『月刊社労士 20185月号』(発行:社会保険労務士会連合会)より

 

少子高齢化が急速に進んでいる日本では、決められた収入の範囲内で、年金の給付水準を調整し確保する仕組みとなっています。そして今後は、給付水準の抑制へ向かっていくこととなり、老後の所得確保が大きな課題となっています。公的年金の上乗せの年金制度としての私的年金制度のうち、企業年金には、従業員も掛金を拠出できるものや個人型の年金に企業も拠出できるものがあります。

今回、企業年金等の制度内容や改正内容について解説した記事が会報誌に載っていましたので、要旨をまとめて行くことで学んで行こうと思います。

 

1.企業年金の種類と歴史的背景

企業年金には、

 

 ・給付額を先に確定し、そのために必要な掛金を企業側が積み立て運用していく確定給付型

 ・掛金を先に確定し、企業が拠出した掛金を加入者本人が運用していき、給付額は運用結果によって変動する確定拠出型

 

があります。

日本においては、退職時に一時金を支払うのが従来から一般的な慣行でした。しかし、1950年代後半頃から企業にとって退職一時金の支払い負担が大きくなりました。1962年には適格退職年金制度が創設されましたが、受給権保護が十分でなかったことなどが問題となり、2012年廃止されました。1966年に創設された厚生年金基金は、国の年金の一部を代行し、厚生年金保険の給付水準の改善が期待されましたが、社会経済状況の悪化による運用難などにより資産の積立不足が問題となり、現在では、代行部分に不足が発生している基金の解散等が進んでいます。

このような歴史的背景のもと、現在では、2001年に受給権保護などを十分に図るために法律が制定され創設された確定給付型の確定給付企業年金と、確定拠出型の確定拠出年金が、現在では企業年金の大きな柱となっています。

 

2.確定給付企業年金

確定給付企業年金には、

 

 ・労使が合意した年金規約に基づき、信託銀行や生命保険会社等と契約を結び、企業の外で年金資金を管理・運用し年金給付を行う[規約型]

 ・企業とは別の法人格を持った基金を設立して年金給付を行う「基金型」

 

の2種類があります。

 給付については、老齢給付金と脱退一時金は必ず設けられることになっています。老齢給付金については、原則として、60歳以上65歳以下の規約で定める年齢に達した場合に終身または5年以上にわたって支給することとされています。

脱退一時金は、加入期間が3年以上の人で年金給付が受けられない場合に支給するものです。

掛金については、事業主拠出が原則です。

確定給付企業年金の場合は、事業主等は、将来にわたって約束した給付が支給できるよう、年金資産の積立を行わなければなりません。

 

   

次回は、確定拠出年金についてまとめます。