麒麟¶゚ -9ページ目

麒麟¶゚

まったり更新。









神宮寺は、
あの日以来帰ってこなかった。




顔を会わせることなど
もちろんない。






家に帰る度に、
後悔ばかりが募った。


女と会わなければ…

あいつの話をちゃんと聞いていれば…

あの時、殴らなければ…




1人でいると、妙に広い部屋は、
とても寒かった。



神宮寺は……
いつもこの部屋で、
一人で待っていたのか……



それを…俺は…………





いなくなって、はじめてわかった。
あいつのしていた思いも、
あいつの感じていた孤独も。




「俺は、………っ…馬鹿だ……っ」





仕事にかまけて、
あいつの話もろくに聞けず、
あげくのはて、自分が寂しいからと
女と会っていた。




神宮寺の来も知らずに…







会いたい…
神宮寺に………








俺は、神宮寺に会いに行った。


神宮寺の居場所は、
だいたい予想がついている。



ただ、会いにいって、
拒否されるのが怖かった。


でも、例え拒否されようと…
俺は、神宮寺に会いたい。



会って、
この思いを伝えたい。




そう決心し、インターホンを押した。



*************************




神宮寺に思いの丈をぶつけ、
帰ろうとした時。




「……来栖……」



そこには来栖がいた。


「レンの事…迎えに来たのか?」



来栖のまっすぐな目を、
俺は、見ていられなかった。



その目が語っていた。


お前にレンは渡さない。と。



「少し…話せないか?」


来栖はそう言って、
あるきだした。




問答無用と言うことか…




俺は、黙って来栖についていった。




***********************




来栖は、近くの公園のベンチに座った。


俺も、黙って隣に座った。




「俺、正直、
お前の事許せねえ」


低い声。
よく見ると、少し拳が震えていた。



「でも、酷いことしてるのは、
俺も、同じだ…」



驚いて来栖を見ると、
切なそうに笑っていた。


「俺、ずるいから。
レンの弱ってる心に漬け込んで、
レンを縛ってるんだ。

自分の為に明るく振る舞ってるって、
きっとレンは思ってる。

でも、全然違う。

俺は、レンに嫌われない為に、
レンが離れていかないように、
自分の為に…必死に…笑ってんだ…」


そこまでいって、
来栖は俺を見た。


「俺は、お前が憎い。
だけど…少しだけでも…
レンといられたから…
そこは…感謝してるぜ!!」

ニカっと、眩しいくらいの
笑顔で笑う。



こいつは、
なんて強いんだろう。

「レンは、きっとお前の所に戻る。
そしたら今度は、絶対手放すな。

次にこういうことがあったら…
その時は…わかってるよな?」


まっすぐな目。


ああ…
わかってるさ……


俺は、静かにうなずいた。

来栖は、再び笑顔を見せて
帰ろうとした。



「来栖!!」


俺は、とっさに呼び止めた。


「お前…、神宮寺が俺の所に
戻ってきたら、辛くないのか?

今のお前なら、神宮寺が、
俺の所に戻ってこられないように
することだってできるんだぞ…」



「ばーか!!そんなことするかよ。

確かに辛いけど…
やっぱ好きなやつには、
最高の笑顔でいてほしいじゃん?

なんたって、俺は、王子だからな!!
好きなやつの幸せを願えなくてどうする」



振り返って見せた、来栖の笑顔は、
驚くほど輝いていた。