行動診療は、目標と目的が大事 | 渋沢どうぶつ愛護病院のブログ

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日々感じたことを、ときどき綴ります。

 

犬や猫の困った行動を、問題行動と呼ぶ。当院では、この問題行動に悩まれている飼い主のために、診療科を設けている。動物の行動の何を問題とするかは、人間都合なところをもあるが、そもそも正常な域を超えた行動もあるので、診療の際は、そこを見極める作業から始まる。

 

人間同士でも分かり合えないことが多々あるのに、人間とは異なる動物である彼らの行動をすべて理解することは、なかなか難しい。そして、本来、生まれながらに持っている性格や素質という要因があるので、問題とされる行動をまったくゼロにすることはできないことが多い。

 

ということは、目標をどこに置くかが重要になってくる。ゼロにできないのにもかかわらず、長期間、通院してもらうことは、あまりよいことではない。ダラダラしてしまい、飼い主の気持ちが続かない。そこで、当院は目標を設定している。「3ヶ月で50%以上の改善」。

 

通常、いきなり問題行動が現れることは少ない。徐々に徐々にその問題が目につくようになり、最初は見過ごしていた程度だったのが、ついには困る、悩むところにまで発展する。あるいは、正しい対処がなされず、助長されてしまうこともある。そういうふうにして、事態が深刻になってくることがほとんどだ。

 

そうであれば、一緒に生活していく上で、「これくらいなら大丈夫。」というところまで、困った行動の回数を減らし、程度を軽くすればいいということになる。その目安は、だいたい、ひどいときの半分くらいだ。そこまで減れば、飼い主はある程度納得して受け入れてくれる。経験上、そこに再現性があることがわかっている。

 

行動診療は、このように、飼い主に終わりの見えない旅をさせないことが大切だ。明確な目標を最初に示して、わかってもらった上で、伴走していく。そして、その目標が達成されたときには、飼い主の悩みは小さくなって、安心した生活を送ることができて、動物が幸せになっている。ここを目指したい。

 

というわけで、当院が定めている、行動診療の目標と目的は、以下の通り。

目標:問題行動を3ヶ月で50%以上減らすこと。

目的:飼い主の悩みを小さくして、動物が幸せになって、安心して一緒に暮らしてもらうこと。

 

 

 

院長 渡部伸一