『会報 20185月号』(発行:東京都社会保険労務士会)より


郵便物の集配業務に従事していた×は、会社から懲戒解雇され、これを無効であるとして、労働契約上の地位確認、賃金等の支払と退職金の支払を求めた事例です。判決は、会社による懲戒解雇は有効であるとして、×の請求はいずれも棄却されました。

 

1.事件の概要

郵便事業を営む会社であり、Xは、その支店において郵便物の集配業務に従事していましたが、外務事務に従事中、外国来書留郵便物を紛失したとの理由で、戒告する旨の処分を受けました。

会社は、Xに対し複数回に渡って出勤命令を発出しましたが、Xは、脳腫瘍と診断されて今後については精密査を行い、その結果を見て、治療方針を決める予定であるとされました。

室長、課長は、Xと面談をし

①無断欠勤理由

②本件出勤命令の認識の有無

③電話を掛けてこなかった理由

④欠勤中のXの行動等

を尋ねましたが、これに対し、Xは、①無断欠勤は、職場に入るなと 言われたからであること、②本件出勤命令については、1週間ぐらい前に何通がまとめて見たこと、③電話については、一度したが課長がいなかったところ、掛け直してきてくれなかったので、これはもう だめだと諦めたからであること、④欠勤中はアルバイトをしていたことを答えました。

室長はXと面談をし、本件事情聴取に関する聴取書の内容をXに確認させたところ、Xは、同聴取書に対する署名押印を拒絶しました。

室長及び課長は、Xと面談をし、本件欠勤につき解雇 と決定したこと、解雇は解雇でも諭旨解雇であること、諭旨解雇とは、退職願を提出することで退職金の支払を受けて解雇となることであるが、退職願の提出を拒否する場合には懲戒解雇となる説明をしました。Xからは、法律的には間違っていないのか尋ねられたため、懲戒規程に基づいて概ね20日以上の場合には解雇となることを説明しました。室長が再度、退職願を書くか尋ねたところ、Xは、欠勤が20日以上になるように追い込んだように勘ぐり、仕事をさせない、班に近づくなと言われたこと、課長は否定するが、「言った、言っていない」の話で平行線になるので、裁判をするしかないと考えていることを述べました。室長は、再々度、退職願を書くかと尋ねましたが、Xは、納得いかないから書かないと述べました。

室長及び課長は再度、諭旨解雇について説明して退職願を提出するかどうかを尋ねましたが、Xはこの間と同じで退職願は提出しないと答えでした。

会社は、「懲戒処分書」により、Xに対し、社員就業規則により解雇する旨の処分をしました。その具体的な理由は、みだりに勤務を欠いたものであるというものでした。

 


次回は、判決の要旨についてまとめます。