トモキ・サンダースのこと | 沖野修也オフィシャルブログ Powered by Ameba

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Kyoto Jazz Massive 沖野修也 Official Blog

もうあれから2週間が過ぎたのか・・・。

渋谷のThe Roomで行なわれた
Tokyo Jazz Meeting~Summer Sunday Special。

吉澤はじめさんが
白鳥利卓と藤井伸昭、
さらに
トモキ・サンダースをフィーチャーした
久々となる(The Roomでは)カルテット編成のライブ、
お越し頂いた皆さんはお楽しみ頂けただろうか?

トモキ君との出会いはかつてブログに書いた。

ぶらり一人旅(前編)
http://ameblo.jp/shuya-okino/entry-11911530902.html
ぶらり一人旅(中編)
http://ameblo.jp/shuya-okino/entry-11912201290.html
ぶらり一人旅(後編)
http://ameblo.jp/shuya-okino/entry-11912201507.html

11年前に
Sleep Walkerとのレコーディングの打ち合わせを兼ねて
Blue Noteでのファラオ・サンダースさんの公演を
鑑賞しに行った際に、
「今日は
ワシの日本に住む
9歳の息子が
来ておるんじゃ」

と聞いた時はとても驚いたし、
その息子さんと
Sleep Walkerの初代メンバーでもある
吉澤はじめ(以降敬称略)、
白鳥利卓、藤井伸昭が
ライブで一緒に演奏することになるとは
夢にも思わなかった。

2015年7月26日、
僕は
ジャズの
歴史に残る
運命的な
邂逅を
目撃したのだ。


ファラオ・サンダースと
レコーディング&ライブで共演した
吉澤はじめが、
息子さんとThe Roomで激突。

ちなみに、
吉澤はじめと藤井伸昭は、
同じThe Roomで
ファラオ・サンダースの師でもある
ジョン・コルトレーンの息子、
ラヴィ・コルトレーンと
ジャム・セッションを行なった事がある。

しかも、
あの夜、
彼らは
お父さんと録音したThe Voyageを
トモキ君と再演しただけでなく、
ジョン・コルトレーンの代表曲、
My Favorite Thingsをも
カバーしたのだ!

そのカバーは当日まで予定されておらず、
はじめさんが考案したアレンジで
急遽演奏することが決定した。

リハーサルで
初めて耳にした僕は
思わず絶叫した!!!
(心の中でですが)

な、なんじゃこりゃー!!!

My Favorite Thingsに
所謂J-DILLA以降の
ヒップ・ホップ・ビートを導入しながら、
倍速のリズムが刻まれている。

それは
生演奏の、
ヒップ・ホップであり、
ビート・ミュージックであり、
ドラムン・ベースでもあった。

しかもそれは
7拍子の
ジャズ・ファンク!

変拍子なのにファンクを感じさせるグルーヴで
強烈なインプロビゼーションを伴った
紛れもないジャズなのだ。

コルトレーンの代表曲を
コルトレーンの息子とも
ファラオ・サンダースとも共演した
吉澤はじめが
ファラオ・サンダースの息子さんと
"今ジャズ"にも通じる
エッジなアレンジで
あの名曲を再生させた。

それは、
まさにジャズの進化の歴史の1ページを飾る
重要な瞬間だった・・・。

どうして
評論家は誰も来なかったんだろう?
ジャズ雑誌の編集者も・・・。

あ、呼んでなかったからか・・・。

もとい、
サックスだけでなく、
歌い、
踊る
トモキ・サンダースのカリスマ性には
目を見張るものがあった。

まだ20歳ですよ。

僕が20歳の時と言えば・・・
ロンドンでDJになると決意したばかりだから
何も始まってなかった(苦笑)。

ライブ終演後のジャム・セッションでは
ドラムも叩いてたからね。

勿論まだまだ荒削りだし、
お父さんの曲のカバーなんかは
かなり消化できていたけれど、
はじめさんの曲は複雑でとても難しいから
特にテーマ部分は苦労が伺えた・・・。

それでも、
音楽に対する真摯な姿勢には心打たれたし、
自らが楽しみ、
その上で聴衆を楽しませようとする
そのコミュニケーション能力の高さには
目を見張るものがあった。

そして、
何よりも
トモキ君の潜在能力を引き出した
はじめさんの牽引力と包容力にリスペクト。

奇しくも
クラブ・ジャズ・シーンでは
カマシ・ワシントンという
スピリチュアル・ジャズの影響を
ふんだんに取り入れた
サックス奏者が注目を集めている。

トモキ君も刺激を受けているそうだ。

しかし、よくよく考えてみれば、
現行のスピリチュアル・ジャズ勃興は
世界に先駆け、
吉澤はじめが書いた
"愛の河"によって引き起こされた。

ビルド・アン・アークよりも
トゥー・バンクス・オブ・フォーよりも早く。

そんなはじめさんと
トモキ・サンダースが
奏でた
My Favorite Thingsは
おそらく
ロバート・グラスパーと
カマシ・ワシントンの
共演を先取りする
(いやその先を目指した)
絶好のカバーとなった。

判る人には判るよね?

世界の人はおそらく
誰も知らないけれど、
The Roomで
ジャズの最先端を目指す実験が
あの日行なわれたのだ。

彼らが
再び共演する日を心待ちにしているし、
できる事ならば
あの組み合わせを
録音して記録として残して
欲しい。

Sleep Walkerはもうなくなってしまったけれど、
Sleep Walkerを超える存在が誕生した。



PS

今だから言えるけれど、
実は僕、
今年のTokyo Crossover/Jazz Festivalで
吉澤はじめfeat.ファラオ・サンダース&トモキ・サンダース
ってのを考えてたんです。
しかも去年から・・・。
前座がKyoto Jazz Sextetみたいな・・・。

でも
東京ジャズでファラオさんのブッキングが発表され
Kyoto Jazz Sextetも東京ジャズに出演することになったので
幻に・・・。

Sleep Walkerの「The Voyage」って
デモ段階の仮題、
「父と子」だったんですよね・・・。

PPS

The Roomでのライブ終了後に
トモキ君のお母さんに
「私が死んでもトモキを宜しくお願いします・・・」
と頼まれてしまいました(汗)。

お母さん、まだ全然元気なのに!

いやぁ、そんな重要なミッション、
困るな・・・と思いつつも、
次のKyoto Jazz Sextetのアルバムには
トモキ君を
ホセ・ジェームスと共に
ゲストとして起用しようかなと。