ブレードランナー &メトロポリスの二本立て600円!
昨日は、ポスターコレクターの大家にして、僕の大切な盟友「ポスターマン」こと小野里徹さんと、新文芸坐の支配人、花俟良王さんによる熱いトークイベントに参加した。
名画座の置かれた現状や生残るアイディアなど、秘話が続々と飛び出した。
個人的に一番食いついたのが、過去のプログラム紹介だった。
1985年の内容だ。
お分かりの通り、「ブレードランナー 」と「メトロポリス(ジョルジオ・モロダーの着色版)」が二本立てで600円だった!
僕は、この二本立ては知らなかった。
「ブレードランナー」いえば当時は、「遊星からの物体X」や「ファイヤーフォックス」、または「キャットピープル(ポール・シュレイダーのリメイク版)」や「未来世紀ブラジル」とのカップリングが多かった。
花俟さんいわく、これらのカップリングは、旬を過ぎた映画の抱き合わせで、いわゆる「買取」だったらしい。
つまり売れても売れなくても、一定の金額で、その期間の上映権を買い取るらしい。
言葉は悪いけど、出涸らしのような、旬が過ぎた映画ばかりだから、それなりに安く買い取る事は出来たという。
その分、身入りは新作に比べて大幅に減ることになる。
(そんな出涸らしの映画に僕なんかは育ててもらったから感謝しかない。)
対して新作映画は、完璧にシネコンに優先権があるという。
そもそも名画座は、劇場ヒエラルキーの最底辺らしい。
頂点に君臨するのは、シネコン。
シネコン→二番館→名画座という順で、シネコンが最新作の上映権利を有していて、新作が旬な時に何度もかけて、元を取ろうと躍起になるのだ。
通常、新作の場合、売り上げは分配方式で、映画館、配給会社、制作会社などで分配される。
新作が売れば売れるほど、売り上げも大きくなる仕組みだ。
こちらのプログラムの上段には、「レイダース」と「インディ・ジョーンズ魔宮の伝説」のカップリングが見える。
これは特別興行として、二本立て1000円だった。
当時は、通常が600円だから、中々な金額設定だ。
特別興行になる理由は様々らしく、例えば、上映権を有する映画会社が、「買取」ではなく「分配」方式を求めてきたなどがあるらしい。
「レイダース」のカップリングが特別興行だった理由は不明らしいが、人気作だから買取より分配にして、映画会社がより儲けを画策したのかもしれない。
イベントでは、新文芸坐の成り立ちから、他の名画座との関係、シネコンとの戦いの歴史など、多彩な話が飛び出した。
特に、同じ名画座として、早稲田松竹とは、上映する映画が似通う場合があるなど、「好敵手」な関係にあるらしい。
対してシネコンについては、ポスターマンが「仮想敵なんでしょ?」と突っ込むと、花俟さんは「いやいや」と苦笑いしていた。
シネコンに対する花俟さんの思いの真偽は分からないが(笑)、シネコンの新作映画に対抗する苦労は色々あるらしい。
特に、映画のカップリングには気を遣っているという。
「優等生なカップリング」より「尖ったカップリング」を目指しているそうだ。
ニコラス・ケイジの特集なんかが正にそれ。
「ニコケイナイト」と銘打ち、B級路線まっしぐらのケイジを逆手にとって、ひと味違ったオールナイトイベントに仕立てたという。
他にも、終戦記念日の時期には、戦争関連の映画を必ずかけるという。
これは、お客が入ろうが入るまいが関係なく、新文芸坐としてのコダワリらしい。
意外にも(?)反戦の熱い気持ちが通っている映画館なのである。
また、新旧の映画ファンを繋ぐ架け橋として、新旧の作品をカップリングするらしい。
上の人気アニメのカップリングは、これから上映されるラインナップだが、「シンドバッド」や「アルゴ探検隊」と「Junk Head」、さらには中国のCGアニメ「ライオン少年」という驚きの布陣だ。
往年のファンには、過去作を懐かしむだけでなく、最新作の息吹に触れてもらい、逆に若い世代には、古い名作から、新しい知見を学んで欲しいという。
興味深かったのは、いわゆる応援上映(絶叫上映)の先駆けは、新文芸坐の「マッドマックス怒りのデスロード」だったという事。
正確には、同時多発的に、もう一つの映画館でも行われたとの事。
最初、「マッドマックス」のファン有志が企画してシネコンに打診したら門前払いだった。
そこで、新文芸坐に話が来た時に「これは面白い!」と感じて、実現させたというのだ。
すると、拒否したはずのシネコンまでやり始めたから、「してやったり」だったそうだ。
最近では、応援上映の最新型として、アイドルグループのアニメなどの上映では、天井にネオンをはめ込み、専門スタッフが映画の進行に合わせて、手動でライティングを操作しているそうだ。
シネコンで同じことをしようとしたら、費用対効果で大変な事になるらしい。
名画座だからこそのイベントになっているのである。
ただ、仕込みが大変だからそんなに回数は出来ないとの事。
手探りで始めた体験型上映だが、「うたプリ」や「スタァライト」を上映して、アニメとの相性が良いことがわかり、軌道に乗ってきた手ごたえがあるそうだ。
そして今は、推しの映画があると、劇場に何度もリピートするファンの動きが熱いらしい。
今、そして、未来を見つめながら、いかに名画座として生き残るのか、毎回アイディアを考えている花俟さんはじめ、名画座の方々には頭が上がらない。