久々のKJMライヴ⑬ | 沖野修也オフィシャルブログ Powered by Ameba

沖野修也オフィシャルブログ Powered by Ameba

Kyoto Jazz Massive 沖野修也 Official Blog

いよいよ本番当日。
ランチをホテルで済ませ、
2台の大型ワゴンで
会場へ向かう。

晴天。

会場の設営は
まだ続いていた。

何と
ステージ上に
無事
フェンダー・ローズ(電気式のアナログ・キーボード)が
組み立てられているではないか。

一勝一敗一分。
それは、
シンガポール人との対戦成績(苦笑)。

それにしても、
もの凄い暑さだ。

橋の上だから
当然日陰はない。

河の流れと並走するように
ときおりステージに
吹き込む風も
一向に涼しさを運んでくる気配はない。
むしろそれは、
湿気をたっぷりと含んだ
温風でしかなかった。

炎天下で、
サウンド・チェックとリハーサルが開始される。

バンド全体のサウンドは
思ったより早く仕上がっていったのに、
案の定
問題が勃発。

フェンダー・ローズが壊れているらしい。
出ない音がある?

しかも、
おそらくキーボードから出ているであろう
ノイズが
止む気配がない。

ここでリハーサルが
急遽中断。

ステージの
あまりの暑さに
我がKJMの2トップ、
VANESSAとTASITAは
車内で待機する事に。

それにしても
酷い暑さだ。

赤道直下の
午後3時。
しかも
野外。

吹き出す汗が
止らない。

メンバーが
次々と
服を脱いで
上半身
裸になってゆく。

70年代の
ファンク・バンドのよう(笑)。

まるで、
彼等の
皮膚が溶け出しているように見えた。

が、
それを凝視する事はできない。

あまりの汗の量に
眉毛もその機能を果たさなくなっているからだ。

お気に入りのハットから
流れ出した汗が
僕の目の中に
吸い込まれて行く。

海水でできた
目薬を注しているようで
目を開ける事ができない。

絶叫したくなる程の
暑さが
僕達に襲いかかる。

その時
気が付いた。

こんな
状態で
現場で
作業している
人間が、
自分達よりも
遥かにギャラが良くて
おそらく
女の子達から
騒がれるであろう(望)
外タレに
愛想良く
できる訳がない・・・。

30分程して
呼び寄せた
修理人から
OKが出て、
ようやく
リハーサルが再開。

ボーカリスト達も参加して、
3曲程演奏する。

橋を行き交う人々が
立ち止まり、
人だかりが出来はじめた。

遊覧船に乗っている人が
僕達の写真を撮っている。

それでも、
バンドの前を横切る
幼稚園児達は
耳を塞いでいた。

渾身の力を振り絞り
見開いた
瞳に
映る
何気ない日常が、
橋の上での
ライヴという特殊な状況を
僕に再認識させた。

そして、
赤道直下の
昼下がりで
リハーサルをやらなければいけない事を
全く考えていなかった
自分の愚かさを
思い知らせてくれた。

直に
MTVの取材の為、
リハーサルを終了しなければならない時間となった。

ひとつだけ
気がかりな事は、
フェンダー・ローズに
エフェクターが取り付けられていなかった事。

そう、
機材の調子が悪かった為、
余計なケーブルを接続しなかったから、
フィルターとディレイを使った
リハーサルができなかったのだ。

それは、
僕がバンドに有機的に
関わる
今回のライヴの見せ場で
あったにも関わらず。

キーボードの菱山正太が、
エフェクターを接続しようとしていた。

既に、
タイム・オーバーだ。

少しだけ投げやりになっていた僕は
彼に言った。

「もう、いいよ」

その時
僕は、
突貫工事を続ける
現地の人々に
同化しようとしていた。

(つづく)