「エイリアン:ロムルス」不満と評価の狭間で… | 映画復元師シュウさんのブログ

「エイリアン:ロムルス」不満と評価の狭間で…

「エイリアン:ロムルス」ついに公開ですな。

「1」と「2」の間のお話として、「ドント・プリーズ」のフェデ・アルバレスが演出担当。

製作総指揮にリドリー・スコットが就任。

 

ネタバレなしで行くけど、正直言って、評価に困る作品だ。

 

まずは、個人的に感じた「負」の部分から。

 

観ている最中から、「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」がちらついて仕方がなかった。

つまり、過去のシリーズ作へのオマージュシーンのオンパレードなのだ。
オマージュというより、まんま。
だから、次の展開が何となく読めてしまうほどに、過去作と同じような場面が連続する。

これは、「シリーズファンホイホイの映画だな」とも実感した。

人によっては、似たシーンやセット美術があることで、過去作との繋がりを感じて、「これぞシリーズ作!」と褒め讃えている声も散見する。

それはそれでアリだし、十分理解も出来る。
 

でもな、やはり僕は「違う世界」を観たかった。

過去のインスパイアシーンの連続にはウンザリしてしまった。 

それなら1作目をヘビロテすればいいし。

 

オリジナルに対するシリーズ作の存在意義とは何なのか? 

過去作と似たシーンを出すことなのか? 

僕は、過去作のテーマを発展させる事だと思う。 

 

「ブレードランナー 2049」で、主人公Kが、特別な存在ではなく、単なる普通のレップだと判明して、それでも「真の自分」を見出していく展開こそ、人が生きるとは何なのかその答えを示した、見事な一作目の発展形だった。

image

 

「ゴッドファーザー2」は、1作目では、あれだけ毛嫌いしていたファミリーの血の定めに、2作目ではガチガチに絡め取られ、身動きが取れなくなる悲劇を見事に表現していた。 

image

1作目と同じシーンなんか無くていい。 

テーマが深化してればいいのだ。

 

・・・と、まずは個人的に「負」と感じた部分を吐き出してみた。

続いて、「素晴らしい点」を紹介する。

 

「エイリアン」シリーズを観てない人ほど、「エイリアン:ロムルス」を観るべき。
恐怖とアクション、高揚したアドレナリンなど、過去作のいいとこ取りだから、シリーズ全ての魅力が、ギュッと2時間に詰まっているのだ。
いやらしいほどの良いとこ取り!

 

個人的にはダメだった、「オマージュだらけの作風」が、シリーズ未見の人にとって、逆に「この一作を観れば、過去作を見る必要ないよ」と言いたくなるほど良く機能しているのだ!

 

初めて観る人にとっては、最高のごちそうになるはずだ。

 

映画「ドクタースリープ」が、「シャイニング」の原作と映画の両方に目配せした傑作だったけど、「エイリアン:ロムルス」も、あらゆる「エイリアン」シリーズに配慮した、超優等生な映画と言えるかもしれない。

そして特筆すべきは、いいところ取りなのに、とにかく2時間以内に上映時間を抑えている点だ。
何を物語に組み込むか、その情報処理能力は、本当に賞賛に値する。

 

先日観た、闇落ちアイドルアニメ「トラペジウム」も、「仲間集め」から「アイドルに駆け上がる」過程、「アイドル時代」、「チームワークの崩壊」、その後の「新たな道」…というてんこ盛りの内容を、1時間40分で一気に駆け抜け、正直驚いた。

 

「エイリアン:ロムルス」も、非常によく練られた脚本だったから、「トラペジウム」や「バック・トゥ・ザ・フューチャー」と合わせて、映画脚本のお手本になるのではないか。

(言い過ぎか??)

 

あと、良かった点としては、ウェイランド湯谷が支配する、資本主義世界の成れの果ての描写だ。

スコットが制作として背後から作品を操っているとはしても、「ブレードランナー」的な未来とリンクし、世界観が豊かになったのは事実だ。

 

シリーズファンに目配せしつつ、過去作のいいところ取りをすれば、間違いなく最強の物語として、新規の客を獲得できるのでは…。

そんな、あくまでも新規ユーザーの獲得を優先する、これが今作の狙い目だったように思う。

全米の興行成績は好調だと聞く。

制作陣の狙い目は正しかったようだ。

 

色々、判断に戸惑う傑作ではあるんだよね。

 

「エイリアン:ロムルス」は、「続編&プリクエル&スピンオフ」をいかに考えるかの、良い判断材料になるだろう。 

 

【エイリアンのオマケ①】

image

これはね、シュウさんの奥さんが作ったビーズのフェイスハガーを、ロムルスのポスター風にしてみたものなんだって。

 

【エイリアンのオマケ②】

映画「エイリアン」に登場する地球外生物のライフサイクルを図解してみたよ。

「エイリアン2」で、残念ながらアリンコの生態に成り下がっっちゃったけど、本来は、以下のような流れだったんだよ。

………………………………………………………………………………………………………………………

①フェイスハガー(他の生物に卵(?)を植え付ける)→
②チェストバスター→
③成体→
④繭(他の生物の肉塊を使って生成される。中にはフェイスハガーも生成される)
・・・というサイクルだった。

このライフサイクルは、「エイリアン/ディレクターズカット」で、初めて明かされた。
この流れを「正」と捉えると、「2」以降が無きものになる。


とはいえ、だ。
良く考えてみたら、エイリアンの一生は、セミより遥かに短い生命ということになる。
劇中でどの位時間が経っているか正確には分からないけど、多分2〜3日程度だから、そう考えると、切ないよね。

 

 【エイリアンのオマケ③】

「エイリアン」一作目の、ケインの顔にフェイスハガーが襲いかかるシーンに、未公開カットを組み込んだ全長版を紹介するね。

フェイスハガーが、どうやってケインのヘルメットを貫通するのか、良く分かると思います。

DVDレベルの映像をカメラで撮影したものだから、画質が悪いけど我慢してね。

「X」に投稿したものを掲載します。