『会報 20186月号』(発行:東京都社会保険労務士会)より

 

厚生労働省の調査』」によると、睡眠で休養が十分にとれていない人の割合は約20%であり、また、平成19年以降、1日の平均睡眠時間が6時間未満の者の割合が増加しているとの結果も出されています。従業員の度重なる睡眠不足は、病気のリスクを招くだけではなく、企業の成長や発展を妨げる要因にもなりかねません。

今回、会報に睡眠の役割や睡眠不足が及ぼす影響と睡眠不足の対策を解説した特集が載っていましたので、記事の要旨をまとめてみました。

今回は、眠りのメカニズムについてです。

 

5.眠りのメカニズム

覚醒度が下がってくると、私たちは眠く感じますが、これは脳の覚醍度をコントロールする2つの仕組みが影響しています。

1つめの要因は、サーカディアンリズムの影響です。サーカディアンリズムは、地球上の生物にそなわった124時間のリズムで、体内の様々な因子に影響を及ぼしています。健康的な1日を過ごしていると、自然と眠りに導かれるのもリズムによるものです。この自然な眠りに導くためには、脳内のホルモンであるメラトニンの役割が大きいことが知られます。就寝時間の12時間前に分泌が高まり、これで自然に眠りに就くことができるというわけです。

もう1つには、起きて活動をしている間に睡眠に誘う物質、すなわち睡眠物質が増えることによる影響です。アデノシンと呼ばれる物質が脳内に蓄積してくると「睡眠圧」と呼ばれ眠くなる方向に作用する力が高まります。

 

6.最適な睡眠時間

多くの人にとっての最適な睡眠時間は6時間半~7時間半だといわれてきています。平成28年の厚生労働省の調査によると、3060歳の各年齢層において、2530%の割合で睡眠が充分にとれていないという回答となっています。

働き盛りといわれる40代~50代を例に取ってみると、同様の調査では、約4割が6時間未満の睡眠を続けているとあります。大抵の場合、6時間程度眠ると、充分に睡眠を取ったように感じます。しかし、6時間睡眠を2週間続ける実験をした研究結果からは、脳での情報処理にかかる働きは「二晩徹夜」したのと同じになることが明らかになりました。4時間睡眠でも同様に脳の働きは低下しますが、6時間も眠れば、本人はよく眠ったように感じやすいので、生活の習慣に組み込まれやすいという点でやっかいです。

短時間睡眠を続けて習慣になると、それが「負債」のように、脳や身体に悪い影響を及ぼしてしまうというのが、睡眠の研究で強く言われてきています。

 

 

次回は、睡眠負債とその対処についてまとめます。