毎度、当ブログへお越しいただき、ありがとうございます。
実は今回、愛知県で5月ころ訪問した蒲郡市の博物館を紹介する予定でしたが、ちょっと予定を変更して、つい先日訪ねたところについて紹介します。
なぜかというと、ガイドブックやネットでは結構簡単にたどり着けそうに書かれていましたが、実際に行ってみると状況が以前とは変化していて、到達するにはそれなりの装備が必要な状況となっていたからです。
今回、装備をもっていかなかったので、到達できずに挫折しました。
注意喚起のためにも早めに紹介します。
「高瀬温泉の噴湯丘と球状石灰石」を訪ねる
今回、夏休みがちょっと早めになったので、それを利用して長野県北部、安曇野市と大町市にある文化財を巡ってきました。
どれも珍しくて興味深いものばかりだったのですが、その中で今までの趣味道の中で初めて、非公開とされるもの以外でこの目で見ることが叶わなかったものができました。
それが「高瀬温泉の噴湯丘と球状石灰岩」です。実物を目前にして、あきらめて帰ってこざるを得ませんでした。
その理由は「手前にある沢が、渡るのにそれなりの装備を用意する必要があった」からです。
かつては流れは緩やかで水深も浅く、軽装で渡ることができたそうなんです。
軽装とはいっても、私は文化財を訪問するときは普段から登山用の格好で出かけるんですけどね。
↓こんなの
長距離や、お城や古墳などは山の中まで歩くこともあるし、藪漕ぎが必要な場合もありますから。
しかし、沢登りの装備までは持っていません。
とにかく今回も、それなりの格好で出かけたわけです。しかし目的地を目前にして、あきらめざるを得ませんでした。
その様子を紹介します。
まずは高瀬ダムを目指す
噴湯丘とは、温泉の源泉が湧きだしているところで温泉成分が蓄積し、大きな丘を形成しているもので世界的には珍しいものだそうです。
こういったものは日本では各所にあり、夏油温泉の石灰華(岩手県)や湯沢噴泉塔(栃木県)、岩間の噴泉塔(石川県)など、名前こそ違いますが、同じような条件で生成した、いわゆる「温泉生成物」といわれるものです。いずれも天然記念物に指定されています。
これらは秘境ともいえる山奥にあることが多く、それでも高瀬温泉は比較的気軽に行ける場所でした。
それでもやっぱり秘境で、中部山岳国立公園の特別地域として入場に規制が掛かっています(東京電力の管理エリアということもあるようです)。
一般車両は途中までしか入れず、その先は特定タクシーを利用しないと行くことができません。その特定タクシーも手前の高瀬ダムまで。
ここは北アルプスの登山口としても有名で、日本百名山で知られた三俣蓮華岳、野口五郎岳、穂高岳などといった著名な山々の入口でもあります。
だからトレッキングの格好くらいはしていないと危ないです。
まずは特定タクシーで入れる最奥の、高瀬ダムを目指します。
一般車両は手前の七倉ダム湖畔にある、七倉温泉までしか入れません。
七倉温泉 七倉山荘 この建物の前から特定タクシーに乗り換える
登山シーズンにはここまで、JR大糸線の信濃大町駅から一日に何本か、バスも出ています。
七倉温泉には「七倉山荘」という宿泊施設があり、日帰り温泉も入れるそうですが、この日は営業していませんでした。
この施設の前に、一般車用の登山者向け駐車場があります。ここから特定タクシーに乗り換えます。
「特定タクシー」とは言いますが、車両は普通のタクシーです。一律料金で、高瀬ダムまでは2,600円で運んでもらえます。
タクシーは出発後まもなく、通行規制用のゲートをくぐり、トンネルへ入ります。
この日は天候が悪く、山はどこまでもガスが掛かっていました。
トンネルを抜けるといくつかの落石除けを通り、やがて巨大なダムの堤体を九十九折れに登っていきます。
それが高瀬ダムでした。
高瀬ダムはロックフィルダムで、なかなかな規模です。
タクシーはやがて堰堤の頂上で停車しました。タクシーが入れるのもここまで。
秘境の温泉 高瀬温泉を目指して
ここからは歩きです。タクシーの運転手さんによると、ここから目指す高瀬温泉までは約10km。
ダム堤体の向こう、湖岸にトンネルが見えますが、そのトンネルを抜けていきます。
