 9月15日 に投稿します。
  

 
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第4章 「脱出」
 
 
 
14. ヴィート





 「待て!」
 
  前方に倒れたジェラルドと、その息の根を止めようとする黒鷲ジルドが
 
見えた。
 
「お前の狙いは俺だろう! 望み通りに出て来てやったぞ」
 
  突進してくる俺の姿を認めると、咄嗟にジルドは馬を返して騎銃を俺の
 
方に向けた。
 
「卑怯者、男なら剣を抜け! 俺と勝負しろ」
 
「いいだろう」 ジルドは悠然と銃を剣に持ち替え、乾いた笑い声で言った。

 

「望み通りその首をこの剣で撥ねてやる。 この時が来るのを待っていた

 

ぞ。 汚い裏切者め!」
 
「お前のような殺人鬼の仲間になど誰がなるか」
 
「いまさら聖人面しても遅い! 先に地獄に送り込んでやる」
 
  前足を蹴り上げた馬と馬が空中で体を押し合い、二本の剣が青い火花を
 
散らして衝突する。