今春は、かなり早くから暖かい日が続きました。冬の間は大雪やら豪雪やら散々寒い日が続いたのに。
そのせいか桜の開花がとても早まりました。
まだ4月の上旬なのに、例年ならもう少し後で満開のニュースが届くはずの、この桜が満開になったニュースが届きました。
その桜こそ三春の滝桜。
日本5大桜の一つということで一度訪ねてみたかったのですが、行く機会に恵まれませんでした。
コロナ禍の緊急事態宣言があったおかげで(その分、仕事がないのですが)、今年はその機会に恵まれたことから訪ねてまいりました(令和3年4月8日現在)。
車窓から遠くに滝桜が見えた時は「思ったより小さい木だな」と思ったのですが…
三春の滝桜
とんでもない、近くで見たら見事な咲きっぷりじゃないですか
手前には菜の花が咲き誇り、滝桜も春を謳歌しているといわんばかりです。
菜の花との競演
以前は写真にある柵のところまで入ることができたようです。しかし根元が踏み固められて樹勢が弱ったとのこと。
そのため最近は樹から離れた周遊路から見る形になり、南からだけアプローチできる通路が設けられました。
それに加えて昨年からのコロナの影響もあり、今年は南側のアプローチも閉鎖されて、遠くから眺めるだけでした。
それでも十分な見ごたえです。
南西側から
まさに滝の怒涛のよう。桜花の「滝」です。
樹齢は1,300年以上とか。江戸時代には近隣の村々から弁当持ちで観桜に来る人々で溢れたそうです。
遥か昔から人々の目を楽しませてくれていたのですね。
南側から
サクラといえば、皆さんはパッと咲いてパッと散るイメージをお持ちじゃありませんか?
実ば、それは「ソメイヨシノ」が普及したからなんです。
今、よく見かける桜の主流は「ソメイヨシノ」なのは皆さんもご存知だと思います。
この「パッと咲いてパッと散る」咲き方は、このソメイヨシノの咲き方なんです。
だから4月上旬ごろ、まさに年度が替わるタイミングで咲き誇るソメイヨシノが桜のイメージとして定着しました。
南側から(やや東寄りのところ)
しかし、桜の品種は何種類もあって、実は早咲きなら例年でも3月中旬くらいから、遅いものなら5月上旬ぐらいに咲き始めるものもあり、また結構長く咲いている品種もあるんです。
もっといえば、夏や秋冬に咲く品種もあるので、サクラって実は1年を通して楽しめる花なんです。
天然記念物指定のサクラの樹を追っていけば、一年中サクラを楽しめますよ。
三春の滝桜の品種は「ベニシダレザクラ」と紹介されています。意外と花期は長いみたいです。
もっとも「枝垂桜」とは、桜の品種というより樹形を表わしてます。
だから枝垂桜には様々な品種のサクラがあるし、ソメイヨシノの枝垂れというのも聞いたことがあります(雑種のようですが )。
東側から
そんなわけで、もう少し調べてみました。
するとベニシダレザクラは「エドヒガン系のイトザクラ」とされてました。それで納得しました。
なんとエドヒガンザクラは、長命の品種なんです。日本5大桜は大木の桜ばかりですが、いずれも古い木で、そのうち4本はエドヒガンなんです(残り1本はヤマザクラ)。
北西から
だから三春の滝桜も長齢の桜樹なんですね。
この木は南向きの日当たりの良い斜面にあり、先頃には樹勢回復の処置も行われ、ますます枝葉の茂りが良くなったようです。
これからも長く私たちの目を楽しませてくれることでしょう。
ところで、できればソメイヨシノの花との違いを見たいと思っていたのですが、滝桜では花を間近には見られませんでした。
せめて別の木で「エドヒガン系」の桜の花を見たいと思っていたら、三春町内にはシダレザクラがソメイヨシノの樹より目につくのです。
「もしかして、滝桜の株分けの木?」
と、ちょっと期待して町内を車で走っていると、滝桜の近所に「紅枝垂地蔵ザクラ」という木までの標識があるじゃありませんか。
その標識に従って車を走らせてみたら、あったんです。ベニシダレザクラの花を間近で見られる木が。
結構山の中まで導かれたので正直不安になってきた頃に、やっと大きな枝垂桜の姿が目に入ってきました。
それがこちらの「紅枝垂地蔵ザクラ」です。隣町の郡山市指定天然記念物でした。
紅枝垂地蔵ザクラ
花も比較的近くで見ることができ、撮影もできました。
紅枝垂地蔵ザクラの花
ソメイヨシノとの違いが分かりますか?
…私には、実はよくわかりません。
ソメイヨシノもエドヒガン系だそうなので、花が先に咲き、葉が後で出てくる、花が房状に集まるなどはほとんど同じです。
ベニシダレザクラの方が赤色が強いくらいでしょうか。
自身で集めた天然記念物の桜の写真を集めて「桜花図鑑」を作ってみようかな、と思い始めた今年の桜探訪でした。
--------
三春の滝桜(大正11年10月・国指定天然記念物 福島県田村郡三春町滝)
三春町内の三春ダムから比較的近い山間の、南向きの斜面中腹にあるベニシダレザクラの老大樹(一本桜)です。淡い紅色の花が咲くことからベニシダレといわれますが、エドヒガン系のサクラです。根回り約10m、枝張りは東へ約8m、西へは約13m、北5m、南12m、樹高は約9~10mあります。例年は4月中~下旬ごろ枝垂れた枝に花が咲き、まるで滝のように壮麗に咲くことから滝桜と呼ばれています。
江戸時代に三春藩主・秋田氏が入封した時にはすでに大木だったとのことで、三春町の歴史資料館Webページによれば19世紀初頭の滝桜の記録が残されているそうです。
紅枝垂地蔵ザクラ(郡山市指定天然記念物 福島県郡山市中田町木目沢字岡ノ内)
三春の滝桜の南方、郡山市内に位置するベニシダレザクラの一本桜。樹齢は約400年、樹高約16m、樹下に地蔵堂があるため「地蔵ザクラ」といわれています。滝桜の娘と称されます。
参考文献、ホームページ:
『日本の天然記念物』、講談社(1995)
三春町ホームページ:https://www.town.miharu.fukushima.jp/
郡山市公式ウェブサイト:https://www.city.koriyama.lg.jp/
ブログが気に入ったらクリックをお願いします