道路は舗装されていますが、ダムを管理する東京電力の作業用通路です。だから滅多に車両は来ません。
安心して堂々と道の真ん中を歩くことができます。
湖側から見た高瀬ダムの堰堤 霧にかすんでいるがロックフィルであることがわかる
そのかわり、このトンネルはやたら長いです。1本目は900mもあるそうです。照明もないので真っ暗です。
真っ直ぐ歩くだけなので灯がなくても歩けましたが、足元が見えないのはちょっと怖い。
上の写真は2本目のトンネルです。照明があるように写ってますが、写真を撮った時にはこんな照明は灯いていませんでした。なんで写ってるんだ?ちょっと不気味。
もっと進むと、山々に囲まれた湖面が穏やかに水を湛えています。周囲に人もおらず、幻想的です。
静かな湖畔は歩いているとまるで修験道の荒行です。
30分歩いてもまだダム湖の湖岸でした。
さらに15分くらい歩いて、やっとダム湖の最上流、バックウォーターが見えてきました。
管理用道路もここまで。バックウォーターでは土砂流入の激しさがよくわかり、浚渫した方がいいんじゃない?と余計な心配までしてしまいます。
終点は管理用車両を停めておける駐車場になっていました。
ここから本格的な登山道になります。それでもここから高瀬温泉までは、まだまだなだらかな道なのでそれほど構えることはありません。
途中、橋が落ちたりして道が荒れているところもあり、ところどころ歩きづらい所がありました。
こんな風景も。水量によってはここも湖底になるようです。
立ち枯れた林が荒涼とした風景を作っている、高瀬ダムのバックウォーター
この辺りから、温泉の臭いがしてきます。どうも川には温泉水が流れているようです。
しかし、高瀬温泉まではまだまだあるはず。途中に温泉はありません。
高瀬温泉は相当な湯量が湧く温泉なようです。
歩き始めて1時間ちょっと歩いたとき、目の前に粗末な小屋が見えてきました。
「名無避難小屋」とあります。
中間の目安、名無避難小屋まで来ました。
名無は地名です。“名無し”の避難小屋ではないようです。
避難小屋のところに標識がありました。
登山地図などでもダムからここまで約1時間半と書かれています。ちょっと速いペースです。
「晴嵐荘」は高瀬温泉にある宿泊もできる山小屋です。
まだまだ歩くようですね。
だいぶ山深くまで来た雰囲気が出てきました。
川が急流になり、河原の石も大きいです。山々も迫ってきました。
ひたすら歩きます。見えるのは山、山、川のみ。温泉の臭いはしますが、温泉は見えません。
晴嵐荘の建物が見えてくるまで、とにかく歩くしかありません。
歩きます。
避難小屋から小一時間、やっと川岸に建物が見えてきました。
晴嵐荘です。
「やっと着いた!」
ここから噴湯丘はもうすぐです。
ここは北アルプスへの登山道の分岐点でもあります。ここから本格的な登山道になります。それこそ、それなりの装備を準備しないと遭難の危険もある道です。
直進は伊藤新道を経由して鷲羽岳や三俣蓮華岳へと抜けるルート。
晴嵐荘へ渡って進む道は竹村新道といい、急登して鷲羽岳と野口五郎岳を結ぶ尾根へと至るルート。
私は伊藤新道方面に向かいます。噴湯丘を見るのが目的なので、噴湯丘を見たら折り返します。そこまでの装備を持ってきてないし。
…と思っていたのが甘かったと、あとで思い知ることになるのですが
いよいよ噴湯丘へ…そして挫折
晴嵐荘は川の対岸で、ジップラインで渡るようになっていました。
このジップラインが結構高い所に渡されているので、このときは怖くて晴嵐荘へは渡りませんでした。
その先に堰堤がありました。こんな山奥に大きな人口施設があって驚きです。
噴湯丘へはそちらへ進みます。
堰堤の管理用建物の脇を通ります。
そのすぐ先、堰堤設備の横に道がありますので、そこを通ります。
大きな河原に出ます。正面からと左側からの急流がここで合流していました。
この合流点から下流が高瀬川となります。左からの急流が水俣川、正面からの急流が湯俣川です。
狭い谷(ゴルジュ)を抜けてきた急流同士が合流する、水俣川(手前)と湯俣川の合流点
湯俣川がゴルジュを抜けています。その先に山腹が白くなっている場所が見えました。
あそこが噴湯丘のある場所でしょう。岩陰で噴湯丘は見えませんが、目的地はあと少しです!
