『会報 20186月号』(発行:東京都社会保険労務士会)より

 

障害者の法定雇用率が引き上げられ、社会として障害者を雇用することが一層求められています。障害者の中でも発達障害を取り上げて、どのように支援し企業で活躍してもらうかについての記事の連載が会報にて始まりました。

前回の、発達障害者と接する際のポイントに続いて、今回は発達障害の種類と特性についての解説です。記事の要旨をまとめながら、発達障害について理解を深めようと思います。

今回は、労務管理上の注意についてです。

 

6.事業主の啓蒙

平成28年4月に改正施行された障害者雇用促進法により企業に義務付けられた障害者の「差別禁止」と「合理的配慮提供」の対象は、障害者雇用率の算定対象とは異なり、精神保健福祉手帳を所持されている障害者に限定されません。健常者として採用された従業員であっても、現に、精神疾患、発達障害、難治性疾患などにより就労に支障を来しているのであれば、合理的配慮を提供すべき対象になりうります。

また、この2つの義務は、企業規模を問わず、すべての事業主に課せられます。しかし、この「配慮」「理解」が暴走し、人事担当者、職場の同僚、上司が非常に偏った認識から本人に「レッテル貼り」したり、意向を無視した「受診勧奨」をしたり、情報共有をする範囲を慎重に検討せず情報提供を行ったことでトラブルになっているケースも散見されます。

発達障害の方への対応では「事例性」(業務遂行の支障、職場での問題行動)と「疾病性」(病気の有無、症状)の峻別が難しい点も、対応の混乱する原因です。発達障害は、本人の呈する仕事上の問題点(事例性)そのものが、本人の持つ障害特性(疾病性)の表れであり、「事例性」と「疾病性」が一体であるため、誰がどこまでの役割を担うのか(医療機関等に委ねることなのか、労務管理で対処すべきことか)、どのような連携が必要なのかを整理することが難しく、混乱することが多くあります。

また、多くの情報が提供されることが、かえって誤解を招いている面もあります。発達障害の一面だけを捉えてものを語る方や、定型的な対応をすればよしとする職場に出会い、不安を感じることもあります。当事者一人一人、特性の現れ方、障害に対する自己理解の程度も違います。そのデリケートな思いに心巡らせることが大切です。

人権保護も踏まえて、職場に正しい知識の伝達と情報共有のあり方を啓蒙していくことも求められていると思います。この役割は職場の(ラスメント防止、職場のトラブル防止を担うことにもつながります。

 

次回は、多職種連携のハブの役割についてまとめます。