第1部 「告白」、第1章「マレド群像」、第15節 | アルプスの谷 1641

アルプスの谷 1641

1641年、マレドという街で何が起こり、その事件に関係した人々が、その後、どのような運命を辿ったのか。-その記録


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第一章の最終節(第19節)まで、毎日一節ずつの連続投稿です。



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15. ジュリエッタ


  当時、マレドに作られた歌劇場の美貌の歌手。多くの男性たちに慕われた。
  1641年 7月 25日、魔女として告発され処刑される。当時 26才。 


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「その罪は許された」と審問官は言います。


 しかし、私が一体何を許されねばならないのでしょうか。私がどのような


悪いことをしたのか、なぜ私がこんな目に遭わなければならないのか、私に


は分かりません。しかし、それが如何に不条理に思えようとも、私は異端と


して捕らえられた瞬間から、諦めて総てを受け入れるしかないと感じていま


した。歌手として、女優として、虚構に生きた人間だからこそ、それができ


たのかもしれません。これもまた、神の思し召しと信じて、すべてを受け入


れるしかないのだと、そう思ってきました。


 「神の無限の慈悲」を審問官のジョットーは口にします。それなら、この


審問もまた神の偉大なご計画の一部なのでしょうか。


 私はすべてを諦め、自分の運命を受け入れます。


 だから知りたい、


 私は自分の死の意味を知りたいのです。