『会報 20185月号』(発行:東京都社会保険労務士会)より

 

テレワークは、主として情報通信技術を活用した、場所や時間に捕われない柔軟な働き方です。類型としては、働く場所によって在宅勤務型テレワーク、モバイルワーク、サテライトオフィス勤務の3つに大別されます。契約形態には「雇用型」と「非雇用型」とがありますが、自宅等で情報通信技術を活用して勤務する「雇用型」の労働者を前提としてテレワーク導入の進め方について解説する特集の連載が会報誌にて始まりましたので、要旨をまとめながら知識を身に着けようと思います。

今回は、通信費等の費用負担についてです。

 

7.通信費等の費用負担

在宅勤務となると通常の勤務と事情が異なり、在宅勤務を行う労働者の私生活上の光熱費、通信費用が混在するため、その一部を負担しなければならない場合がありえます。会社が負担する場合における限度額、さらに労働者が請求する場合の請求方法等について、あらかじめ労使で十分に話し合い、就業規則等において定めておくことが望まれます。会社が負担する場合、「在宅勤務手当」として一定の賃金を毎月支給することで費用負担を代用するケースも見られます。

労基法の「労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項」に該当し、相対的必要記載事項として、その旨を就業規則に規定しなければなりません。こうしたことから、多くの事例では、会社が通信回線の一部を一定額で負担するケースが多く見られます。在宅勤務中の電話費用については、家庭用の電話を利用するというよりも、会社が貸与する携帯電話の利用を原則とすることのほうが多いと思われます。

また、在宅勤務者が私物のパソコンを使っていて壊れた場合も、労基法により「労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項」が就業規則の相対的必要記載事項とされていますので、私物であったとしても、あえて就業規則等で「労働者負担」と規定していない限り、会社が負担することになるものと考えられます。

 

8.労働災害への対応

「労働者災害補償保険においては、業務が原因である災害については、業務上の災害として保険給付の対象となる」としている一方、「自宅における私的行為が原因であるものは、業務上の災害とはならない」とされています。業務災害として労災保険法に基づく労災保険給付の対象と認められるためには、

 

 ・災害発生時に事業主の支配・管理下にあったこと(業務遂行性)

 ・業務が原因となって災害が発生したこと(業務起因性)

 

という二つが両方満たされている必要があります。

 

業務時間と私的時間をいかに厳しく区別するかが課題となりますが、在宅勤務者であっても、労働基準関係法令が適用され、労働時間、休憩、休日、深夜業等の規定の適用を受ける以上、日頃から労働時間を把握し、管理することが求められています。その日の業務実績を日報という形式で提出させる場合も

 

 ・時間帯ごとに遂行していた業務内容と業務遂行場所を記載させる

 ・翌日のタイムスケジュールも業務遂行予定表として合わせて申告させる

 

ようにして、災害が発生したとしても業務遂行性と業務起因性の認否の判断がつきやすくなります。これは労災認定に限らず、円滑な業務遂行の観点からも積極的に取り入れたい考えかたです。

 

 

近年の世の中の動向から考えると、セキュリティ対策に最も注意を払う必要があると思います。神経質と思われるくらいで、少々やり過ぎと思われる程度を目指してちょうどよいぐらいの感覚ではないでしょうか。いずれにせよ、一回の事故や情報漏えいで、これまでの全ての努力が水の泡になってしまうことは十分に認識しておくべきだと思います。