水俣川を吊橋で越えます。
吊橋の先が二又になっていますが、左は道がありません。沢登りの人用かな?
とにかく右へ行きます。
大町市による噴湯丘保護のお願いの看板があります。噴湯丘まであとわずかです。
大きな岩場の上に山の神が祀られています。
その下にロープが吊られ、崖を降りられるようになっていました。これを降ります。
ここから先が伊藤新道となります。
この先の危険性を知らせるこんな看板が設置されていました。
「まあ、自分は噴湯丘までだから、気にすることはないよな。」
と思いながら進みました。この考えが間違っていたと、気づくのはこの後すぐでした。
先ほどの湯俣川のゴルジュ、近づいてみると思ったより深そうで流れが急です。
「え![]()
」
ネットだと、裸足になって沢を渡れるようなことが書かれていたので、こんなに深そうな瀬が続くとは思いもしませんでした。
流れが速いうえに深そうな瀬 右手の急崖の向こう側に噴湯丘があるが…
川底が白っぽいのは温泉成分が沈着しているからです。
目的地は目の前です。噴湯丘があるのはこの先、斜面が白っぽくなっているあの場所です。ところがその噴湯丘は岩陰になっていて、手前の位置からではどうやっても見えません。
しかし、これを越えるための装備は全く持ってきていません。
「マジで!?」
あれだけいろいろ調べて、重装備は必要ないと判断してきたのに、この結果…
あまりの悔しさに、本当に地団駄を踏みました。
「あの先なのに、あの先なのに、あの先なのに…![]()
![]()
![]()
んがぁぁぁぁ…![]()
![]()
」
…いつまでも悔しがっていても仕方がありません。
晴嵐荘へ戻って、他のルートがあるかもしれないので聞いてみようと思いました。
さっきは怖くて乗れなかったジップライン、意を決して渡ります。
晴嵐荘のスタッフの方が応対してくれました。
まずは、別ルート。これは「ない」とのこと。
以前は、わりと最近まで、簡単に瀬を渡ることができたそうです。ネットの情報は間違いではありませんでした。
なんでも、ここ2年ほど、豪雪が続いて雪解け水が増えたそうです。
この地域はただでさえ豪雪地帯として有名です。
それなのに、気候変動の影響といわれていますが、ここ最近は雪がやたら多い。新聞やニュースでもやっていました。
その影響で、最近は川の水量が増えているのだそうです。そのうえ、この日は雨に祟られました。
「危ないので、無理に渡らない方がいいですよ。」
「そうですね。」
渡れてたら、温泉卵作ろうと思って生卵も持参していたのに…
足湯ができると聞いていたので、野湯をちょっと体験して帰ろうと思っていたのに…
全て諦めなければなりませんでした。生卵を持ち帰るのか。割らずに持ってきたのも難しかったのに。
なんだよ、もう…
晴嵐荘も本格的な登山シーズンを前に、仮オープンの状態でした。名物の温泉もまだ湯を張っていなかったそうで、ちょっと温泉に浸かってから…も叶いませんでした。これは仕方ないです。
結局、忙しい中いろいろお話していただいた晴嵐荘スタッフの方によくお礼を述べ、本当はビールが飲みたかったのですが車を運転するのでそれは無しにしてジュースを一本購入(山奥価格。500mlペットボトルで600円)。一休みしてから来た道を戻りました。
というわけで、再び約10㎞の道のりを歩いて戻ったのでした。
結局、目当てのことは何もできなかったのですが、それでも本格的な秘境、本当の秘境に来られて、実はとても楽しかったです。
温泉生成物を訪ねる方、ご注意ください。高瀬温泉以外の場所はもっとひどいと聞きます。
夏油温泉は観光地化されているようで容易にたどり着けますが、岩間の噴泉塔、湯沢噴泉塔などは険しい山の中にあるらしいです。特に湯沢噴泉塔などは約6時間の道のりを、沢登りの装備で進まないとたどり着けないとのことです。以前は道が整備されていたのだそうですが、台風などで荒れてしまい、廃道になってしまったのだとか。
もう温泉生成物を訪ねるためには沢登りの準備をしよう。そう心に決めた今回の訪問でした。
追記:帰宅後、You tubeで「高瀬温泉 噴湯丘」を調べたところ、2年前の同じ時期に訪問した映像がありました。その時の湯俣川と今回とでは、その水量は全然違いました。現在はおそらく、腰くらいまで水深があります。





















