『会報 2018年5月号』(発行:東京都社会保険労務士会)より
障害者の法定雇用率が引き上げられ、社会として障害者を雇用することが一層求められています。障害者の中でも発達障害を取り上げて、どのように支援し企業で活躍してもらうかについての記事の連載が会報にて始まりました。
前回の、発達障害者と接する際のポイントに続いて、今回は発達障害の種類と特性についての解説です。記事の要旨をまとめながら、発達障害について理解を深めようと思います。
3.現状の認識
ここ数年で発達障害に関する診察や相談が増えています。外来では自身が発達障害ではないかと疑い、インターネット等でチェックを実施してやって来るケース、事業場では上司や人事担当者が勤務中の様子から発達障害を疑い相談にやって来るケースです。
事業場において発達障害が疑われる人だけでなく、既に発達障害と診断された人を雇用する機会も増えるため、発達障害を理解し支援することは非常に重要な課題です。
4.発達障害の種類と特性
①発達障害
発達障害とは、先天的な脳の機能障害に伴い認知機能の偏りが生じる病気で、得意なことと苦手なことの差が大きいことが特徴です。知的水準が高いと苦手なことを得意なことでカバーできるため子供の頃には問題となりにくく、社会に出てから問題となることも少なくありません。
②ASDの特性
これまで自閉症、アスペルガー障害などといわれていた発達障害で、症状は大きく3つに分けられます。
社会性の障害 :人に興味を持てず、親密な人間関係を築くことができない。社会常識としての暗黙のルールが理解できない。
コミュニケーションの障害 :話し相手がどう感じているかを考えずに一方的に話す。会話の最中に視線を合わせない。人との距離感がつかめない。言葉通りにとらえ、お世辞や皮肉、冗談が通用しない。
想像力の障害 :行動パターンがほとんど同じであり、臨機応変な対応ができない。特定の物事に関心を持ち、時間を忘れてそのことに没頭する。
③ADHDの特性
不注意と多動性/衝動性が持続的に存在する障害とされています。それぞれの特性が強すぎるために日常生活に支障が出ると発達障害と診断されます。つまり成人期に初めて発達障害が疑われる場合には、おかれた環境下でなんらかの不適応状態が生じていることになります。
そのため、発達障害の支援を行う上では、特性のある人を不適応状態に落とし込まないようにすることが非常に重要となります。
不注意
活動中に不注意な間違いをする、注意を持続することが困難
課題中に注意を持続させることが困難(長時間の読書など)
指示に従えず(集中できず)義務をやり遂げることができない
課題や活動を順序立てることが困難
外的な刺激ですぐ気が散ってしまう
多動性一衝動性
よく手足をそわそわ動かしたり叩いたりする
不適切な状況で走り回ったり、落ち着かない
静かに遊んだり余暇活動につくことができない
自分の順番を待つことが困難(列に並んで待てない)
次回は、発達障害の治療についてまとめます。