🏦 第4回|法人不動産の「銀行評価」を高める“資産の見せ方”
―― 融資枠を広げる3本柱と、財務を“魅せる”リモデル術
銀行は「決算書の数字だけ」を見ているわけではありません。
不動産オーナーに対する銀行の目線は、
“この会社(オーナー)は融資枠を拡大する価値があるか” の一点です。
では銀行が判断するとき、何を見ているのか?
実はシンプルで、ポイントは 3つだけ。
この3本柱を整えると、借入れは驚くほどスムーズになります。
◆ 銀行評価の3本柱
① 返済能力(キャッシュフロー)
銀行は「利益」よりも キャッシュが残るか を重視します。
-
営業CF(本業が生み出す現金)
-
DSCR(返済余力)
-
返済比率(年間返済 ÷ 家賃収入)
この3つが、銀行にとっての“心の安定剤”。
特に 返済比率50%以内、DSCR 1.2〜1.5以上 の会社は
“安全運転” と評価され、融資枠が広がりやすい。
② 財務健全性(貸借対照表の体力)
銀行が特に注目するのは以下の4つ。
-
自己資本比率(20%以上は評価が高い)
-
手元現金・流動比率
-
借入残高のバランス(固定長期適合率)
-
資産の評価(時価ベース)
借入残高が大きくても、現金が厚い会社は高評価。
これを理解しているオーナーは、内部留保を戦略的に積み増します。
③ 担保余力(物件の評価)
銀行が担保としてみるのは“時価”ではなく
「銀行評価ベースの担保価値」 です。
これは金融機関ごとに評価手法が異なるため、
同じ物件でも A銀行では+評価、B銀行では▲評価 と分かれます。
→ だからこそ 銀行ごとの評価特性 を知ることが重要。
◆ 銀行評価を高める『財務リモデル術』
ここからが“実務のキモ”です。
評価を上げるには、以下の3つを整えると効果が大きい。
① PL(損益)の見せ方を変える
不動産オーナーの決算書は、
「税金を減らすための決算」から「融資枠を増やすための決算」へ
シフトさせる必要があります。
具体策:
-
修繕費を分散する(1期に固めない)
-
償却の調整(取り過ぎない)
-
小規模法人の経費を圧縮し“キャッシュ創出体質”へ
-
赤字決算を避ける(銀行は“継続赤字”を極端に嫌う)
→ PLを“安定感のある黒字”に整えるだけで印象が激変します。
② BS(貸借対照表)を“美しく整える”
銀行は 「貸借対照表はオーナーの性格が出る」 と本気で思っています。
改善のコツ:
-
現金を厚くする(内部留保の積み上げ)
-
未収入金・未払金・仮払金の整理
-
役員貸付金は極力ゼロへ(銀行が最も嫌う項目)
-
資産の時価と含み益を別途資料で提示
→ 短期負債と長期負債の整理は評価アップの“裏技”。
③ 銀行評価資料を“パッケージ化”する
優秀なオーナーは、
「銀行にとって読みやすい資料」を先回り準備 しています。
たとえば:
-
最新のレントロール
-
稼働状況(年間推移)
-
時価評価表
-
修繕履歴
-
手元現金の推移
-
今後の投資計画
これを1冊にまとめた “融資打診ブック” を作ると
銀行担当者の評価は一気に上がります。
◆ 銀行の本音:オーナーを見る3つの姿勢
銀行は数字だけでなく、
“オーナーの姿勢” を非常に重視します。
-
決算書が整理されている → 経営姿勢が真面目
-
相談が早いオーナー → リスク管理ができている
-
修繕計画がある → 長期運営の意識がある
つまり、
「この人にお金を貸せば安心」
と思ってもらえるかがすべて。
◆ まとめ|融資枠を広げる3原則
-
返済能力 を整える(返済比率40〜50%・DSCR1.2〜1.5)
-
財務を強くする(現金厚め・自己資本比率UP)
-
銀行評価の“見せ方” を最適化する
→ これができると、銀行からの“評価基準”がワンランク上がります。
銀行評価が上がれば、
あなたの投資の未来は大きく広がります。
🔔 次回予告|第5回
📊「“出口戦略”が変わる!分離課税・総合課税のフル活用術」
不動産の売却・保有・法人化で、税負担をどう最適化するか?
キャッシュ最大化のための“税務の出口戦略”を解説します。

