『会報 201811月号』(発行:東京都社会保険労務士会)より

 

昨今、スポーツ界におけるパワハラ問題がニュースで取り上げられています。職場内においてもパワハラは以前から問題となっています。今回、職場でのパワハラを防止するため、パワハラに関する基礎的な知識を整理し、パワハラ防止対策を実行するための方向性について解説する特集がありましたので、要旨をまとめてみました。

 

1.増加するパワハラ

昨今、パワーハラスメントに関する事件が相次いで報道され、この問題が大きく注目されていますが、民事上の個別労働紛争の相談のうち、いわゆるパワハラを含む「いじめ・嫌がらせ」に関する相談件数は、平成24年度にそれまで第一位だった「解雇」を抜いてから6年連続でトップとなりました。この10年あまり、ただ一つパワハラだけが右肩上がりで増加し続けていることは、緊急に対策すべき異常事態とも言えます。

「従業員から相談の多いテーマ」として「パワーハラスメント」32.4%が4位の「セクシュアルハラスメント」14.5%に2倍以上の差をつけてトップとなっています。

 

2.国の取り組み

国のパワハラへの取組みについては、平成23年に厚労省が有識者や労使の委員によって構成される「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」を設置し、初めて国としての検討を開始しました。

本年、円卓会議報告から6年ぶりに厚労省の「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」から報告書が公表されました。

 

3.パワハラ問題の難しさ

パワハラは、すでに事業主の措置義務が法令や指針で条文化されている「セクシュアルハラスメント」や「妊娠、出産、育児休業、介護休業等に関するハラスメント」と異なり、まだ法的な根拠がありません。これは、セクハラやマタハラ等が、労働者の業務上の行動とは本質的に異なる側面で起こりがちな人権侵害であるのに対し、パワハラは

 

 ・業務の指示・命令そのものの中で起こりやすいものであること

 ・「適正な指導、叱責」と「パワハラ」の境界線がどうしても曖昧になりがちであること

 

に起因するからと言えます。

また、ハラスメント問題は、当事者たちの性格やコミュニケーションのスタイルから織り成される人間関係や、起こった事案の背景・経緯によって状況が千差万別であったり、当事者たちの主張が食い違ったりすることが多いため、事実関係の把握が非常に難しいことが特徴です。

 

 

次回は、パワハラ増加の理由についてまとめます。