ルーカスが夢見た「古くて新しいスター・ウォーズ」とは? | 映画復元師シュウさんのブログ

ルーカスが夢見た「古くて新しいスター・ウォーズ」とは?

先日SNSの「X」上で、「スター・ウォーズ」に登場するファルコン号やタイ・ファイターの操縦桿について、高橋ヨシキさんと話し合った内容を紹介した。
 
すると、まさかの賛否合わせた激論が発生してしまい、正直驚いた。
 
ちなみに僕が、そこで伝えたかったのは、いかにルーカスが「スター・ウォーズ」を古びさせないか、という工夫についてだった。

 

SWは遠い昔の遥か彼方の銀河系の話だから、なるべく「現実」を画面に入れたくなかったんだと思う。
 
現に、レイア姫にブラジャーを禁止したのも、SWの世界にはブラは存在しないからだ。

 

とはいえ、少ない予算から、現実のあり物を流用せざるを得ず、ハンのブラスターはモーゼルの改造だし、デス・スターのレーザー発射のレバーには、当時の編集スタジオの編集レバーをそのまま使用している。

ちなみにこれは、1975年頃の業務用なので、収録テープは1インチや3/4インチと思われる。

 

こういう経緯から、やはり予算の関係でチープにせざるを得なかったファルコンやタイファイターのインテリアは、極力映さないで済むなら、映さないという方針を立てたと思うのだ。
ハンドルそのものがダサいという事ではなく、あくまでSWの世界に入れこむと画面が現実的で安っぽくなる…という意味だった。

 

予算とクオリティの戦いで制作現場は、想像を絶する困難を極めたと思う。
 
その後、SWが大ヒットを飛ばし、確固とした地位を確立したルーカスは、この現実と切り離された「神話」を、エピソード4〜6をメインに、集中的に再編集していく。
 
SWシリーズの他の作品のVFXに水準を合わせるべくCG修正などを行ったのだ。
 
ところが、オリジナルに愛着がある人々は、この改変を「悪手」と捉えて、非難が渦巻いた。
 
正直言って僕もオリジナルが一番好きだが、もしかしたらルーカスは、「時代時代の新しい観客に合わせて、作品を絶えず"進化"させよう」と目論んでいたのではないだろうか?
 
現実と切り離された世界観だからこそ、作品自体が"進化"しつづける…。
 
事実、若い世代には、オリジナル3部作は古臭いと映っているようだ。
以前、近所の中学生に、エピソード4のオリジナル公開版を観せたら、途中から、いびきが聞こえてきたのは、色々な気づきを与えてくれた。
 
だからこそルーカスは、リメイクとも、ディレクターズカットとも違う、絶えず新しい作品であり続ける「スター・ウォーズ」を夢見ていたのではなかろうか。
 
これって、誰もなしえない映画制作スタイルだが、究極の自主映画のままだったなら可能だったかもしれない。
 
残念ながら、ルーカスフィルムは、順風満帆とは行かず、ルーカスが直接関わった旧6作の改変は非難され、結局はディズニーに全て売却されてしまった。
 
まあ、今となっては分からないけど、映画界に革命を起こし、絶えず新しい表現を追い求めたルーカスが、こんな野望を秘めていたら、さぞかし楽しかっただろうなあ…
 
と妄想する次第だ。
 
ちなみに、この辺りの考察は、以前動画にもまとめている。
 
良ければ、こちらも合わせてご覧いただきたい。