隠れた傑作「誰かに見られてる」 リドリー・スコットの新境地開拓 | 映画復元師シュウさんのブログ

隠れた傑作「誰かに見られてる」 リドリー・スコットの新境地開拓

11月30日は、サー・リドリー・スコットの誕生日。
そこで、彼の隠れた名作を紹介。

「誰かに見られてる」


トム・ベレンジャー扮する刑事が、殺人事件を目撃したセレブ女性(ミミ・ロジャース)の護衛につく。
身分も立場も違いすぎる2人だが、徐々に心を通わせていく。
しかし、刑事には妻がいた…。

「誰かに見られてる」は、リンチ版「デューン」で印象的なパンツ姿を披露したスティングの曲を効果的に使ったロマンティック・サスペンスだ。


「ブレードランナー」「レジェンド」で、興収的な大失敗をしたスコット。



この「誰かに見られてる」は、グッと予算を抑えた小品として、地味な出来だった。


だが、人物描写がしっかりしていて、それまで映像表現過多で人物描写が弱いとされていた部分が(多少なりとも)払拭された。


そして編集が、スローなテンポから脱し始め、ストーリーテリング重視の兆しが見え始めた。


ただ、「誰かに見られてる」では、作曲者軽視の傾向は引きずっており、マイケル・ケイメンが劇伴を担当したが、ベレンジャーとロジャースが心の内を打ち明ける切ないシーンにかかったのは、なんと、「ブレードランナー」の「メモリーズ オブ グリーン」だった!

それも、ザ・ニュー・アメリカン・オーケストラの演奏したバージョンだ。

マイケル・ケイメンの心中やいかに…。


大作映画が2本続けて批判されたスコットが、肩の力を抜いて、新境地を開拓するきっかけとなった重要な作品なのは間違いない。


トレードマークのスモッグや光線、逆光表現は健在だ。


とにかく、「誰かに見られてる」は、登場人物が感情移入しやすく、みんないい奴ばかり。



だからこその三角関係が本当に切ない。


大作の間に埋もれ、過小評価されているが、ステキな映画なので、オススメする。