日時:2020年12月19日20:00~
会場:上海交響楽団音楽庁
指揮:張国勇
演奏:上海交響楽団
オーボエ:黄錚
ヴァイオリン:寧峰
ピアノ:張呉辰
曲目:
ジャンネ・フランセ:オーボエと管弦楽のための「花時計 L'horloge de Flore 」
エーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルト:ヴァイオリン協奏曲ニ長調 作品35
チャイコフスキー:ピアノ協奏曲変ロ短調
感想:上海交響楽団の演奏会でオール協奏曲のプログラム。
指揮者は張国勇さんで、中堅からベテランにかかる指揮者といったところか、日本の外山雄三さんに雰囲気が似ているといった印象がある。
さて一曲目はオーボエの協奏曲で、花時計という表題が付けられている。
もちろん聴くのは初めてである。ソリストは黄錚
その名の通り、時計を刻むようなリズムから音楽がスタートし、その中からスーッとオーボエの音色が心地よく響き渡る。
その音色の心地よさにぞくぞくっと来た。
そしてそこに絡むようにオーケストラの中からクラリネットオーボエと掛け合いながら歌う。
この掛け合いがとても心地よく、楽しい曲である。
オケのサポートも安心して聴けた。
オーケストラの華であるこの2つの楽器がしっかり鳴ると全体が締まるといった感じだ。
ただ、このソリストは、音色は素晴らしいが、音の止め方が若干雑な印象を受けた。
綺麗な余韻を残すような終わり方がないので、心地よさが継続しないのである。
この点だけちょっと残念ではあったが、全体としてはかなり満足した演奏であり、アンコールの曲も楽しく聴けた。(曲名は分からない)
続いてコルンゴルドのヴァイオリン協奏曲でこれも初めて聴く曲である。
ソリストは寧峰さん。
演奏が始まり、深みのあるオケの響きの中に真っすぐな寧峰さんのヴァイオリンの音が真っすぐ入ってくる。
音に存在感がある。
この寧峰さんというヴァイオリニストは、技術はあるが実直過ぎてあまり歌うことが出来きず、華に欠けるといった印象があったのだが、この曲ではその実直な響きが曲にあっており、力強い語り口となってこちらに伝わってくる。
指揮者との相性もあるかもしれず、これまでの彼の印象を一変させるような演奏だった。
その印象は第2楽章にも引き継がれ、真っすぐな深い音色が会場に響く。
聴衆もそこに聴き入っておりとても静かだ。
そして第3楽章は、ヴィヴァーチェであり、彼の早弾きのテクニックの真骨頂を見せる。
当然聴衆は大喜びであり、珍しく2曲ものアンコールが行われた。
いずれも曲名を知らず申し訳ないのだが、一曲目は彼のテクニックが生きるいわゆる超絶技巧タイプの曲で、もう一曲はヴァイオリンの深みを感じさせる曲。
ただこのアンコールの1曲目はさすがテクニックがあるなと思ったが、2曲目はやはりちょっと深みが足りず、本番プログラムで聴かせたあの強さは再現されなかった。
さて後半は、チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番でなんか久々に聴くのでちょっとワクワクする。
ソリストは張呉辰さん。
このソリストは過去に何度か聴いたがあまり満足しなかった記憶がある。
さてあの有名な冒頭から、ちょっと物足りなさを感じた。
タッチがべたっと甘いというか、音の粒がきれいに整わないのである。
しかも鍵盤の中央部はそこそこしっかり鳴るが、低音と高音の端の方に行くと音が弱まる。
加えてオケとのバランスが取れてないというか、指揮者はピアノに構わず思いっきり鳴らすので、ピアノの音が飲み込まれてしまった。
ただソリストの方が、そのあたりに気づいたのかエンジンが温まってきたのか分からないが、次第にタッチが強くなり音も大きくなっていく。
しかし音は鳴ったはいいが、タッチがコントロールされていないので音が雑になっていくのがわかった。
もちろんリズムは外していないが、音としての魅力に欠けていく。
対照的に、オケの特に木管群の出来栄えは秀逸だった。
ファゴットやオーボエ、フルート、クラリネットまで、協奏曲なのにそちらの方が気になる状況だった。
もちろん第2楽章のフルートのソロは秀逸で、ここだけでも聴き惚れてしまう。
結局第3楽章にはいってもそれは同じで、ピアノのソロをバックにオケ側を聞き入った状態だった。
まあ名曲なので聴衆の反応も悪くなく、アンコールも行われたが、やはり魅力的な音には聴こえず、ピアニストの更なる精進を期待したいところとなった。
コンチェルトばかり3曲というのはどうかなという印象だったが、まあ前半の演奏が良かったので、比較的あたりな演奏会だったのではないかと感じている。