特別編:岩手県一関市・鬼死骸村を訪ねるー 偶然通りかかった「鬼の死骸が埋められた村」 | 名宝を訪ねる ~日本の宝 『文化財』~

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今回は文化財ではありません。

 

でも、おもしろいのでどうしても皆さんに紹介したい!というわけで特別に指定文化財ではありませんが紹介します。

 

広い意味では地名だって文化財ですし。

 

 

宮城県栗原市の金成地区から、岩手県一関市へ抜ける県道を走っていて、驚くものが目に入りました。

 

それが下の写真のバス停でした。

 

「鬼死骸」バス停

 

「へ!?鬼死骸?」

 

何かの冗談かと思いました。あまりにも物騒な名前なので、思わずブレーキを踏んでしまいました。

 

慌てて車を路肩のスペースに寄せて止め、車を降りて道を戻り、そのバス停を確認しました。

 

「なに、何!?」

 

 

 

鬼死骸バス停付近

 

すると、「国鉄バス 鬼死骸停留所」の看板が掲げられた休憩所が目に入ったのです。

 

 

「鬼死骸停留所」休憩所

 

休憩所の中に、詳しい解説がありました。

 

なんでもこの地は、明治の初めまで実際に「鬼死骸村」という村がありました。

 

そう、「鬼死骸(おにしがい)」とは、この地域の過去の名称だったのです。

 

県道は古い奥州街道(陸羽街道)で、往時は交通量も結構あったようです。

 

バス停や休憩所は過去に実際、ここにバス路線があり(今は廃止されてしまいました)、バス停名が「鬼死骸」だったそうなのです。

 

しかし過疎化が進み、憂いた地域の人が旧地名をPRしてまち起こしをするため、バス停を再現したモニュメントや停留所の修復を行なって地域活性化を図ったのが上記のバス停や休憩所だったのです。

 

今は一関市真柴という地区になったので鬼死骸という地名はないそうですが、NTTの電柱などに「鬼死骸A」と幹線名が記されており、ここに鬼死骸村があったことを伝えています。

 

 

NTTの電柱にあった「鬼死骸」の名前

 

そして、鬼死骸の地名の由来となった鬼の痕跡が近所に点在しているそうなので、歩いて回ってみることにしました。

 

この村は、かの坂上田村麻呂が陸奥国で暴れまわっていた大嶽丸という鬼を退治し、その死骸をこの地に埋めた場所だといわれているそうです。

 

その死骸の首を埋めた場所には「鬼石」と呼ばれる大石が置かれたそうで、その石が実際に田んぼの中に残っていました。

 

田んぼの中にあった「鬼石」

 

鬼石

 

また、大嶽丸の胴が置かれた場所には「あばら石」と呼ばれる石があるそうなのです。

 

その石の場所はやや離れていて、探し出すことができませんでした。

 

写真で見ると、あばら骨のようにいくつかの石が並んでいる様子が見られました。

 

他にも、「鬼死骸八幡」や「奥州街道の旧道」が残っているそうです。いずれもやや離れていたので歩いていくのは諦め、時間も押していたので訪れませんでした。時間があれば回ってみたかったです。

 

 

坂上田村麻呂の伝説は各地にありますが、最近は鬼といわれたものも研究が進んで地元の族長だったといわれています。

 

だから鬼だったわけではないそうですが、それにしてもインパクトの強い地名が残されていたものです。

 

最近は『鬼滅の刃』ブームがあって、訪問する人も増えているとか。

 

まち起こしのささやかな成功を祈りつつ、鬼死骸村を後にしました。

 

 

 

ちなみに、古いのですが1999年(平成11年)には、作家・吉村達也氏による『鬼死骸村の殺人』というミステリー小説がハルキ文庫から出版されています。

 

これも読んでみました。東日本震災の前に出版されたお話なので今とは違っている描写もありましが、なかなかおもしろいお話でした。

 

 

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鬼死骸村 (岩手県一関市真柴ほか)

 

鬼死骸村は岩手県一関市にかつてあった村の名前。延暦20(801)年、蝦夷征伐に赴いた坂上田村麻呂が大嶽丸を征伐し、その死骸を埋めたことから鬼死骸と呼ばれるようになったといわれています。江戸時代に造られた「鬼死骸村絵図」が残されていて、この地が陸羽街道沿いに展開した村落だったことがわかります。村内には大嶽丸を葬った伝説の場所が数か所、残されています。

 

明治に入り、廃藩置県の際に近隣の村と合併し、真柴村となったことから鬼死骸村は地名としては消滅しましたが、その後も地域名としては残されました。

 

近年ではまち起こしとして、かつてのバス停を模したモニュメントや休憩所が整備され、また人気アニメの影響で訪問する人も増えているといいます。

 

 

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