『会報 20186月号』(発行:東京都社会保険労務士会)より


 総合労働相談所の相談事例になります。

 相談者は38歳の男性で、特殊法人に数力月前から在籍出向しています。出向先では長時間労働が常態化していますが、出向元において管理職であった相談者には、出向先でも今まで残業手当が支払われたことはありません。出向先では総務部に配属となり、今回、36協定の作成を任されることとなりました。  

1.経緯

36協定を作成していく中で、相談者は、協定書の内容についていくつかの疑問を感じています。自分の労働条件についても、残業手当が出ないことについて疑問を持っています。

2.相談内容

 ①36協定を見ると「延長することができる時間」が1日、15時間と設定されているが、これは長すぎるのではないか。

 ②仮に法的に問題ないとしても、翌朝まで残業し、そのまま終業時刻まで続けて勤務すると協定違反にはならないか。

 ③36協定の作成や残業手当の支払いにおける、出向者の取扱いはどうなのか。

 

3.アドバイス

36協定で設定できる延長できる時間は、「1日を超えて3カ月以内の期間」および「1年間」についての上限を定めた基準がありますが、「1日の延長できる時間」には法令や基準に定めがないため、法令上の問題はありません。 特に「1日の延長できる時間」の上限については、日々その決めた時間まで労働させるために決めるのではなく「必要になった際、カバーできる時間」を決めるものです。

徹夜勤務が起こり得る事業場においては、いざという時のために、36協定違反とならないよう、長めに設定せざるを得ないこともあります。

出向者については、労働時間や休憩・休日は原則として出向先の規定に従うため、36協定も出向先のものが適用されます。出向先で実態として管理監督者(労働基準法上の「監督もしくは管理の地位にある者」)でないならば、労働時間・休憩・休日の法律の規定が適用されるため、当然36協定も対象者となり、残業手当も支払われます。

 

 

36協定といえば基本中の基本ですが、届出や残業手当の扱いなど、出向元・出向先の間であいまいな運用になりがちなので、注意が必要ですね。