東方市民音楽会 傅人長指揮上海フィルハーモニー管弦楽団「奇想曲」 | 上海鑑賞日記(主にクラシック)

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日時:2021年12月4日10:00~

会場:上海東方芸術中心

指揮:傅人長

演奏:上海フィルハーモニー管弦楽団

曲目:

リムスキーコルサコフ:スペイン奇想曲 作品34

金複載:ヒマラヤ奇想曲

プッチーニ:交響的奇想曲 作品55

チャイコフスキー:イタリア奇想曲 作品45

 

 

感想:この日は東方芸術中心の市民音楽会で、市民音楽会の名の通り、公益的な目的で開かれている音楽会でチケット代も安い。

 上海フィルが出演オーケストラとして引き出されており、厦門交響楽団の音楽監督の傅人長さんが指揮者として招かれた。

 年齢的に1970年生まれの中堅どころの指揮者である。

 さて今日はカプリッチョ(奇想曲)がテーマのようで4曲とも奇想曲となっている。

こういう徹底した構成も珍しく、その中に中国人作曲家を混ぜてくるあたり中国のコンサートらしい。

 

 さて一曲目はリムスキーコルサコフのスペイン奇想曲。

 スペインをイメージした曲だが、リムスキーコルサコフの中央アジア的な臭いがする曲というか演奏になっていた。

 オケもしっかり対応しており、指揮者もオーソドックスにオケをドライブしていて、よくまとまっていたという印象。

 ただ惜しむらくは、聴衆に子供が多く鑑賞に気が散った点である。

 午前の演奏会でこちらが集中力を欠いている状態の上に、周囲で雑談や子供の不用意な発生が相次いでおり、かと思えば数列前の聴衆がスマホで写真撮影を行っており、係員も注意しないので、音楽の流れをつかみ切れないまま演奏が終わった。

 

 二曲目は中国人作曲家のスペイン奇想曲。

 ヒマラヤの名が冠した曲だが、ヒマラヤの壮大な情景というより、登山家の登山情景を描写したような音楽であり、二胡に見られるような中国的な細かい節回しで演奏される。

アルプスにイメージするような力強さではなく、人のエネルギーのような面に力点が置かれているような印象である。

 もちろん初めて聴いた曲なので、どういう演奏が良いのかわからないが、中国人作曲家の演奏としては間違いのない演奏だった気がした。

 

 休憩を挟んでプッチーニの交響的奇想曲。

 プッチーニにこういった管弦楽曲があることは初めて知ったが、演奏がプッチーニ的な美しさには近寄れていないような印象。

 特にティンパニはリズムが悪いわけではないが、コントラストが弱くもう少し芯の通った音が鳴らせるのではなかったのかという気がした。

 過去に聴いたことがない曲ではあるため、良し悪しは判断しづらいが、もう少しイタリアオペラ的な柔らかい明るさを表現できた気がするので、やや物足りない演奏になった。

 

 そして最後がチャイコフスキーのイタリア奇想曲。

 冒頭のファンファーレは綺麗に響いたが、それから続く弦の刻みが迫力を欠く。

 また木管もオーボエは綺麗に鳴っていたが、全体のアンサンブルとしては少し音の伸びが弱い。

 オケ全体として演奏としてはまとまっていたが、表現力としてイタリア独特の伸びやかな音色を抑えてしまい、やや陰鬱なロシアの曲の表現になってしまった。

 作曲者がロシアのチャイコフスキーなのでそこを意識したのだろうか。

 それと中国のあるある演奏パターンなのだが前半を抑えてフィナーレに向かってクレッシェンド的に盛り上げていくという演出というか指揮が行われていた。

 フィナーレが近づくにつれ音が立ってくるのである。

 こちらとするとその演出意図が見えてしまい、しかも「最後にそんな音が出せるなら前半からちゃんとしっかり鳴らせよ」と思うのだが、結局そういった技巧的演出に頼った演奏になっている。

 もちろん聴衆も「終わりよければ全て良し」で、音量的に盛り上がっているので結構喜ぶのだが、こちらはあざとい意図が見えてちょっと興ざめなのである。

 力量があるのに何だか手抜きをされたような印象なのである。

 まあ演奏全体は総じてそれなりに揃っていたが、表現としてはもう一つ上を目指していただきたいと感じた演奏だった。