FRBや日銀がのたまう”インフレ期待”理論は、原因と結果を履き違えた空理空論である。
他にも「成長真理教」や「自由貿易万能教」といった新興宗教がはびこっている。
しかし、彼らの「嘘八百」も、本当のことを言えない立場にあるからと考えれば、そんなに理解できないことでもない気がするのだ。
ラガルドは、「成長真理教」「自由貿易万能教」の宣教師で、ゴタクを並べまくっていたが、「国」に対して、雇用政策と教育政策をするようになどと述べていた。
「だったら、おまえがまず雇えよ」と言いたくなるようなことをよくも述べるものである。
人間というのは、存外、無能で融通が利かない。
一度職を失って再起できるような者は、運と才能と意欲に恵まれる必要がある。
そう簡単なことではない。
落伍者の世話は、モノ好きにでも任せておいて自分たちは「成長」(金儲け)を…
IMFらのそういう態度が世界中に悪政のポピュリズムを台頭させている。
それでも、彼らが直接ナチスを率いて人民浄化をやるようなことはできない。
融資や経済分析、金融政策に関与することができるくらいなのである。
支配層は、自分たちのシステムは死守したい…かといって、人民を決起させてもマズイ。
人民に、やる気を失ってもらっても、これまた困るのである。
よって、金融政策で「痛み止め」「麻酔」をして、ゆるゆると「淘汰」することになる。
景気は、とくによくなるわけでもないが、ただちに悪くなるわけでもない。
超低金利で、錬金術が行われたり、ゾンビ企業が延命したりはあるが、住宅や自動車はローンで人民は買うので、堅調な市況が続いている。
また、「ゾンビ企業」とはいえど、潰せば路頭に迷う者がでてくる。
この状態を、とりあえずは続けてこられたというのは、ある意味「成功」ではないのか?
”インフレ期待”などと言いながら、買うのは金融商品だけなので物価上がらない。
物価が上がらなければ、庶民の生活は防衛されるし、株高で金持ちも「満足」である。
何もかもわかったうえでウソをつき、失敗したかに見せて、案外うまくやっている…
…なんか最近は、そんな具合に見えるのである。
景気サイクルからいって、もうとっくに景気後退入りしていなければいけないのに、超低金利が続いて、経済は失速を免れている。
それで米国の利上げ、日銀の政策に対する失望、および原油安や人民元の弱含みから年初は凄まじいパニック売りになった。
世界中のヘッジファンドや金融機関が大きな含み損を抱えたのだった。
ところが、売るだけ売って落ち着いてみると、自動車販売などは堅調で、中国の財政出動も効いてきて、3月ごろから株価も落ち着いてきた。
それでも、上に行くだけの材料がない…
そこへブレグジットの騒ぎも加わって7月頃に「7月急落説」「8月急落説」が唱えられるようになった。実際にヘッジファンドたちが売りポジションを構築中だったのである。
ちょうど、そのころ「イールドカーブのフラット化」という現象が生じ、問題になっていた。
これは通常、景気後退入りのサインである。
この現象下では金融機関は利ザヤを稼げず、貸し渋りや貸しはがしに出る。
実際、そんなことがぽつぽつ起こりかけていた。
「マイナス金」は、金融緩和ではなく、「引き締め」に作用してしまったのであった。
まったく…まるで「金融ゴジラ出現」ってな状況で、日銀と財務省が事に当たっていた。
そして、この8月、9月で、とりあえず「金融ゴジラ」を退治してしまったのである。
それが、「イールドカーブ・コントロール」である。
「怪我の功名」とでも言うのだろうか…「手詰まり感」を払拭したのである。
「中央銀行は、長期金利はコントロールできない」と言われてきた。
それを今回やろうというのであるから、いかにも危ないことに手を出したようにみえる…
しかし、「マイナス金利」以降、「予想外」に長期金利が低下した…
たまたまだったが、初めて長期金利を中央銀行が「操作できた」のである!
おりしも、「景気を過熱も減速もさせない金利水準=均衡イールドカーブ」の研究が進められていた。(本当に、本当に映画『シンゴジラ』みたいな展開ww)
その研究の蓄積を、速やかに日銀全体で共有して、新しい金融政策にまとめてきた。
「操作できない」と言われてきた長期金利を日銀が世界で初めて操作していくのである。
ちょうど麻生財務大臣も40年国債増発で日銀に協力すると約束した。
日銀手詰まり⇒金利上昇⇒株価下落に賭けたヘッジファンドはこれで撃退された。
いったん、売りポジションが解消され、「様子見」に入ったのである。
「陰謀論」では一方的に「ユダヤ」に日本が吸い取られているかのように描かれるが、なかなかどうしてヘッジファンドの上前をしばしば刎ねているのが日本勢なのである。
また「ユダヤの陰謀」を進める側に立っているのも日本であり、日本を被害者のように描く「陰謀論」は、そこが根本的に間違っていると私は思う。
3分の1くらいは「日本の陰謀」なのである…
しかしながら、まだ金利上昇の”メ”はある…
たとえば、財政出動は金利を上昇させると警戒されている。
この夏の株価上昇は、低金利が理由で買われたものである。
積極的な理由ではない。「割安」というだけである。
経済が急に失速する可能性は遠ざかったものの、景気のピークアウト観測はそのままだ。
FRBが、利上げを急ぎたがるのは、錬金術バブルの台頭の他にスタグフレーションに対する警戒がある。
不景気なので利下げしたいが、インフレなので利上げするほかないという状況は避けたいのだ。
しかし、私が思うに、スタグフレーションというのは、不景気によって寡占化が進むから生じるのではないのか?
まあ、FRBの認識は違うのであろう…
ともあれ、今回の日銀の政策の変更により、低金利維持が当分可能になったのである。
景気後退入りも、とりあえずそれだけ”先送り”されたのである。
さて、長期的にはいずれ株価はさらにレンジを下抜けてくる…少なくとも熟練投資家たちはそう考えている。
しかし、日銀の株買いは半端ない量であり、低金利が続くなら、景気も延命しそうだ…
買うに買えず、売るに売れない…そんな相場が続いているところである…