「いつかギラギラする日」脚本を入手!映画と相当違うぞ!!徹底比較した! | 映画復元師シュウさんのブログ

「いつかギラギラする日」脚本を入手!映画と相当違うぞ!!徹底比較した!

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深作欣二映画で、もしかしたら一番好きかもしれない。
和製ギャング映画の最高峰の一つ。
それが「いつかギラギラする日」だ。
愛してやまないこの映画だが、ついに、映画用の脚本を入手した!!!
脚本を手掛けたのは、丸山昇一さん。
「野獣死すべし」「友よ、静かに冥れ」「探偵物語」などなどなど!!!
ハードボイルドの脚本と言ったら、その最高峰の一人である。
 
興味深いのは、脚本と映画だと結構異なるのだ。
以下、その違いを確認していこう。

お分かりだろうか。

僕が入手した脚本には、邦題「いつかギラギラする日」の名前がない。

「The Day olmost heaven」という英語のタイトルのみ。

「天国のような1日」とでも訳すのか。

「いつか~」とはかけ離れたタイトルなのが興味深い。

 

英語のタイトルとして、僕が知っているのは、確か最初のティーザー予告が「SOMEDAY INTO GLEAR」で、その後 最終的には「THE TRIPLE CROSS」に決まったはずだ。

二転三転してたんだね。
もしかしたら、この脚本は、初期のものかもしれない。

 

 

登場人物の役名はあるが、演者の名前は入っていない。

キャラクターの年齢やフルネームが分かるのは嬉しいよね。

 

脚本の冒頭は映画と違い、多岐川裕美演じる美里が産婦人科に行くシーンから始まる。

 

脚本では、産婦人科のシーンから一転、回想シーンになる。
ここで神崎らが、強盗犯だと明かされる仕組みだ。

そして、そのまま、シーンは、荻野目慶子演じる麻衣の登場となる。

そして、耳寄りな強盗計画の話が持ち上がる。
千葉真一演じる柴や、石橋蓮司演じる井村の紹介シーンが続き、木村一八演じる角町が登場。
角町の度胸を試すために、神崎らは、ワザと角町を脅して銃を発砲する。
ここに至って、銃を乱射する画に、タイトルが被さる仕掛けだったのだ。

 

続く、角町が持ち込んだ銀行強盗が続くが、なんと、北海道ではない。

都心から80キロ離れたF市だし、派手なバイク同士のカーチェイスもない。

東洋銀行のF支店の集金時間に、仕出し弁当の商用車に偽装したワゴンで近づき、襲撃するのだ。

ギャングたちは、顔を特殊メイクで別人に成りすますという仕掛けもあるのだ。

 

続いては安岡力也演じる靴職人との場面。

靴職人は、脚本では乃木典之(48)と紹介されている。

 

皆大好き、アブサンをクイっと飲むのは、シーンのラストになっている。

映画本編よりも、時代の変化に取り残されそうになるアウトローの状況を詳しく説明している。

 

特筆すべきは、多岐川裕美が、実は別荘の使用人だったと明かされるシーンだ。

内容は、映画本編と同じなんだけれど、このシーンがどの位置に入るのか、そこが興味深い。

とりあえず、続きを読んでほしい。

↓コチラをどうぞ。

 

お分かりになるかしら。
実は、クライマックスで、パトカーの大群と大立ち回りをした神崎が、4WDもろとも海に突っ込んだ後に来るのだ。
そして、別荘の仕事を辞めた美里は、神崎と合流してバスに乗り込む。
以下の展開は映画と同じとなる。
脚本を読んでみて思うのは、物語が展開する舞台が関東なので、映画のような派手な爆破や銃撃戦がどこまでやれたのか、このままでは厳しかっただろうという点。
 
恐らくだが、テーマである「暴力と熱情」という脚本の”魂”を尊重した結果、北海道に舞台を変更して、脚本も改めて変えたのではなかろうか。
 
また、冒頭の流れは、個人的にはダントツで映画の方が良いと思った。
脚本では、これまでの強盗が1つしか描かれていないが、映画ではいくつもの強盗を短く積み重ね、その合間に新聞の見出しまで入れている。
どんだけ犯行を積み重ねてきたプロ集団なのか、映画の方がつたわってくるからだ。

また、多岐川裕美が別荘を辞めるシーンも、ラストから中盤に移動したのは大正解だった。

ラストは、4WDが海に飛び込んだ後に、ワンクッション置かずに、バスのシーンになる方がテンポが良いから、神崎の落胆した気持ちが途切れない。

とにかく、この脚本は素晴らしいが、映画はもっとブラッシュされたものになっていたという事だ。
是非とも、4K、いやせめてブルーレイでいいからソフトをだしてもらいたいなあ。


追伸:

なお、今の視点で見返すと、多岐川裕美のキャラクター美里が、あまりにも男にとって都合が良すぎるのが気になる。


あれを肯定的に描いている部分は、今の時代からみると厳しいと感じた。


よほど、荻野目慶子の役の方が、ギャングを相手に対等に立ち回るから、すげー応援したくなる。


この映画は、既成の権力に対して反逆する奴らの、熱いドラマだもんね!