超レア!タイレル社のミニチュア写真館 ブログ開催だよ! | 映画復元師シュウさんのブログ

超レア!タイレル社のミニチュア写真館 ブログ開催だよ!

最近、アニメの投稿がやたらと多くて、従来からのSFファンの皆様や、ブレードランナーファンの皆様には大変申し訳ないので、今回は、「ブレードランナー」に関する貴重な写真を、こっそりとアップします。

 

いずれも、「ブレードランナー ファイナルカット」のプロデューサーだった、チャールズ・ロージリカさんが以前公開していた写真だ。

今回は、そのうち、タイレル社にまつわるものを紹介する。


タイレル社の模型は、上記のように、テーブルに載るサイズで設計された。
 

当初は、使用するカメラレンズの関係でこの大きさの倍は必要になると、ダグラス・トランブルは考えていた。

しかし、スタイロフォーム(発泡スチロール)のモックアップを作ったところ、全体の大きさは上記のサイズでも十分奥行が出せると判断。
トランブルは、この大きさでのミニチュア設計を指示した。

さらには、4面全て作らなくても、2面だけでも十分表現できるとして、大きさ、電飾などのコスト削減にも寄与しているのだ。

 

このタイレル社のパネルは、映画の冒頭で、工業地帯の遠くに見えるピラミッドのためのものだ。
実際は、パネルに電飾を仕込んだ程度の、安価な作りだったことが分かる。

赤〇で囲んだ部分がソレ。

実際のテーブルサイズのミニチュアを使わずとも、パネルで代用することで、やはりコストと時間を、大幅に短縮することに成功している。

 

これは、タイレルピラミッドの外壁の一部。
窓にあたる部分は細かく穴が開いており、奥が透けて見えている。


これは、一旦、全体のミニチュアを塗装して、あとから窓の部分の塗装をはがしていったという。
その際、窓が不均等に見えるように、塗装をはがす窓はランダムに選ばれたそうだ。

絶対に頭がおかしくなる工程だ。
 

ピラミッドのデザインを担当したトム・クランハム曰く、タイレル社の表面は、様々な形状のパターンをいくつも作って、それらを組み合わせることで、全体として面白い効果を生み出そうとしたらしい。

 

これは、タイレルピラミッドの屋上に設置されていた無数の塔のウチの一つと、屋上の表面のパターンあれこれ。
40年以上経っているにしては、経年劣化が少ないのは保管状態が良かったからか。

 

タワーの表面を接写したもの。

立体物だけでなく、平面状の真鍮も用いてタワーが表現されているのが分かる。

ここからも、3Dではなく、2Dを用いることで、コストダウンを図ろうとした一端が垣間見れる。

 

こちらは、タイレル社の尋問室のミニチュア全体像だ。
あの印象的な扇風機は、上にギアがあって、それで回転していたのだ。
テーブルにイス、そして柱など、作りこみが素晴らしい。
この部屋のひとつ(右から2番目)に、ホールデンのフィギュアが立っていたのである。

 

そして、こちらが、模型と同じレイアウトの実写の写真だ。

比較すると、ちゃんと位置が合っている。

 

映画を観て頂くと分かるが、ミニチュアの扇風機と、ライブアクションの扇風機の回る速度が、ほぼ同じなのである。

 

だからこそ、ミニチュアの尋問室にズームする画から、実写の尋問室に切り替わった時に、違和感が無いのである。

 

「ブレードランナー」は当初、興行的にも芳しくなく、大金を費やした割には失敗した映画だった・・・という烙印を押されてしまった。

 

だが、こうしてミニチュア制作の工夫を見るだけでも、手を抜くところと抜かないところのバランスが絶妙で、けっして金食い虫の映画ではなかったという事がわかるハズだ。

逆に言えば、普通に作った場合よりも、ヴィジュアルがゴージャスで、豊かな世界観を構築できた・・・とも言えるのではないか。
結局「映画」は、思い描いたビジュアルと、実際に何が出来るのかという、その熾烈な「戦い」の中でしか生まれないのである。