第2部 「異端の谷」、第4章「脱出」、第12節 | アルプスの谷 1641

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1641年、マレドという街で何が起こり、その事件に関係した人々が、その後、どのような運命を辿ったのか。-その記録


 
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第4章 「脱出」 第13節 は 9月13日 に投稿します。
  

 
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第4章 「脱出」
 
 
 
12. エウジェニオ






 アンセルモまでが何だよ、俺を置いてくのかよ。
 
  俺は自分の特大のマスケット銃を抱えて、バリケードを乗り越え、自分
 
の足でアンセルモの後を追った。 お前らはいいよな、馬に乗れてよ。 馬が
 
俺を乗せるのを嫌がるの知ってるだろ。
 
  森に流れ込んだ白煙で、すぐに前の三人の姿が見えなくなった。
 
  マスケット銃を抱えて走る俺の前に、突然、姿を現した鉄帽子の敵兵に
 
早速、一発お見舞いしてやった。 至近距離からの一撃で吹き飛ばされた男
 
の魂のために、俺は胸の内で神に祈った。 しかし、次の銃弾と火薬の装填
 
で、両手は一瞬たりとも止まることは無かった。 祈りながらも、頭の中で
 
時を数える。
 
  次の弾丸と火薬を装填するのに二十秒。
 
  さてと、次に祈ってほしいのはどいつだ? さっさと出て来やがれ。