張芸指揮上海フィルフィルハーモニー管弦楽団 中国と外国の映画音楽 | 上海鑑賞日記(主にクラシック)

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張芸指揮上海フィルフィルハーモニー管弦楽団 中国と外国の映画音楽

 

日時:2021年03月14日(日)20:00~

会場:上海交響楽団音楽庁

指揮:張芸

演奏:上海交響楽団

二胡:段皚皚

蝶式笋:王伊

チェロ:呉敏喆

曲目:

金復戴:映画音楽「哪tuo閙海」

趙季平:交響組曲「喬家大院」より

呂其明:交響詩「鉄道遊撃隊」

ジョン・ウィリアムズ「スターウォーズ」組曲

久石譲:映画「おくりびと」

ジョン・ウィリアムズ:「ハリーポッター」組曲

感想:中国や国外の映画音楽をテーマにした上海フィルの演奏会。

プログラムにあまり知っている曲がなかったのだが日程的にほかの適当な演奏会が見当たらなかったために、この演奏会をセレクトして伺った。

 指揮は音楽監督の張芸さん

 前半は、中国映画の音楽の演奏で、当然、3曲とも演奏も映画も知らない。

 一曲目は中国琴との組み合わせで、構成的には協奏曲のようなスタイルで演奏された。

 久々に聞いた中国琴の音は素晴らしく、女子十二楽坊のあれを思い出した。 

映画が分からないので、この曲がどううまく表現されたのかは推測ではないのだが、もう少し映画音楽的なドラマチックさが欲しいのかなという印象。

 まあ張芸さんほかの曲の指揮から察するに別の指揮者ならもっと深い演奏が本当はできたのだろうとは想像する。

 2曲目は二胡との協奏曲のようなスタイルの演奏。

 中国的な牧歌的というか、郷愁がよく含まれた曲であった。

 二胡の音色がその中国的雰囲気を支えている。

 惜しむらくは、二胡の音が演奏は生であるものの電気音響を通じた音となっており、純然たる楽器だけの響きではなかったところ。

 ここが二胡という楽器の弱点で、単独だと出せる音量に限界があり、ソロ演奏ならばそれほど問題にならないが、フルオーケストラと対峙してしまうと完全に負けてしまう。

 つまり、音量の面でアンプ出力に委ねられて音量バランスが決まるのであり、演奏家の力量だけではない要素で音楽が出来上がってしまうことになる。

 三曲目も映画音楽っぽい曲ではあるが、やや冗長な演奏になった印象は否めない。

 

 さて後半はスターウォーズから始まる。

 よく知られた曲だし、曲がいいので非常にスペクタルに響くが、やはりよく聴くとメリハリ不足を感じるところはあり、細かいニュアンスの面でしっかり配慮しきれてはいないなと感じる面は多々見られた。

 

 まあ落第点ではないが、こんなメジャーな曲だけにもっと高い点を目指せるはずなのである。

 自慢になるが、サントラを録音したロンドン交響楽団と、作曲家が演奏したボストンポップスの演奏を生で体験している身としては、この夜の演奏ではもの足りないのである。

 そして二曲目は「おくりびと」」

 私自身は久石譲という作曲家を特別好んでいるわけではないが、映画音楽などとのコラボにより、アジアとりわけここ中国では特別なネームバリューをもって知られている。

 その主な参加作品はアニメのジブリや北野映画だったりするのだが、この「おくりびと」もその特異さゆえか、中国でも感銘をもって受け入れられており、単に日本の映画の枠を終えて評価されている。

 そのテーマ曲の久石さんの曲は、チェロ独奏が柔らかく温かく、死というネガティブな映画テーマを優しく包み込んでくれる。

 久石さんの曲は、複雑な深さというものはそれほどないかもしれないが、ヒューマニティという面では秀逸である。

 ただ今回の演奏はソリストが頑張ってくれたので温かさは感じられたが、指揮者にはもう一歩音楽の根っこをとらえてほしい印象は残った。

 そして、ハリーポッターの組曲。

 実はこの有名な映画も私は見てないので、演奏に対する評価はしにくい。

 曲はSFチックなウィリアムズの真骨頂ではあるが、映画音楽のような聴き終えて感動するというような流れにはなりづらく、そこが映像主体に付随する映画音楽と、演奏のみを目的とした純音楽との違いかなという気がした。