『月刊社労士 20185月号』(発行:社会保険労務士会連合会)より

 

社労士制度は平成30年に創設50周年を迎えます。会報誌では、その特別企画として働き方改革と職場の健康に関する現状と課題、そしてその解決に向けての取り組みなどについて解説する記事の連載が始まりましたので、またいつもの如く要旨をまとめながら学んで行こうと思います。

今回は、育児・介護と両立する働き方についてです。

 

1.これまでの経緯

2017年に改正育児・介護休業法が施行されましたが、これは1992年の育児休業(育休)法施行からちょうど25年に当たります。この間に同法はたびたび改正され、両立支援制度の拡充を図って来ましたが、今なお日本は育児・介護と仕事を両立しやすい社会とはいえません。

 ・育児においては依然として妊娠・出産期に仕事を辞める女性の割合(出産退職率)が高い状況にあります。今なお第1子出産時の出産退職率は約30%あります。

 ・介護を理由に離職する者(介護離職者)は年間約10万人に上りますが、介護休業の取得率は3.2%と極めて低くなっています。

 

2.改正法の考え方

(1)育児改正のポイント

育休の対象となる有期契約労働者の要件が緩和され、改正法では育休期間を子が2歳に達するまで延長できるようになりました。雇用関係の継続を目的とする育児休業は、有期契約労働者を適用対象外としていますが、有期の契約であっても契約更新や無期転換によって雇用関係が継続する労働者は育児休業の対象となります。

保育所不足が深刻な地域で産休明けに復職することは、極めて難しい状況です。保育所に入るまでの「つなぎ」として育休の必要が生じます。しかし、子どもの預け先がなければ復職はできません。待機児童対策により保育所の定員は拡大していますが、それを上回るペースで保育需要は拡大しており、そうした事情を踏まえて育休期間を考えることが重要となります。

 

(2)育児と介護の違い

介護休業取得率は極めて低水準にあります。そこで休業制度を介護の実情に合わせて利用しやすくするとともに、仕事と介護の両立実態を総合的に検討し、休業以外の制度も拡充されました。

短い期間を複数回取得することを望む割合のほうが高いことから、休業期間は93日そのままに分割取得を3回まで可能としました。1日単位で取得できる介護休暇についても、1日丸々費やすケースは稀であることから、取得単位が半日に柔軟化されました。

育児と介護では両立支援の考え方を変える必要があります。育児に比べて介護は多くのケースにおいて1回に必要な休業の期間は短く、短時間勤務のように大幅に労働時間を短くする必要性もそれほど高くありません。

 

3.両立支援から働き方改革

育児については女性に偏った制度利用を改め、男女がともに育児に関わることのできる体制づくりが課題です。短時間勤務や所定外労働免除のニーズは保育園の送迎と密接な関係にありますが、その半分を夫が担えば、妻はその時間を仕事に費やすことできます。

残業が週2日以下、つまり定時退勤が週3日以上の男性は子育てに関わる割合が高い傾向にあります。ここで重要なのは残業時間の長さではなく、残業しない日数であるため、同じ時間働くなら毎日2時間の残業をするより2日おきに14時間の残業をした方が良いという話になります。

このように生活サイクルに沿った働き方改革に取り組み、育児・介護と両立可能な働き方を広げて行くことが大切です。

 

 

 どのような法改正でも、規程の文章を理解するだけではなく、その裏に積み重ねられている本来の目的をしっかり読み解く力が必要なんですね。