『会報 20186月号』(発行:東京都社会保険労務士会)より


 

厚生労働省の調査』」によると、睡眠で休養が十分にとれていない人の割合は約20%であり、また、平成19年以降、1日の平均睡眠時間が6時間未満の者の割合が増加しているとの結果も出されています。従業員の度重なる睡眠不足は、病気のリスクを招くだけではなく、企業の成長や発展を妨げる要因にもなりかねません。

今回、会報に睡眠の役割や睡眠不足が及ぼす影響と睡眠不足の対策を解説した特集が載っていましたので、記事の要旨をまとめてみました。

今回は、睡眠負債とその対処についてまとめます。

 

7.睡眠負債

睡眠に関しては、自分はよく眠ってすっきりしていると思っていても、実は睡眠が足りていないということもあり得ます。睡眠負債とは、「睡眠時間が足りないことによって、簡単には解決しない深刻なマイナス要因が積み重なっていく」という意味の造語です。睡眠負債が単なる睡眠不足と異なる点は、本人に睡眠が不足している自覚がないことです。

睡眠時間の特徴は、「貯金はできないが、借金はできる」というものです。慢性的な睡眠不足は、私たちの心身に対してあらゆる面から健康を侵すことが分かってきています。

 

8.対処の視点

わが国では、多くが睡眠負債を抱えているといえます。現況では、睡眠時間を延ばす方策を取ることは、あまり望めそうにもないという見方もあり、そうなると、いかに効率よく睡眠の効果を享受するか、と視点をずらして考えてみます。

睡眠の質は、様々な要因から影響を受けることが知られています。そこで、質の高い睡眠を手に入れるためには、124時間をデザインする視点が大切になります。

まず朝目覚めたときには、カーテンを開けて陽の光を浴びることから始めます。起きている時間は意識的に活動量を上げることも大切です。できる限り身体を動かして、寝ているときとのめりはりを意識します。午後は脳や身体のリズムから、眠くなる時間帯があります。昼寝を活用して解消するのも良い方法です。1015分程度の睡眠、準備を入れて20分程度の時間で収めることが必要です。 カフェインは夕方以降に摂ると夜間の睡眠への影響があることから、珈琲が飲みたくなった場合は、カフェインの入っていないタイプのものを選ぶとよいでしょう。

夜間には、部屋の照度を下げていくことで睡眠への準備をしていきます。睡眠は身体の深部の体温の状態に大きく影響されるので、深部体温をうまく下げるようにするとよい睡眠を導くことができると考えられています。例えば、ぬるめの入浴により深部体温を上げておくことです。

一日の中でいくつかのことに丁寧に接することで、良質の睡眠が得られやすくなります。睡眠は短期にも長期にも、私たちの健康や生活に大きく影響を及ぼすものだけに、124時間のデザインが大切です。

 

 

この記事を読んで、「睡眠時間の特徴は、貯金はできないが、借金はできる」という言葉が印象的でした。寝溜めをいくらしても睡眠の負債は救えません。つまり、毎回寝不足にならないように適正な量の睡眠を取ることに注意を払わなければ、睡眠負債に陥ってしまいます。これは、お金で借金するよりも恐いことですね。